焼酎を購入するとき、どのような判断材料をもとに選べばいいだろう。押さえておきたいキーワードと、新しい流れを酒選びのプロに聞いた。

『伊勢五本店』の棚に並ぶ焼酎は、往年の名品から注目の香り系まで充実している。ほとんどの値札に蒸留法と麹も記載されている。

ライチを思わせる華やかな香り、青りんごのような香味。近年、そんなフルーティな“香り系”と呼ばれる焼酎が注目を集めている。ソーダ割りで気軽に楽しむ人も増え、焼酎のイメージはずいぶん広がった。

酒販店に並ぶ焼酎のラベルもバラエティ豊かになり、選択肢が増えた分、どう選べばいいか悩む人もいるだろう。そこで、焼酎を選ぶ際のヒントを求め、『伊勢五本店 中目黒店』で、焼酎の新しい潮流にも通じた店員の石井大輔さんに話を聞いた。

焼酎に魅了され、伊勢五本店に入社したスタッフの石井大輔さん。
角打ちは、とんとろスモーク300円、いかうに400円などの肴も数種類ある。

「いろいろ要素はありますが、まず押さえたいのは、蒸留法と麹、芋焼酎の場合は原料となるさつま芋の品種です。それぞれの特性を知っておくと、味わいを想像する手がかりになります」

特性の基本を知ろう

まずは芋の品種について。ひと昔前まで焼酎用の芋といえば、キレのよい甘みに仕上がる白・黄色系のコガネセンガン一辺倒だった。

「しかし近年は、芋の個性を表現したいという造り手の考えで、多彩になりました。色で大きく4タイプに分けられます」と石井さん。

白・黄色系以外の3つはこうだ。ハマコマチなどのオレンジ系は若いマンゴーや紅茶の香り。アヤムラサキなど紫芋系はヨーグルトのような爽やかな香りで、ベニマサリなどの紅芋系は焼き芋のような甘い香りが立つ。ラベルに品種が書いてあればぜひ注目したい。

蒸留は常圧と減圧がある

次は蒸留法。主に2種類あり、焼酎の酒質を大きく左右する。伝統的な常圧蒸留は、醪を高温で煮るため、香ばしくどっしりとした味になりやすい。一方、1970年代以降に普及した減圧蒸留は、気圧を下げて蒸留するため、軽やかな酒質に仕上がりやすい。流行の“香り系”は減圧が多い。

最後に麹だ。主原料のでんぷんを糖に変えるための麹も、酒質の指標に。白麹は柔らかめの味わいになり、黒麹はコクが出やすい。清酒用の黄麹は吟醸香に似た香りになるという特徴があるという。

「とはいえ、原料の品種、蒸留法、麹などのかけ合わせ次第で味わいの表情は変わります。常圧蒸留なのに軽やかな焼酎もあり、そういった意外性がまた面白いんです。特性の基本を押さえておくと、選ぶのも飲む楽しみも一層膨らむはずです」

店で焼酎を選ぶ楽しみ

焼酎を選ぶとき、変わり種に目を向けるのもいい。じつは焼酎にも日本酒のように季節酒がある。石井さんは「今なら(本誌掲載時)夏焼酎です」と、見た目も涼し気な瓶が並ぶ棚を案内してくれた。夏焼酎は、アルコール度数を20度程度に仕上げたものが多く、軽快で飲みやすいのが魅力だ。9月に入れば新焼酎が出回る。採れたての原料を使い、濾過せずに仕上げるため、原料の持ち味が堪能できるという。こういった季節酒を待ちわびるファンも多い。

入口の近くに設けられた夏焼酎コーナー。涼し気な見た目の瓶が目を引く。

売り場で異彩を放っていたボタニカル系と呼ばれるタイプも見逃せない。焼酎にスパイスや茶葉などの副原料を漬けた新ジャンルの酒で、若い層にも人気だ。

「多彩な焼酎は選ぶ楽しみがあります。飲み方を選べるのも焼酎の醍醐味」と石井さん。ロックに水割り、そしてソーダ割りを推奨する蔵も今は多い。また店内の角打ちコーナーでは、焼酎産地で王道の「お湯割りを好む人も増えています」とか。温めることで膨らむ香り。その美味しさが再発見されているというのだから、改めて試してみたい。

