「清須会議」が行なわれた清須城の模擬天守(清洲城)。

ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』第30回は「清須会議」が描かれました。『豊臣兄弟!』の「清須会議」に触れる前に、過去の大河ドラマの「清須会議」を振り返りたいと思います。

編集者A(以下A):1981年の『おんな太閤記』では、12人の宿老が参加します。「信長の死から25日目。秀吉(演・西田敏行)を交えた織田家の宿老たちは清須城に会して信長の後継ぎ、遺領の配分についての会議を開いた」とナレーションが説明しました。柴田勝家(演・近藤洋介)が「信孝殿は秀吉殿とともに明智光秀討伐を果たされ、見事お父上のご遺恨をはらされた」と、信長三男信孝を推します。この時、信孝を演じたのは役所広司さんです。

I:『徳川家康』で織田信長役に抜擢されて大ブレイクを果たす2年前の役所広司さんですね!

A:丹羽長秀(演・小瀬格)が、信孝は三男、筋目からいえば次男の信雄(演・長塚京三)ではないかとしたうえで、信雄のことを「むざむざと安土城を光秀に渡し、あげく安土城に火を放たれことごとく灰燼に帰してしもうた」と、跡目にふさわしくないと言明します。秀吉は、信雄は北畠氏、信孝は神戸氏にと他家に養子に入っていることに触れます。勝家は、北畠、神戸を味方にするための方便、上様の子にはかわりないと弁明します。この発言を引き取った秀吉は、羽柴家に養子に入った信長四男秀勝(※現在では五男といわれる/演・草見潤平)のことを「お世継ぎになられてもなんら不思議はございませぬ」としながらも、「既に羽柴の家の人間なので、お世継ぎの資格はない」といい、同様に「信雄様、信孝さまにもお世継ぎの資格はお有りにはならん」と言い放ちます。

勝家が「では誰が?」というと、秀吉は、「立派なお世継ぎがおられるわ」と立ち上がり、別室にいって連れてきたのが三法師という設定でした。さらに、役所広司さん演じる信孝が、夏目雅子さん演じるお市の方に「織田家のためにございます」と柴田勝家に嫁ぐように談判するのです。お市の方は「秀吉は万福丸を手にかけた男。そのような男に情けは受けられません。勝家どののもとに参りましょう」と勝家とお市の縁談がまとまるという流れでした。

完全にエンタメに寄った『秀吉』の清須会議

A:完全にエンタメに寄せたのが1996年『秀吉』の清須会議。この清須会議には、秀吉(演・竹中直人)の弟の秀長(演・高嶋政伸)だけではなく、前田利家(演・渡辺徹)、秀吉家臣の黒田官兵衛(演・伊武雅刀)、蜂須賀小六(演・大仁田厚)、石田三成(演・真田広之)も同席。冒頭部分には、おね(演・沢口靖子)、おまつ(演・中村あずさ)まで登場しました。さらに秀吉実母のなか(演・市原悦子)も清須城まで同行してきているというド派手な展開だったのです。

I:ほんとうににぎやかな清須会議ですね。

A:関東の神流川(かんながわ/埼玉県児玉郡)の戦いで小田原北条氏に敗れて、本来は、会議には参加していなかった滝川一益(演・段田安則)も死人のような顔で駆けつけてきます。柴田勝家(演・中尾彬)よりの発言で議論をリードしようと試みますが、その場を混乱させるだけでした。そうした中で、茶々(演・松たか子)がやってきて、秀吉に小谷落城の際に助けてくれた礼をいう場面まで飛び出すカオスな会議が展開されたのです。

I:私もオンデマンドで見ましたが、信雄(演・西川弘志)と信孝(演・佐伯太輔)がふたり同時に上座から「大儀じゃ」と叫んでいた場面など驚きでした。おねとなかがふたりとも秀吉に対して「天下をとれ」「お市様を柴田勝家のもとに嫁がせるべきだ」とけしかけるのもびっくり。お市(演・頼近美津子)が三法師(演・飯田綾真)をつれてくる展開も斬新でした。これでもかこれでもかと怒涛のような展開だったので、これはこれで面白いと思いました。でも、現在のようにSNSが発達した時代に同じことをやったら、炎上しましたかね?

A:滝川一益が秀吉に対して、事前に「本能寺の変」が起きるのを知っていなければ、中国大返しは不可能だったのではないかと責め立てる場面もあったりで、てんこ盛り感がすごいですよね。さて、『秀吉』と同じ竹山洋さんが脚本を担当した2002年の『利家とまつ~加賀百万石物語』では、オーソドックスに柴田勝家(演・松平健)、丹羽長秀(演・梅沢富美男)、池田恒興(演・渡辺裕之)、羽柴秀吉(演・香川照之)の4名で会議が行なわれました。

ところが、三法師(演・大隅祐輝)が家督を継ぐことが決した後に、甲冑姿に槍を持った前田利家(演・唐沢寿明)がやって来るのです。なんと信長(演・反町隆史)が利家に憑依している体での登場で、信長の口癖だった「で、あるか」を連発します。槍を持って秀吉を討とうとしたり、それを止めるためにまつ(演・松嶋菜々子)がやってきたり、おね(演・酒井法子)がやってきて三法師を秀吉に渡し、秀吉が急に「頭が高い!」と言い出すなど、いま振り返るとかなりのハチャメチャぶりです。

I:2006年の『功名が辻』では、主人公千代(演・仲間由紀恵)の夫山内一豊(演・上川隆也)だけではなく、同輩の中村一氏(演・田村淳)、堀尾吉晴(演・生瀬勝久)も会議に列席しているという破格の扱いでした。

A:『功名が辻』では、主人公特典で、主人公千代が三法師(演・藤田悠希)を手なづける役を仰せつかっていて、「♪ぽんぽこぽん」と踊ったり、お腹が痛いと中座してきた秀吉(演・柄本明)に三法師をなつかせるために、秀吉に馬になるようにお願いして、三法師が秀吉に乗るや、「ちくぜん! ちくぜん!」と音頭をとりました。そのおかげで、会議の場に戻った秀吉のもとへ三法師が駆け寄っていき、秀吉はその三法師を抱きながら上座に移動するという演出が施されるのです。

I:2011年の『江 姫たちの戦国』では、江(演・上野樹里)が清須会議に乱入して物議を醸しましたが、過去作もそれなりにハチャメチャだったんですね(笑)。

A:そうなんです。意外に過去作の「清須会議」ってハチャメチャだったんですよ。それに比べたら『豊臣兄弟!』の「清須会議」は、1)後継者は三法師という大前提、2)会議で協議されたのは三法師の名代を誰が務めるか、3)結局宿老による合議制と決する、という最新の知見をもとに展開されていたのが肝になります。

I:細かいことは、後編(https://serai.jp/hobby/1278945)でじっくり振り返りたいと思います。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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