ガマンできない乾燥肌のかゆみ…更年期の乾燥に対処する４つのセルフケア法｜更年期の新習慣「漢方」Q&A（67）

とにかくカッとなり声を荒立ててしまう、イライラした後に落込む、急に顔が熱くなったり、汗が止まらなかったり、どうしてこんなに頭が痛いの？ など、30～40代の「プレ更年期」や、40～50代の「更年期」の女性には、自分ではどうにもならない不調があらわれることがあります。

実は、その不調には漢方がよく効くことをご存知でしたか？
私の不調にも漢方が効くのか知りたい！
どうすれば根本解消できるの？
そんな女性たちの疑問を、漢方の専門家に解説してもらいます。

第67回のテーマは、「乾燥」です。医師の木村眞樹子さんに教えてもらいました。

1．就寝中もガマンできない乾燥肌のかゆみ…これって更年期が原因？

実彩さん 48歳女性 主婦の方からご質問を頂きました。

「近頃、皮膚の乾燥に悩まされています。背中や腕、スネの乾燥がとくに気になり、ひどくガサガサしています。秋になってから肌の乾きが加速して、掻き壊すようになりました。

就寝中にかゆみと不快感で目が覚め、ぐっすり眠れないので体調も優れません。掻き壊して肌もボロボロ、ガマンできないかゆみ……体調も優れずイライラすることも増えました。イライラして息子に当たってしまうのも悩みです。

そのせいで、最近息子は口を聞いてくれなくなりました。なぜ急にこのような肌になってしまったのか……更年期と何か関係があるのでしょうか？」

ご質問ありがとうございます。乾燥肌とかゆみは症状だけでなく見た目にも目立ちます。実彩さんは息子さんにも当たってしまうなど精神的にも追い込まれているようですので、かなりつらそうですね。

おっしゃるとおり、更年期は乾燥肌の原因にもなります。その原因と対策について解説していきます。

2．乾燥の原因はホルモンバランスの乱れ

更年期の女性ホルモンのバランスの乱れは、乾燥を引き起こす一因となります。

閉経の平均年齢は50歳。閉経の前後5年、計10年間を「更年期」と呼びますが、この時期には身体的、精神的な変化が訪れます。

女性ホルモンのエストロゲンには様々な役割があり、皮膚の新陳代謝もそのひとつです。潤いを保ち皮膚の水分を維持するセラミドや、コラーゲンやヒアルロン酸の合成に関わっています。

皮膚を正常に保つために重要なエストロゲンですが、更年期に入ると急激に減少してしまいます。すると、健康的な肌の維持が正しく行えなくなり、皮膚の表面が薄くなったり、潤いが失われたりといった変化が起き、肌が乾燥しやすくなってしまうのです。

また、加齢による汗腺の萎縮やターンオーバーの低下も肌の乾燥につながり、それがさらにかゆみなどを引き起こす原因にもなってしまいます。

続いては、そんな怖い更年期の乾燥を少しでも和らげ解消するセルフケアについてご紹介していきます。

３．更年期の乾燥に対処する４つのセルフケア

更年期の不調の治療法のひとつに、ホルモン補充療法があります。これは、不足しているエストロゲンを薬で補い、ホルモンバランスの乱れを和らげていく方法です。効果もありますが、同時に副作用などのリスクもあるため、通院して治療する必要があるので気をつけましょう。

ホルモン療法は怖いという方や、通院する時間がないという方には、漢方の考え方によるアプローチがおすすめです。

3-1．丁寧な保湿

乾燥肌は保湿を常に意識することが大事です。

洗顔は擦りすぎず、熱すぎるお湯は避けましょう。洗顔料はきちんと泡立て、その泡で触れる程度に優しく洗いましょう。お風呂の際は、シャワーの水流を直接顔に当てず、お湯を手にためて洗いましょう。

洗顔後は化粧水や美容液で素早く肌を保湿し、仕上げは乳液やクリームなどで潤いを保ちます。低刺激のもの、自分の肌に合ったものを使用しましょう。

洗顔料の肌に合う合わないは個人差があるので、無理して使用し続けるとかえって肌の乾燥を悪化させてしまう原因になることもあります。

3-2．規則正しい生活と睡眠

正常な肌のターンオーバーは規則正しい生活、そして十分な睡眠が必要です。

生活のリズムが乱れ、常に寝不足だと体がついていけず肌の新陳代謝も行われにくくなります。就寝前の食事を避け、入浴は早めに済ませておきましょう。また、スマホやテレビなどの画面をみることは目が冴えてしまうため寝る前は避けましょう。