新しい焼酎のテロワール

飲み手の楽しみが広がった今、造りの現場にも変化が生まれている。「テロワールを意識する流れが生まれつつあると思います」と石井さんは話す。

テロワールとはワインの世界でよく使われる言葉で、畑の土壌や風土がワインの味を左右するという概念だ。今、焼酎でもその考え方が色濃くなっているというのだ。

「たとえば『山ねこ』を造る尾鈴山蒸留所のように自社栽培した原料を使ったり、地元農家と連携したり。『Watanabe Shochu Brothers』を手がける渡邊酒造場では、芋をヘタも土も残したまま仕込みます。大地を感じてほしい、と熱く語る造り手の声も聞くようになりました」

そうした想いは製法の細部にまで反映されている。原料の品種、蒸留法、麹も、単なるスペックではなく、風土をどう表現したいかという造り手の答えでもあろう。

「焼酎のテロワールを考えるとき、造り手の姿が浮かびます。風土に根ざした造り手たちの想いもお客様に伝えていく。それが僕たちの大事な役目だと感じています」

石井さんはそう締めくくった。

伊勢五本店 中目黒店

カウンター席の角打ちスペースで試せる焼酎は50種ほど。微細な泡の“松園式ソーダ割り”はぜひ試してほしい。

東京・千駄木で320年続く老舗の中目黒店。2015年の開店以来、モダンな黒壁が印象的な店構えで酒好きを引き寄せる。焼酎は、21世紀初頭から扱う往年の銘柄から、近年人気の香り系まで多彩な顔ぶれが整然と並ぶ。扱う焼酎蔵は約90。それぞれの味わいに精通したスタッフ陣による誠実な接客で、気持ちよく買い物できる。

●住所:東京都目黒区青葉台1-20-2 電話番号:03・5784・4584 営業時間:10時〜19時(角打ちは15時〜18時、土曜・日曜は12時〜18時) 定休日:火曜、祝日 角打ち:角打ちあり グラス300円〜 7席 交通アクセス:東急東横線ほか中目黒駅より徒歩約7分 ネットショップ: https://www.isego.shop/

全国「本格焼酎」が揃う店

北海道/札幌 『桜本商店』

創業は1910年。日用品の店からスタートし、今では全国の日本酒や和リキュールなど約400種を揃える酒屋へと発展した。モットーは「いい酒、いい響き」。焼酎は九州産を中心に、沖縄の泡盛、八丈島産も。素材の味を直に感じる常圧蒸留が主力だが、近年は軽やかな減圧蒸留の扱いも増加中。「造り手の人柄や情熱に触れ、心動かされたものを厳選しています」と代表の櫻本武士さん。2023年に改装したスタイリッシュな外観も印象的だ。

住所:北海道札幌市中央区南10条西7丁目4-3 
電話番号:011・521・2078 
営業時間:10時~19時 
定休日:日曜、月曜 
角打ち:なし 
交通アクセス:札幌市電中島公園通停留所より徒歩約2分 
ネットショップ:https://ontable.jp/

福島/福島市 『中屋酒店』

JR福島駅から徒歩約5分。3代目の田中信幸さんが跡を継ぐタイミングで、好きだった焼酎の品揃えを充実させた。同じ鹿児島産でも『GLOW』のような薫り高いものから、『さつま寿』のように余韻が楽しめるものまで多彩だ。「また飲みたくなる一本を基準に選んでいます」と田中さん。2024年、隣に角打ち店『ナカヤノトナリ』を開店。福島で焼酎文化を盛り上げている。

住所:福島市置賜町4-21 
電話番号:024・522・2913 
営業時間:10時~19時30分(隣接店の角打ちは15時~21時) 
定休日:火曜
角打ち:あり グラス500円~ 立ち飲み約18人 
交通アクセス:JRほか福島駅より徒歩約5分
ネットショップ:https://nakayasake.shop-pro.jp/

東京/築地 『酒の勝鬨』

モットーは「飲食店の名バイプレーヤー」。築地という場所柄、飲食店で働くプロも通い詰める。「要望に応じた酒選びはもちろん、プラスαの提案を心がけています」と、焼酎担当の堀口潤一さん。ボトルには味わいを手書きで紹介したポップが添えられ、自ら選ぶ楽しさも格別。鹿児島『六代目百合』、熊本『武者返し』、東京・青ヶ島『あおちゅう奥山直子』など、変わらぬ製法で造り続ける銘柄をはじめ、堀口さんの惚れ込んだ銘柄が並ぶ。

