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あなたが心安らぐのは、どのような時ですか? 人それぞれ異なるでしょうが、誰もが安らぎを感じる空間はあるように思います。そうした佇まいを持っている一つが、京都老舗の旅館だと言えます。

では老舗旅館の何が、訪れる人に“心の安らぎ”をもたらすのでしょうか? 京都の中でも特に歴史のある老舗旅館・柊家を通して、そのことを考えてみたいと思います。

【京の花 歳時記】では、「花と宿」、「花と食」をテーマに、季節の花と宿、和食、京菓子との関わりを一年を通じて追っていく、『柊家』、『茶寮宝泉』、『菊乃井 本店』のリレー連載です。第9回は、京都の市街地の中心部、麩屋町通に面した地に宿を構える老舗旅館『柊家』の花と宿をご紹介します。

◆正月の出迎えの花

「冬空に響く除夜の鐘を聞きながら、京都の街で年を越してみたい」と思われたことのある方は、多いのではないでしょうか? 中でも、格式のある老舗旅館で過ごす年越しには憧れが募るものです。しかしながら、そうした宿の予約を取るのは困難を極めるもの。そこで特別に、柊家のお正月風景をご紹介いたします。

注連飾りをした柊家の門をくぐると、紅白の餅花(もちばな)が飾られていました。

『柊家』六代目女将の西村明美さんと、餅花。

「お正月に餅花を飾り始めたのは、もともとお付き合いのあった截金(きりかね)作家の江里佐代子(えり・さよこ)さんからご縁をいただいて始めたのが最初です。

どうしたら上手く丸められるのだろう、というようなことから始まり、毎年改良を加えながら今に至っております。

例年、餅花づくりはお花屋さんで枝垂れ柳を選び、お餅をつくるところから始めます。子供たちも含めて賑やかに飾り付ける年もあれば、私一人で黙々と作る年もあります(笑)。

餅花は赤い餅が多いと可愛らしくなりすぎますし、粒が大きいと細やかさが出なくなります。華やぐ柔らかな雰囲気を出すために、色を調整したり、並び方を年ごとに変えたりしながら楽しんで飾りつけていますね」と、『柊家』長女の西村 舞さんが餅花について教えてくれました。

新年の飾り物にふさわしい、盆梅。
卯の陶器は三代目小川文斎によるもの。

上がり口には、盆梅(ぼんばい)が飾られていました。

「お正月ですから、他の植物に先駆けて花開く、梅を飾りました。春を呼ぶ初花として、縁起がいいと言われています。盆梅の中には、別名・元日草の名を持つ福寿草も植えて、“良い年になりますように”との祝いの気持ちが表れています」と舞さん。

◆梅の香りを移す、お屠蘇

柊家のお正月の朝は、お屠蘇(とそ)でお客様に新年を祝ったいただくことから始められるそうです。詳しいお話をお聞きしました。

輪島塗りの屠蘇器。
銚子飾りには、梅の花のほか、松と笹が付けられ、松竹梅が揃う。

「お正月の朝になると、『おめでとうさんです』と言いながら、お屠蘇を持って皆様のお部屋を回らせていただきます。香りとともに祝って頂くよう松竹梅を銚子飾りとしてあしらっております。

正月は元来、新しく年神様をお迎えする時です。梅の花の力をいただきながら、新年の豊穣と平安を願い、おめでたい時を過ごしていただきたいと思っております」と女将の西村明美さん。

◆お正月の朝食

元旦から1月4日の朝まで供される、お正月ならではの朝食(祝膳)の一部をご紹介いただきました。

右上から時計回りに、筍と蕗、黒豆、白味噌の雑煮、睨み鯛(にらみだい)。

「京都のお正月らしい朝食のご提供を、心がけております。

尾頭付きの鯛は睨み鯛といって、お正月に飾る風習があります。鯛の下に敷いた裏白(うらじろ)は、夫婦和合、白髪(長寿)を象徴するものとして、正月飾りにも使われるものです。裏側の白い方を上にして出すことで、“裏表のないこと”も表しています。

京都のお雑煮は、白味噌で仕立て、祝大根(いわいだいこん)と金時人参が紅白で入り、角が立たない丸餅を湯煮して用います」と女将。

◆青竹を使った正月飾り

新館広間には、切ったばかりの青々とした竹に花が生けられていました。

「この部屋は三面がガラス張りで柱がなく、正面向かって右側の一段低い場所に黒い御影石が埋め込まれています。この空間は、京都市内を流れる鴨川を表現したもので、外側に設えた御影石には川を表現するように水を張っています。光るような黒い御影石の空間に、青竹が立ったら清々しいと思い、飾り始めたのが最初です。

青竹の上の段には、お正月らしく枝垂れ柳と、長寿を表す苔木(こけぼく)、“難を転じる”縁起物の南天を生けました。下の段には、新春にふさわしい曙椿を生け、名前と色の縁起のいい花を取り合わせています。

雛祭りの時期には、雛壇の後ろに玄関に飾っている餅花をこの竹に生けて飾ります。餅花の愛らしい雰囲気を長く楽しんでいただけたら、嬉しいですね」と、舞さん。

***

「日本の木造建築は、木を育てることから始まります。数百年という歳月を経て育った樹木は、大工や指物師などの手によって家屋や調度品となります。そうした職人の手で作られた空間を長く大切に使うことによって、より深い“味わい”へと変わっていきます。そのことは、長く使われた建物が教えてくれます」と女将は話してくださいました。

古い物を大切に守りながら新しい物を融合していくというのが、日本の伝統。日本旅館・柊家の思いがよくわかります。それが柊家の持つ柔らかな安らぎに繋がっているのでしょう。

京都を訪れる際には、こうした“心の安らぎ”を得られる宿に滞在してみてはいかがでしょうか?

「柊家」

住所:京都市中京区麩屋町姉小路上ル中白山町
電話番号:075-221-1136
チェックイン:15時
チェックアウト:11時
https://www.hiiragiya.co.jp
インスタグラム
オンラインショップ

撮影/梅田彩華
構成/末原美裕(京都メディアライン HP:https://kyotomedialine.com Facebook
※本取材は2023年1月5日に行ったものです。

 


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