深く眠ることによって成長ホルモンが分泌され、細胞が修復されます。肌だけでなく、免疫力がアップし、ストレスの解消にもなるなどいいことづくめです。特に、体のリズムが乱れがちな更年期の女性にとっては、一石二鳥以上のメリットが期待できます。

3-3．美肌を導く栄養バランス

食事と乾燥肌は深い関わりがあります。普段の食事を見直し、栄養バランスを整え、体の内側からしっかりケアをして乾燥肌を防ぎましょう。栄養素はサプリではなく、きちんと食事から摂ることで吸収率もアップします。

・ビタミンA
卵や緑黄色野菜、レバーなどに含まれます。皮膚や粘膜の成長に関わっているビタミンです。皮膚のバリア機能を正常にし、保湿効果を高めます。

・ビタミンC
レモン、キウイなどに含まれます。活性酸素を抑える抗酸化作用があり、肌荒れを防ぎます。免疫力の向上や、ストレス軽減などの効果も期待できます。

・セラミド
生こんにゃく芋、黒豆、ひじきなどに含まれます。セラミドは皮膚のバリア機能の改善効果や、水分をキープし保湿する効果が期待できるため、肌の乾燥対策には欠かせません。

3-4.漢方薬で乾燥肌の体質改善をめざす

「季節を問わず肌の乾燥で悩んでいる」
「乾燥からくるかゆみや、肌荒れも気になる」
「西洋薬に頼り続けるのは何となく不安」

そんな悩みを抱える多くの方々に選ばれているのが、漢方薬です。医薬品として効果が認められている漢方薬は、西洋薬とは違ったアプローチでからだの改善をめざします。

漢方医学では、乾燥肌の原因は血（けつ）の不足と考えます。血が足りず全身に栄養が行き届かないことで、肌も栄養不足となり、乾燥肌が引き起こされてしまうのです。血を整えることで、からだの中から乾燥肌にならない体質を目指せます。

血を補う効果が期待できる漢方薬はたくさんあります。さらに、自然にある植物や鉱物などの「生薬」を組み合わせて作られる漢方薬は、一般的に西洋薬よりも副作用が少ないといわれています。

対症療法ではなく、根本的な解決をめざす漢方薬。乾燥肌など、体質そのものを変えたいと思っている方に、選択肢のひとつとして選ばれています。

＜乾燥に悩む女性におすすめの漢方薬＞

漢方薬を選ぶ際、大事なポイントが「体質に合った漢方薬を選ぶ」ということです。しっかりした専門知識を有している医師や薬剤師なら、あなたに合った適切な漢方薬を提示できます。

「漢方薬は費用が気になる」という方には、医薬品の漢方薬がおすすめです。スマホで使えるサービス、「あんしん漢方」も注目されています。

AI（人工知能）を活用した「オンライン個別相談」サービスでは、漢方のプロが体質に合った漢方を見極めてくれます。自宅からでもかんたんに購入することができます。

4．乾燥肌を潤いのある肌に

乾燥肌には今回ご紹介したセルフケアが有効です。「保湿」「生活リズム」「食事」の３つのポイントを、生活のなかで意識してみてくださいね。

また、乾燥しやすい体質から改善したいときには、漢方薬も大きな味方になってくれます。漢方のプロである専門家に頼めば、自分にとって適切な漢方薬がすぐにわかります。

女性にとって肌の悩みはとても気になることのひとつ。きちんと対処して、自信をとり戻しましょう。

＜この記事を書いた人＞

医師　木村 眞樹子
医学部を卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事。妊娠、出産を経て、産業医としても活動するなかで、病気にならない身体をつくること、予防医学、未病に関心がうまれ、東洋医学の勉強を始める。臨床の場でも東洋医学を取り入れることで、治療の幅が広がることを感じ、西洋薬のメリットを活かしつつ漢方の処方も行う。また、医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行なっている。