住所:東京都中央区築地7-10-11 
電話番号:03・3543・6301 
営業時間:8時30分~18時 
定休日:日曜、祝日    
角打ち:なし 
交通アクセス:日比谷線築地駅より徒歩約5分      
ネットショップ:https://katidoki.shop/

東京/芝 『ものがたり酒店』

芝商店街の一角にある、焼酎と日本酒の専門店だ。焼酎は熊本県の米焼酎「球磨焼酎」がメイン。「地元以外では当店が日本で一番の品揃えだと自負しています」そう語るのは、地酒の魅力にはまり酒販店を開いた代表の三浦尚城さん。蔵元を訪ね歩き、直接仕入れた焼酎は、常時20種類以上が試飲可能。店には“球磨焼酎案内人”の資格を持つスタッフがいて、店名のとおり蔵の風景や造り手の想いを臨場感たっぷりに語ってくれる。

住所:東京都港区芝2-16-3 
電話番号:03・3451・6421 
営業時間:11時~19時、土曜11時~18時30分 
定休日:日曜、祝日 
角打ち:なし 
交通アクセス:都営三田線芝公園駅より徒歩約4分      
ネットショップ:https://monogatari-sake.com/

東京/狛江 『籠屋 秋元商店』

1902年創業。籠編みの店をルーツに持ち、現在は狛江の本店を含む全4店舗を構える地域密着型の酒販店だ。“情熱の酒屋”を掲げ、「同じように熱い想いを持つ蔵元さんの酒を多くの人に広めたい」と酒販部の横山太一さん。焼酎は約60蔵を扱う。定期開催のイベント“スナック部室 焼酎部”では、“お茶割りの会”など各回テーマを設け、焼酎のさまざまな楽しみ方を紹介。今年1月には狛江駅前に立ち飲み店『籠屋酒場』もオープンした。

住所:東京都狛江市駒井町3-34-3 
電話番号:03・3480・8931 
営業時間:10時~19時 
定休日:月曜    
角打ち:なし 
交通アクセス:小田急線和泉多摩川駅よりバスで約7分 
ネットショップ:https://shop.kago-ya.net/

大阪/高槻市 『白菊屋』

“包丁道の祖”といわれる藤原山蔭を祀る総持寺の近く。日本酒、ワインにベルギービールも扱うが、とりわけ力を入れるのが焼酎だ。芋を中心に、宮崎や大分の麦、米や黒糖焼酎まで、約70蔵を揃える。飲んでほっとする王道から個性際立つ一本まで、独断と偏見に愛情を加味してセレクト。「最も重視するのは造り手の人柄、背景、目指すものに共感できるかどうかです」と店長の藤本一路さん。年に一度、蔵元と客をつなぐ焼酎の会を開催。

住所:大阪府高槻市柳川町2-3-2 
電話番号:072・696・0739 
営業時間:9時~20時 
定休日:水曜 
角打ち:あり グラス330円~、立ち飲み約10人 
交通アクセス:阪急電鉄総持寺駅より徒歩約13分
ネットショップ:なし

大阪/茨木市 『かどや酒店』

「人の記憶に残る酒屋を永遠に目指しています」と店主の角本稔さん。とりわけ若手の焼酎蔵元とのつながりが深く、店には造り手も多く訪れる。数年前にアメリカ出身の熱烈な焼酎ファン、イアンさんが店の仲間に加わり、ラインナップはさらに充実。個性豊かなスタッフ全員がSNSを活用して情報を発信。試飲しながら味わいや魅力をテンポよく紹介する動画で、思わず引き込まれる。

住所:大阪府茨木市蔵垣内3-18-16 
電話番号:072・625・0787 
営業時間:13時~18時、土曜10時30分~18時 
定休日:日曜、水曜(臨時休業あり)    
角打ち:なし 
交通アクセス:JR京都線千里丘駅、阪急京都線摂津市駅より各徒歩約10分
ネットショップ:https://kadoya-sake.ocnk.net

広島/広島市 『大和屋酒舗 胡町本店』

1869年に酒蔵として創業。路面電車が行き交う広島中心部に本店を構え、日本酒やワインにウイスキーなど幅広い酒を揃える。焼酎選びの基準は、「良質であり、手造りであること」と明快だ。扱う焼酎は全国約50蔵。芋の皮をむいて仕込む宮田本店『銀の星』、白ワイン酵母を使う小正醸造『蔵の師魂 The Green』など、個性的な銘柄も並ぶ。本店から徒歩約15分の場所にある支店『やまとや酒舗 Naka-machi』では角打ちも楽しめる。

