写真:photoAC

わが国では毎年およそ100万人が「がん」と診断されています。これを国民一人の生涯で見ると、実に2人に1人ががんにかかることになります。一方で、かつては不治の病と恐れられたがんも、今では6割以上が治るようになりました。

いざ、がんと診断されたときに少しでも冷静に受け止め、また、自分らしい選択をするためには、事前にがんと向き合うための情報をもっておくことが重要です。

そこで参考にしたいのが、静岡県立静岡がんセンター名誉総長の山口 建医師が監修した『がんになったとき知りたいことが全部のってる本』(発行:主婦の友社)です。

今回は、『がんになったとき知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)の中から、治療法を決める前の基礎知識として、「セカンドオピニオンを活用する」と「集学的治療って何?」を紹介します。

セカンドオピニオンを活用する

●治療に納得するため別の専門医の意見を聞く

最初の診断を「第一の意見」とすると、セカンドオピニオンとは、主治医とは別の専門医に、診断や治療方針について「第二の意見」を聞くことです。近年、セカンドオピニオンの重要性は広く知られるようになりました。主治医に対して、「セカンドオピニオンを受けたいと言ったら、先生が気分を害するのでは」と後ろめたく思うことはありません。

●治療開始が遅れるデメリットも

患者さんや家族がセカンドオピニオンを求めるのは、「より自分に合った治療法があるのでは?」「このまま決めてしまうのは不安」「別の医師の見解を知りたい」などという気持ちがあるときです。別の専門医の視点を知ることで、主治医の提示した治療内容への理解と納得がより深まるということもあるでしょう。 

一方で、セカンドオピニオンに時間を費やして治療開始が遅れる、治療法についての悩みが深まる場合もあります。主治医から治療方針を説明されたときに、患者さん本人が十分に納得できるなら、セカンドオピニオンは必要ない場合も多いでしょう。

【Point】診察や検査はしないので、紹介状は必須

セカンドオピニオンを受けるには、主治医が作成した紹介状と診療情報提供書、検査結果のデータが必要になる。患者本人が同席できない場合、代理人は本人の同意書も忘れずに持参しよう。必要に応じてセカンドオピニオンを受ける病院で診察や検査を行う。

『がんになったとき知りたいことが全部のってる本』P.49より

集学的治療って何?

●治療の相乗効果を生み出すチーム医療

集学的治療とは、患者さんに対してひとつの治療法に頼るのではなく、手術療法、放射線療法、薬物療法というがんの3大療法を、最も効果的なタイミングで組み合わせて行う治療のことです。1980年代に入り、積極的に実施されるようになりました。

それまでのがん治療は、手術療法や放射線療法により、病巣部分を叩く「局所療法」が主流でした。しかし医学の進歩により、3大療法を併用することで治療効果を最大化し、再発を抑えることが期待できるようになったのです。

同時に、がんによる症状や治療に伴う副作用、合併症、後遺症を和らげる支持療法や緩和ケアを行い、体力を温存しながら治療のゴールを目指します。

また、集学的治療のカギを握るのが「チーム医療」です。外科医、放射線科医、腫瘍内科医に加え、看護師、管理栄養士、リハビリ専門スタッフなどが連携し、副作用のケアや心のサポートも含めた全人的な医療を提供します。単に「がんを攻撃する」だけでなく、後遺症を抑えて体の機能を守り、治療後も生活の質(QOL)をキープすることが、集学的治療の真の目的です。

※支持療法…がんによる症状や治療に伴う副作用や合併症、後遺症を予防・軽減するための治療やケアのこと。痛みの抑制、吐き気やしびれの緩和、口内炎のケアなどが対象になる。治療を安全かつ予定どおりに進め、患者さんの生活の質を守るのに重要なアプローチ。

『がんになったとき知りたいことが全部のってる本』P.51より

診断時点で進行がんである場合、また初期治療後の再発がんでは、薬物療法による治療が選択肢になります。がんの種類によって抗がん薬や抗ホルモン薬を使いますが、近年は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬なども導入され、2~3種類の薬剤を用いる多剤併用療法が行われています。


*  *  *

 がんになったとき知りたいことが全部のってる本
監修/山口 建
主婦の友社 1,760円(税込)

山口 建(やまぐち・けん)
静岡県立静岡がんセンター名誉総長、高松宮妃癌研究基金理事長、慶應義塾大学客員教授。
医学博士。1950年、三重県紀北町生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)研究所副所長、静岡県立静岡がんセンター総長、宮内庁御用掛、政府のがん対策推進協議会会長、国際がん研究機関科学評議会委員などを経て現職。高松宮妃癌研究基金学術賞(2000年)、ISOBMアボット賞(国際腫瘍学バイオマーカー学会賞、2014年)を受賞。研究領域は乳がん治療、腫瘍マーカー、ゲノム医療、がんの社会学。著書に『親ががんになったら読む本』(主婦の友社)、『高齢者とがん』(中央公論新社)がある。

 

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