取材・文/林ゆり

日本のワインは、今や日本食と同様、海外でも好まれている。「日本ワイン」と当たり前のように表現しているが、正式にこの言葉が国から定義されたのは、2018年だ。これを機に、日本のワインの価値をさらに高め、日本ワイン愛好家を増やし、食文化と酒文化を盛り立てることを目指し活動を行っているのが、「日本のワインを愛する会」だ。さらなる日本ワインの発展を目指し、昨年、一般社団法人化し、リスタートすることになった。会の新たな方向性とともに、次のフェーズへと進化する日本ワインの今、そしてこれからについて、法人化を記念したレセプションが開催された。

「日本のワインを愛する会」とは

全国各地の日本ワインが並ぶレセプション会場。

「日本のワインを愛する会」は、俳優の辰巳琢郎さんが会長を務める日本ワインの魅力を伝えることを目的に活動する団体だ。辰巳さんは、前身となる「日本ワインを愛する会」に2003年の結成時から参加し、15年間、副会長を務めていた。日本ワインのテレビ番組企画や出演を通して、300軒以上の日本のワイナリーを紹介し続けている辰巳さんだからこそ、伝えられることも多いだろう。

そこで、さらに多くの人に日本ワインの魅力を広めるため、「日本のワインを愛する会」の活動のギアを上げていくという意味も込めて、2025年9月に一般社団法人化し、2026年をリスタートの年と捉えている。というのも、「日本のワインを愛する会」の発足後、コロナ禍という未曽有の事態に陥り、飲食の中でもアルコール飲料は大打撃を受けることになった。そんな中、日本ワインは、外食現場での消費の消失はあったが、ぶどうの品質の向上や醸造技術の刷新など生産者のたゆまぬ努力により、品質が向上。日本ワインへの注目は高まったという見方もあるという。逆境を乗り越え、たくましさを増した日本ワインとして、新たなチャプターのスタートというわけだ。

会長を務める辰巳琢郎さんから、改めて「日本のワインを愛する会」の活動についてのお話。

「『日本のワインを愛する会』の発足当時は、約300軒だった日本のワイナリーも、この7年の間に500軒に増えています。しかしながら、コロナ禍もあり決して順風満帆というわけではありません。私が企画し出演してきた『辰巳琢郎の葡萄酒浪漫』が20周年を迎えるこのタイミングで、内外ともに注目の高まる日本ワインを見つめ直し、その価値の再確認と問題解決、それに伴う地方創生や食料自給率の向上までも視野に入れながら、新たな行動を起こす所存です。まずは、全国を飛び回り、すべてのワイナリーを訪問するなど、改めて、日本ワインの応援団長として活動してまいります。」(辰巳さん)

日本ワインは、近年見かけることも増え、伸びている産業のように感じられるが、売り上げベースでは、実は横ばいだという。これは、人口減少のみならず、若者のアルコール離れも一つの要因だ。海外でも、アワードを受賞することがめずらしくなくなった日本ワインではあるが、今後の課題も抱えている。

「ワイナリーの数は増えていますが、生産量は、この10年変わっていません。3年以上、総量1万L未満のワイナリーは、赤字続きです。」
と、レセプションに参加したソムリエの田崎真也さんの話。GI(産地の名前を守る制度)は、日本でも行われているが、欧州のPDO(原産地呼称保護)相応の法律整備も、今後の発展には必要とも話す。

「飲み手を増やし、飲み手の満足度を上げることが、この会の活動です。期待して応援しています。」(田崎さん)
和食には、きっと日本ワインが似合う。「日本のワインを愛する会」は、単にワインの味を評価するのではなく、各地の食文化の豊かさや、その土地から生まれる一滴としての日本ワインの魅力を応援していく取り組みだ。

ここで、日本ワインと国産ワインの違いも確認しておきたい。
国産ワインとは、日本国内のワイナリーで醸造したワイン。つまり、日本でアルコール発酵させたワインのことで、ブドウの産地は、国内外問わない。それに対して、日本ワインとは、日本国内で栽培した、あるいは採取したブドウだけを使って、日本国内で醸造したワインのことだ。

個性豊かな日本ワインの試飲タイム

辰巳さんも交えて、みなさん好みのワインを試飲。

レセプションでの楽しみとなったのが、日本各地のワインの試飲会だ。会場となった「坐来大分」には、今回、53ものワイナリーが参加し、赤・白・泡、さらにシードルも並んでいた。これらを自由に試飲できたのだが、ひと口ずつとはいえ、これだけの種類を試飲し、特徴をお伝えするのはさすがにむずかしい。そこで、参加していたワイン通の知り合いのアドバイスを受けながら、筆者も数種類を試飲。

