気温の上昇とともに、鮮やかになってくる新緑に誘われて、散歩気分も上がる季節。いつもの散歩道にも、さまざまな花を見かけるようになりました。
そんな身近な花々を題材にした、おくやまひさしさんのぬりえ本『散歩道の花ぬりえ』は、初心者でも気軽にバラエティに富んだ花のぬりえが楽しめる一冊です。幼少期より親しんだ自然をテーマに、学者とは違う視点と感性でとらえた、温かみのある独特な写真、イラストを制作するおくやまさん。その絵は、花のたたずまいや色合いが、まるで目の前に咲いているかのような可憐さで、見ているだけでも楽しめます。
今回は、日本を代表するボタニカルアートの第一人者、おくやまひさしさんの『散歩道の花ぬりえ』から、ぬりえの基本である水彩絵の具での塗り方や、花々のぬりえをご紹介します。
文・絵/おくやまひさし
塗り方手順(水彩絵の具)
水彩絵の具は鮮やかな彩色が可能で、色を混ぜて微妙な色調を表現できます。基本手順は色鉛筆同様、薄い色をベースに濃い色を足していくこと。色鉛筆に比べるとハードルが上がりますが、気軽にトライしてみましょう!
1.花びら全体に薄い色を入れる
2.濃い色を塗り足していく
3.葉も薄い色からスタート
4.濃い色でメリハリづけ
5.茎にも濃淡をつけて立体感を
6.この仕上がり感をお手本に
使用した水彩絵の具
ぬりえのはじめの一歩は画材選びから。今回紹介しているおくやまさんの元絵は水彩絵の具で描かれたものですが、おすすめは水彩タイプの色鉛筆か水彩絵の具。ふつうの色鉛筆でも描けますが、水筆で色をぼかしたり、グラデーションがつけられる水彩タイプがベターです。
おくやまさんが愛用しているのは、サクラマット水彩絵の具15色セット。薄く溶くことで透明感を出したり、濃いめにしてムラなく均一なタッチにしたり、色みを自在に調整できるのが特徴です。15色は少なく感じますが、色を混ぜて使うことで、微妙な色合いも再現可能です。
丸筆から面相筆まで4種類を使い分ける
筆は中太の丸筆から細い面相筆まで、4種類程度を使い分けます。丸筆は大きめの花びらや葉の薄い色での下塗りや、水筆にしてグラデーションづけ用に。面相筆は細かい部分の彩色やアクセントづけに欠かせません。水彩色鉛筆/水彩絵の具を問わず使えるので、まとめてそろえておきましょう。
オオマツヨイグサとヒガンバナのぬりえ
オオマツヨイグサ
アカバナ科マツヨイグサ属
生育地 道ばたや荒れ地
分布 日本各地
花期 7~9月
花色 黄
花のつき方 長い主軸に花柄のない花を多数つける
花の大きさ 6~8cm
葉の形 細長い楕円形
茎の高さ 80~150cm
生活型 越年草
夕方に開き、朝にしぼんでしまう花です。アレチマツヨイグサやコマツヨイグサなどの仲間があります。竹久夢二はヨイマツヨイグサと呼びました。黄色の花びらには、黄土色などで少しアクセントをつけましょう。
ヒガンバナ
ヒガンバナ科ヒガンバナ属
生育地 田のあぜや土手
分布 日本全土
花期 9月
花色 鮮紅色
花のつき方 散形状
花の大きさ 4cm
葉の形 線形
茎の高さ 30~50cm
生活型 多年草
秋の彼岸(9月下旬)に合わせたように咲くヒガンバナ。花のころには葉がなく、葉は花が枯れると伸びてきます。「葉見ず花見ず」とはこんな様子からついた名です。全体が赤い花ですが、陰影をつけて立体感を出しましょう。
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『散歩道の花ぬりえ』(おくやまひさし 著)
山と溪谷社
おくやまひさし
1937年、秋田県横手市生まれ。幼少時より自然や植物に親しむ。漫画家の馬場のぼる氏に師事した後、写真技術を独学で学び、日本各地のフィールドで撮影・観察活動を開始。以降、イラストレーター、写真家として図鑑や写真集、書籍を数多く制作。日本を代表するボタニカルアートの第一人者。