ワイナリーが約100か所に増加し、赤ワイン用葡萄生産で日本一になった長野県。2003年にエッセイスト・画家の玉村豊男氏が作った『ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー』が嚆矢となり、個性的なワイナリーが次々と誕生する「千曲川ワインバレー」を巡る。

各ワイナリーへは、JR北陸新幹線上田駅からタクシーで20〜30分前後。椀子ワイナリーは夏季に上田駅からのシャトルバス便あり(詳細は要問い合わせ)。

この土地に「ワイン文化」を根付かせたい

ワインは、土地そのものだ。葡萄の品種が同じでも、植えられた土地が違えばワインの味は変わる。訪ねたのは、千曲川ワインバレーの3つのワイナリー。標高800mを超える高地にワイン文化を育ててきた。

千曲川ワインバレーは、長野県北東の千曲川沿いに広がるワイン産地。降水量が少なく、日照時間が長く、水はけが良いという葡萄栽培に理想的な土地だ。かつて養蚕に使われた桑畑が、自社ワイン用の葡萄畑として蘇っている。メルロー、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シラーといった欧米系品種の栽培に適するという。近年、個人経営の個性的な施設も増え、現在、約50軒のワイナリーがある。

向かったのは、東御市の『リュー ド ヴァン』。代表の小山英明氏の話が印象深かった。ワイン文化を育てるのは簡単ではない。葡萄を育てる人、醸造する人、料理をつくる人、それを楽しむ人。葡萄づくりから始まる豊かな循環があってこそ、ワイン文化がつくられるのだ。「ワインは、大切な人とのコミュニケーションの時間です。あくまでも主役は人。だからワインと楽しむ食事に3時間もかけられるのです」と小山氏はいう。

小山氏は、ワインメーカーでの勤務を経て、この地で独立開業して既に20年。自らが「ワインと共に暮らしていきたい」との思いから、この世界に足を踏み入れた。付属の宿泊施設では、小山氏とともに夜が更けるまでワインと食を堪能できるのも、オーベルジュならではの楽しみだ。

リュー ド ヴァン

レストランと宿泊施設のあるラグジュアリー・ワイナリー

フランス語で「ワイン通り」を意味する名前には「ワインと共に豊かに暮らしていける環境が、このワイン通りから広がって欲しい」そんな思いが込められている。

長野県東御市祢津405
電話:0268・71・5973
ショップは無休(年末年始を除く)
営業時間:10時〜 17時、カフェレストランは火・水・木曜休 ランチ:11時〜 14時 軽食・カフェ:10時〜11時/ 14時〜 16時30分 ディナー:18時〜(完全予約制)

オードブル+メイン+デザート+コーヒーのランチコース(3600円)。写真のメインは地元で獲られた「ツキノワグマとフォアグラの半月パイ包み焼き」。
ショップではワインの購入・有料試飲(1杯300円〜)可能。看板ワインはソーヴィニヨン・ブラン(白)。見学は要事前問い合わせ。
週末(金・土曜泊)限定の宿。夜はディナーとワインを心ゆくまで堪能し、ゆったり滞在できる。1日2組限定で、希望日の3か月前からHPで予約受付。1泊2食3万9800円〜。


次に訪れたのは、千曲川を望む丘陵地に広がる『シャトー・メルシャン 椀子(まりこ)ワイナリー』だ。キリンホールディングス傘下のメルシャンは、日本の葡萄を使った「日本ワイン」の生産・販売などを手掛けるシャトー・メルシャン事業を展開する。

約30ヘクタールの畑に整然と並ぶ葡萄の樹。浅間山系が連なり、澄んだ空気の中を心地よい風が吹き抜けていく。ヨーロッパの銘醸地を思わせる。

「ここは、夜と昼間の気温差があります。風通しもよくて、雨も少ない。葡萄づくりに必要な要素がそろっています」と、チーフ・ワインメーカーの勝野泰朗氏。雇用創出や人材育成、自然との共生、福祉と連携し障害者に作業をしてもらう「農福連携」にも力を入れる。その姿勢は、日本の農業の未来そのものへの挑戦に映る。

シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー

「世界のベストワイナリー100」にランクイン

世界最高のワイナリーを選出する「ワールド・ベスト・ヴィンヤード」で昨年は世界46位。ツアー、ホスピタリティのレベル、環境への取り組みが世界的に高い評価を受け、6年連続でランクイン。

長野県上田市長瀬146-2
電話:0268・75・8790
営業時間:10時〜16時30分
定休日:変動するため要問い合わせ

本州では最大級規模の約30ヘクタールの葡萄園から、浅間山系の絶景を望める。
葡萄園を見る片山修氏(右)と勝野泰朗氏。
2階のショップで有料試飲可能(1杯 約400円〜)。ガイド付きワイナリーツアー(要事前予約、4000円〜)などもある。


千曲川ワインバレーを語るとき、触れなければいけないのは、『ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー』である。オーナーの玉村豊男氏は、ワインの本場フランスに留学し、画家、エッセイストとして知られる。玉村氏は、人生の後半をこの丘陵に捧げた。荒れ地を開墾し、メルロー、シャルドネ、ピノ・ノワールを植栽したが、その道は決してやさしくなかった。ここには華美な演出はないが、また帰ってきたいと思わせる何かがある。長居をしたくなる不思議な静けさがあるのだ。

「目指しているのは“田園のリゾート”です」と、広報担当者は語る。

ワイナリーを訪ねる旅は、人を訪ねる旅でもある。グラスの中に、その土地で生きようと決めた勇士たちの志が宿っている。ワインを味わうことは、その土地を味わうこと、そしてつくり手の思いを知ることなのだと、この旅は教えてくれる。

ヴィラデスト ワイナリー

エッセイストが作ったレストラン併設ワイナリー

G7サミットでも提供されたヴィンテージワインも有名。有料テイスティング可(1杯300円〜)。玉村氏の描いた絵はがきなども販売。

「千曲川ワインバレー」の先駆け、『ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー』は、エッセイスト・画家の玉村豊男氏がオーナーを務めるワイナリー・農園・レストラン。

長野県東御市和6027
電話:0268・63・7373
営業時間:10時〜17時 カフェは水曜定休、ショップは通常営業(12下旬〜3月上旬頃冬季休業あり)

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提供/ JR 東日本 文/片山 修

 

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