住所:広島市中区胡町4-3 
電話番号:082・241・5660 
営業時間:10時~21時 
定休日:日曜、祝日 
角打ち:なし 
交通アクセス:広島電鉄銀山町停留所より徒歩約1分 
ネットショップ:https://www.yamatoya-e.com/

福岡/博多 『住吉酒販 博多本店』

「酒に笑う人生」を掲げ、プロからも信頼を集める一軒。モダンな店内には、全国の生産者から直接仕入れた美酒と、郷土色豊かな食品が並ぶ。「個性的でクリア、真によいと感じたもの」を軸に据えた品揃えだ。焼酎は、柑橘を思わせる黒木本店の『謳歌』や、大和一酒造元の玄米焼酎『球磨川』なども揃える。JR博多駅構内にある支店は、九州産の酒に特化。棚に並ぶ多くの焼酎を有料試飲できるので、旅の締めくくりにぜひ立ち寄りたい。

住所:福岡市博多区住吉3-8-27 
電話番号:092・281・3815 
営業時間:9時30分~18時30分 
定休日:日曜、祝日 
角打ち:なし 
交通アクセス:JR博多駅より徒歩約15分
ネットショップ:https://field-to-table.jp/

鹿児島/鹿児島市 『コセド酒店南栄本店』

焼酎王国・鹿児島に店を構え、国内屈指の品揃え。地元の芋と黒糖焼酎を中心に扱い、都内では入手しづらい銘柄にも出会える。「スタッフともども、日本で一番、焼酎蔵元を訪ねている酒販店だと自任しています」と代表の米盛茂樹さん。豊富な知識を持つスタッフ陣が銘柄選びをサポートしてくれ、定期的に試飲販促会も開催。蔵元を招くなど、焼酎イベントも複数行っている。市内の繁華街には「天文館店」があり、鹿児島中央駅から徒歩約5分の「中央駅店」では角打ちも楽しめる。

住所:鹿児島市南栄6-916-72 
電話番号:099・268・3554 
営業時間:10時~18時30分 
定休日:第2・第4日曜、第4水曜
角打ち:なし 
交通アクセス:JR坂之上駅より徒歩約20分  
ネットショップ:なし

鹿児島/南さつま市 『マルダイ商店』

日本三大砂丘のひとつ“吹上浜”の近くに佇む、家族4人で営む小さな焼酎専門店だ。店主の大迫侑椰さんは「自分で飲んで心からすすめたいと思えるもの」を届けるため、毎晩じっくりと試飲を重ね、その数は年間約1800杯にも達する。ネットショップでは、各銘柄の焼酎愛あふれる試飲レポートも充実。焼酎文化の裾野を広げたいという想いから、約100蔵の焼酎を扱っている。

住所:鹿児島県南さつま市加世田本町12-1 
電話番号:0993・52・2894 
営業時間:9時~20時、日曜・祝日9時~19時 
定休日:第2・第3月曜(8月、12月を除く)    
角打ち:なし
交通アクセス:JR鹿児島中央駅より車で約1時間 
ネットショップ:https://www.big-circle.com

鹿児島/奄美大島 『瀬戸内酒販』

世界遺産にも登録された奄美大島は黒糖焼酎の本場。島の南部、古仁屋港から徒歩約1分の場所に店はある。喜界島や与論島なども含め、奄美群島の蔵元が造る全銘柄を置く。すべての蔵を巡り、製法や歴史まで知り尽くした店主・義永卓也さんは黒糖焼酎コンシェルジュを名乗り、ひとりひとりに寄り添った銘柄を提案。さらに「一度きりではなく、気に入ったものを長く愛飲してもらえるように」との想いから、全銘柄が有料で試飲可能。

住所:鹿児島県大島郡瀬戸内町古仁屋大湊3 
電話番号:0997・72・0818 
営業時間:10時~19時 
定休日:火曜 
角打ち:あり(商品の購入を決めるための有料試飲) 
交通アクセス:奄美空港より車で約1時間30分
ネットショップ:https://setouchisyuhan.com/

取材・文/安井洋子 撮影/海老原俊之

※『サライ』2026年8月号より

8月号特集は「本格焼酎」は風土で味わう

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2026年
11月号

サライ最新号

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Youtube
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

花人日和(かじんびより)

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店