
聴力は年齢とともに衰える。『サライ』がメルマガ会員を対象に実施した「きこえに対する悩みのアンケート」でも、「会話中に何度か聞き返すことがある」、「以前より電車内の雑音が気になり、車内放送が聞こえにくいことがある」など、きこえに不安を感じることがあると回答した人は半数を超えた。
しかし、こうした自覚症状がありながら、きこえをよくするために補聴器を装用する人は少数にとどまる。
届くはずの音が、きちんと耳に届いたら、生活する景色は同じでも、毎日がもっと楽しく豊かに変わる。こう考えた『サライ』は、補聴器ブランド「フォナック」を展開する、スイスにある補聴器のリーディングカンパニー『ソノヴァ』と共同で、記事や体験イベントを通じ、補聴器による生活の質の向上を目指す「アクティブ ライフ プロジェクト」を開始した。

プロジェクトのスタートに際し、『サライ』元編集長の小坂眞吾が、フォナックの補聴器を実際に体験することになった。
小坂は、音楽と落語をこよなく愛する趣味人で、仕事でもCD制作などを通じて長年“音”と接してきた。そんな耳の肥えた小坂が、還暦を迎え、生涯初の補聴器づくりを思い立ったのには大きな理由があった。
「私はもの心ついた時から現在まで左耳がまったく聞こえません。自分はそういうものだと思って60年間生きてきました。それが、ソノヴァの補聴器の性能のよさを知り、左耳は聞こえないまでも、右耳のきこえがよくなれば人生が変わるかもしれないと思いました。そんな期待を胸に補聴器をつくることにしました」(小坂)
大正時代に創業した補聴器専門店のプロが教える失敗しない選び方
初めての補聴器をオーダーするために小坂が来店したのが、大正5年創業の「補聴器専門店プロショップ大塚 吉祥寺店」だ。都内と静岡県内に各3店舗を構え、これまで1万人以上のきこえに悩む人の補聴器をつくってきた。
今回は大塚補聴器代表の大塚祥仁さんと、同店の言語聴覚士である稲葉由衣さんが、小坂に最適な補聴器づくりをサポートした。
1.聞こえの状態や悩みなどをカウンセリング

補聴器を作るにあたり、まず日常生活でのきこえの状態や困りごとのカウンセリングを行う。小坂は補聴器を作るにあたり参考として、事前に耳鼻科で検査を行った際のオージオグラム(聴力検査結果)を持参した。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会では、耳のきこえの不調原因が治療可能な疾病や怪我による可能性もあるため、一度耳鼻科にかかってから補聴器の購入を推奨している。

2. 言語聴覚士の資格を持ったスタッフが最新の機器で聴力を測定


完全防音の部屋に移動しヘッドホンを使った聞こえ方の測定。全部で4種類があり、はじめに音のきこえを調べた。一般的な健康診断の聴力測定では、高音と低音の2種類の周波数の音できこえを判断するが、大塚補聴器では11種類の周波数の音を使い細部まで念入りに測定をする。これに加え、不快に感じる音量の大きさを調べる不快閾値(ふかいいきち)の測定、小さい音のきこえを耳の奥にある蝸牛に振動を伝えて調べる骨伝導聴力の測定、ことばの聞き取りの測定が行われた。
3.小坂の耳にぴったりの補聴器が決定

稲葉さんと大塚代表のお二人が小坂に最適な器種として選んだのが、フォナック補聴器の最上級モデルである耳かけタイプの「フォナック オーデオ インフィニオ スフィア補聴器」。補聴器としては世界初*となるサウンドプロセッシング専用AIチップを搭載。「ことば」と「雑音」を切り離し、雑音を最大限に除去することで明瞭なことばを届けることを可能にしている。
*2024年8月 ソノヴァ社調べ

4.選ばれた補聴器を聴力に合わせてフィッティング

選んだ補聴器を利用者の使用目的、着け心地の良さ、聴力に合わせてフィッティングを行っていく。このセッティングがユーザーにとって最高の補聴器に仕上げる最大のポイント。ハウリングの状況や、鼓膜にどんな音が届いているかを実測し、その数値をパソコンでリアルタイムに表示させながら補聴器の音質をチューニングしていく。その後、稲葉さんが最終調整を行い、小坂の耳に取り付けられた。
小坂眞吾×大塚祥仁代表 補聴器について語る

小坂眞吾プロフィール
1965年生まれ。岐阜県白川村出身。小学館取締役。1990年小学館入社。「BE-PAL」「サライ」など一貫してライフスタイル誌の編集に携わり2014年には「サライ」編集長に就任。CD付きマガジン「落語 昭和の名人シリーズ」を手掛け、落語の魅力を伝えると同時に、落語文化の継承にも貢献した。
大塚祥仁さん(以下=大塚) 補聴器づくりの体験はいかがでしたか。
小坂 時間としてあっという間でしたが、聴力測定をあそこまで徹底的に行うとは思っていませんでした。
大塚 当社で行っているのは、日本でこれから広げていく最新の測定法でして、導入しているところはまだ少数だと思います。
小坂 骨導聴力のきこえの状態も計測できるのですね。
大塚 きこえには個人差がありまして、例えばドレミ音階の中で、ある一音だけがきこえづらいというケースもあります。11の周波数で測定を行うことで、その一音が何かも瞬時にわかります。
小坂 会話をしていてもことばによって聞こえやすい、聞こえにくいがありますね。
大塚 人のことばには4000ヘルツ以上の非常に高い周波数の声もあります。仮にここだけが聞こえにくく、3000ヘルツ以下の低音は問題なく聞こえているのであれば、高い周波数の音だけを増幅し低い周波数の音は何も変えないという調整を行うことも可能です。
小坂 今回選んでいただいた『フォナック オーデオ インフィニオ スフィア補聴器』はAI技術で音のきこえを高めることもできる最新のモデルなのですね。
大塚 ノイズと声を分離する性能がきわめて高く、店の中や電車内など雑音下でのきこえがとてもよくなると評価されています。
小坂 私は左耳が聞こえませんが、補聴器は両耳につけた方がいいのですか。
大塚 補聴器に備わる両耳間通信が働いて、補聴器がどの方向から声が聞こえているのか判断してくれます。なおかつ、騒がしい中でのきこえにお困りだとおっしゃっていましたので、左右で雑音を分離して、声がより鮮明になるセッティングとして提案しました。従来のきこえとの違いも感じていただけるのではないかと思っています。
小坂 これからの試聴が楽しみです。
大塚 騒がしい環境や、ご家庭、会社などでも試してください。装用後、より最適に耳に馴染むように微調整をしますので、1~2週間後に1度お店にお越しください。
小坂 ありがとうございます。では、早速今夜からゴールデン街の行きつけのバーで試してみます。

大塚祥仁さんプロフィール
1983年生まれ。静岡県浜松市出身。大正五年に創業した㈱大塚の4代目社長。補聴器のデジタル化を踏まえて15歳からコンピュータやプログラミングを学ぶ。働きながら社会人大学院生として中京大学大学院に入学。30歳で株式会社大塚の代表取締役に就任した。
【小坂の補聴器づくり体験編は後半に続きます】

大塚補聴器 吉祥寺店
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-15-9 岩崎吉祥寺ビル8階
(吉祥寺駅北口より徒歩1分)
営業時間:9:30~18:00
定休日:木曜日、第一・第三・第五水曜日、祝日
電話:0120・4133・69
問い合わせ先/ソノヴァ・ジャパン株式会社(フォナック補聴器) 0120・06・4079