ワインは、嗜好品であることから、自分の好みを飲み比べて選ぶことができるが、これがおすすめというワインを選ぶのは至難の業であるうえ、筆者には選ぶことができるほどの知識もない。そこで、すべての日本ワインがおすすめだという辰巳会長だが、サライ読者に向けてという条件のもと、3つのワインを選んでもらった。

安心院葡萄酒工房の安心院スパークリング

安心院スパークリング 750mL 3,851円(消費税込み)

レセプション会場が、大分のアンテナショップ「坐来大分」ということもあり、ウェルカムドリンクとして振舞われた「安心院スパークリング」。

「日本を代表する、瓶内二次発酵の本格派スパークリングワインを1本挙げよといわれれば、こちらでしょう。パーティー会場が大分県のお店ということもあり、ウェルカムドリンクに使わせていただきました。日本ワインコンクールでも、幾度も部門最高賞を受賞している安定の品質。何より年間約4万本という生産本数が光っています。」(辰巳さん)

生産本数的にも、手に入れやすそうだ。きめ細かい泡で果実味と酸味があり、すっきりした印象。乾杯はもちろん、魚介との相性もよさそう。

広島三次ワイナリーのTOMOE小公子 マスカット・ベーリーA

TOMOE小公子 マスカット・ベーリーA 750mL 3,630円(消費税込み)

日本で交配して生まれた小公子という品種を使った「TOMOE小公子 マスカット・ベーリーA」。

「山葡萄の交配品種である小公子は、これからますます注目を集めるでしょう。早熟な品種で、台風が来る前に収穫できるのが強みだと言われています。しかも、色が濃く、暑い産地でも酸味が残り、良いことずくめの葡萄です。そこに、これも日本を代表する交配品種であるマスカット・ベーリーAを少量ブレンドするというアイデアが秀逸ですし、樽熟を経て、すばらしいバランスのワインに仕上がっています。」(辰巳さん)

できれば、あと5年くらい熟成させたいと、辰巳さんは感じているそう。国内改良品種の2種類のみのブドウを使用した、日本らしいワインと言えそうだ。

武蔵ワイナリーの饅頭怖い2022

饅頭怖い2022 750mL 5,500円(消費税込み)

ワインの名前として、とてもユニークと感じた「饅頭怖い」だ。現在は、2022年を販売中。

「こちらは、若干、物議を醸したらしいワイン。なぜなら実験的にヒノキ樽を使ったことにより、オフフレーバーと間違われたからです。もう少し熟成が進むと複雑で面白い味わいとなりそうなのですが。別のワイン会で、同じ原酒をミズナラ樽で熟成したものを出しましたが、ほぼ全員から大絶賛。聞けば、成長ホルモンに着目した独特の栽培方法で、ボルドー液も使わない完全無農薬ということでした。小公子という葡萄のポテンシャルかもしれませんが、収穫時の糖度が27度と聞き驚きました。赤ワインもライト志向になりつつある中、フルボディ派には、一度試していただきたい1本です。」(辰巳さん)

ボルドー液とは、JAS有機でも使用が認められている農薬の一種だが、それも使用せず、完全無農薬を実践しているという。ひと口飲むと、ユニークで印象的。ガトーショコラなど、スイーツとの相性もいいのではないかと感じた。

* * *

日本の気候に合わせ、固有のブドウを交配するなど、日本ならではのワインを醸造する。日本酒のほか、発酵文化のある日本にとって、日本ワインは独自の進化を遂げられるのかもしれない。辰巳琢郎さんの著書「日本ワイン礼讃」のあとがきに『客観的な評価は造り手や評論家に任せ、自分が飲むワインは自分の感覚で選んで欲しい』と、記されていた。エチケット(ラベル)が気になったり、初めて知ったブドウ品種だったりなど、なにか心に留まって試していると、これだという運命のワインに出会えるかもしれない。

一般社団法人 日本のワインを愛する会 https://jpwine.jp/

取材・文/林ゆり
ロハスジャーナリスト。フリーアナウンサー。コスメ、グルメ、ファッション、クルマなど、毎日がちょっとワクワクできて、人にも地球にもやさしいことについて執筆中。日本化粧品検定1級。

 

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