取材・文・写真/鈴木拓也

遺跡で発掘される物の中には、どんな用途で使われたのか、わからないものが多数存在する。そうした遺物ばかりを集めた展覧会「もう!ナニこれ?-奈良市出土用途不明品精選-」が、奈良市埋蔵文化財調査センターで開催中だ。

本展は、408点の謎多き遺物を展示して、あれこれと楽しく推測してもらうというコンセプト。過去にも2回、同様の展示会が行われ、来館者数で最多を更新したという。
今回はさらにバージョンアップして、以前の展示会で人気の高かったものにくわえ、新たに見つかった遺物を5つのメインテーマに分けて展示している。本稿では、各テーマにつき1つずつ紹介していこう。
国内で類例ゼロの瓦の紋様のなにか
「ナニこれ!コレなに?」というテーマの遺物の一つがこちら。平城京で使われた井戸の枠内から出土した。左は、比較のために置かれた8世紀前半の丸瓦で、右が「蓮華紋押型土製品」と名付けられた謎の遺物。丸瓦に持ち手が付いたようなものだが、国内ではまったく類例がなく、国外でも韓国でわずか1点だけ似たものが見つかっている。

筆者は一瞬、キノコのオブジェかと思ったが、丸瓦と同じ紋様が刻まれているのに注目。梵鐘の鋳型の撞座(つきざ)部分への押捺に使われたものではないかと推測されている。
小さすぎて使えない容器たち
こちらは、平城京跡から多数出土した「ミニチュア土器」。杯や壺など容器であるのは確かだが、実用に供しないほど小さい。なかには、ろくろで本来の大きさの土器と同じように丁寧に作られたものもある。

用途については、水滴(硯に水を注ぐ書道具)や玩具など諸説ある。井戸から出土する例が多く見られるため、祭祀行為に用いられたとも考えられている。
氏名が書かれた何十もの形代
古代の祭祀・宗教に関係する遺物は、史料が残らない限り、判定が難しいものが多い。特に庶民が使ったものは、文字による説明がほとんど残っていないので、なおさらである。本展では、薄板を切り抜いた人の形代(かたしろ)が展示されているが、どんな目的で使われたのかは不明。
下の写真にあるのもその一つ。平安時代の井戸から見つかった緑釉(りょくゆう)陶器の瓶(へい)と、中に入っていた37枚もの形代である。

形代の胴体には人名が書かれている。「伊勢宗子(いせのむねこ)」「秦奈良子(はたのならこ) 又名粟日(またのなあわひ)」「伴廣富(とものひろとみ)」のいずれかで、「伊勢宗子」「秦奈良子 又名粟日」が表裏に書かれたものが1枚だけある。おそらく病気平癒を願って作られたもので、まとめて廃棄する際に瓶に納めたのであろうと考えられている。
土器に記された不思議な記号
土器に文字や記号が墨書されたものは多いが、どんな意味かわからないものがある。例えば、平城京の井戸枠内から出土した土器には、底面に「の」の逆字らしきものや、「∞」に似た記号が見える。

これは、所有者または特定の組織を示す、ロゴマークのようなものだと考えられている。
正体が明かされた遺物も
こちらも平城京の井戸枠内から出土した遺物だが、須恵器の一部に、不思議なシルエットがあるのが見つかった。大きさは2cmほどで、カエルに見えなくもない。

詳しく調べてみると、やはりカエルであった。須恵器に接触した状態で死んで、長い歳月の間に炭化し、残ったのである。太ももの骨とすねの骨が同程度の長さで、骨体が細い特徴から、ニホンアマガエルであろうとされている。あるいは、モリアオガエルやシュレーゲルアオガエルの可能性もあるそうだ。
こうしたミステリアスな遺物は見ていて飽きず、「もしかして、こんな風に使われていたのではないか?」など空想が膨らむ。古代史への関心を新たにした探訪であった。
【開催要項】
もう!ナニこれ?-奈良市出土用途不明品精選-
会期:~12月4日(金)
会場:奈良市埋蔵文化財調査センター 展示室
住所:奈良市大安寺西二丁目281番地
電話:0742-33-1821(代表)
公式サイト:https://www.city.nara.lg.jp/site/bunkazai/154631.html
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)
休館日:土曜日
入館料:無料
アクセス:
近鉄奈良駅・JR奈良駅西口・新大宮駅から奈良交通バス28系統「恋の窪町」行き「大安寺西二丁目」下車すぐ。
JR奈良駅・近鉄奈良駅から奈良交通バス22系統「県立図書情報館」行き「大安寺西口」下車、西へ徒歩2分。
取材・文・写真/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。







