取材・文/ふじのあやこ
時代の移り変わりとともに、変化していく家族のかたち。幼少期の家族との関係を振り返り、自身も家族(パートナー)を持つようになったからこそわかるようになった思いを語ってもらいます。~その1~はコチラ
今回お話を伺ったのは、関西にある精密機械の会社で研究職の仕事をしている宏之さん(仮名・42歳)。宏之さんは兵庫県出身で、両親との6歳下に妹のいる4人家族。中学生の時に両親が離婚するも、父親とは定期的に会うことができる関係に。しかし、一緒に住んでいる時と違い、気を遣ってくる父親に戸惑いを覚えることもあったとか。
「私はもう高校生だったので、母親は一切関与せずに自由に会えていました。父親は一緒に過ごす時はいつも何かを買ってくれましたね。当時流行っていたゲームのソフトなどが多かったかな。一緒に住んでいないから、会いたいと思ってほしくて気を遣っていたのかなって思います。最初は妹と一緒だったんですが、いつからか別々に会うようになりましたね。ギクシャクという感じではないんですが、会話を探すことはあった気がします」
大人になるにつれ、家族とは疎遠に。そして、結婚して子宝に恵まれるも
大学までは実家で過ごしていた宏之さんですが、母親の提案で社会人になり一人暮らしをスタート。それ以前に父親との交流もなくなり、母親とも月に一度程度の連絡をするだけの関係になっていきます。
「父親とは携帯を持ち始めた頃から電話じゃなくメールで連絡するようになり、約束を学校が忙しいと先延ばしにしてしまっていたらいつの間にか……ですかね。本音を言うと、友人と過ごすほうが楽しかったし、もう子供って年齢でもなかったから。
でもそれは父親だけじゃなく、母親や妹とも一人暮らしを始めてからは疎遠になっていきましたね。妹なんて、携帯の番号は知っているけど、メールアドレスは知りません。一緒に住んでいる時から顔を合わせたら少し会話するぐらいだったから、急に疎遠になったというわけじゃなかったこともあり、特に気にしていませんでした」
そして30歳の時に学生時代から8年付き合った女性と結婚。結婚2年目には女の子、そのさらに3年後には男の子に恵まれます。結婚生活の始まりは順調だったと言いますが。
「下の子が2歳の時ぐらいから、嫁の態度がどうもケンカ腰なことが増えて、本当に些細なことでの言い合いが増えました。例えば、仕事帰りに買い物を頼まれて、それを確認しないで帰ってしまったら怒られる。私が『そんなに必要なものならメールじゃなくて電話してほしかった』とか言うと、『どこにいるかもわからないから気を遣った。メールは逐一チェックしろ』と言われてどっちが悪いかという言い合いになるなど、本当に改めて話すとくだらないですよね。でも、お互い言葉だけじゃなくイライラしている態度を隠さないから余計揉めるんですよ。それでも私は離婚などまったく考えていませんでした。でも、嫁から『離れて暮らしたい』と言われてしまって……」
【どこまでも母親に勝てない父親の存在。次ページに続きます】