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「めぐるの匙(さじ)」の塗りは6種。左から:花塗り・溜/銀春慶塗り・錫蒔き/花塗り・赤/花塗り・黒/四分一塗り・錫蒔き/花塗り黒・四分一塗り。価格は各1万4300円(税込)

普段の食事で、匙を使って食べるメニューといえば何でしょう。カレーライス、シチュー、茶碗蒸し、それから、朝食のシリアルやヨーグルト……。 和食、洋食を問わず食卓にお箸といっしょに並べられることの多い匙。だからこそ、使い勝手のよさを追求した最高の匙を作りたいと試作と改良を重ね、「めぐるの匙」は約2年の歳月をかけて誕生しました。それは、会津の漆器職人と、暗闇のソーシャル・エンターテインメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」(https://did.dialogue.or.jp/)で活躍する視聴覚障害者の方たちが手を繋いだ結果でもありました。

そんな会津漆器「めぐるの匙」の常設展示が 、4月15日から東京・竹芝の「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」でスタートします。それはそれは美しい姿形を直に目にし、木と漆の温もりや、存在を忘れてしまうほどの軽さと扱いやすさを手にとって確かめてみてはいかがでしょう。

お箸やお椀と一緒に並べても美しく調和する形。柄の形状がお箸と同様に直線で構成されていることで、食事中にお箸と匙を持ち替えた際にも違和感がない。

「長い人生を共にしたくなるような“漆塗りの匙”を作りたい」。作り手たちのそんな思いから生まれた「めぐるの匙」には、実は兄姉がいます。まずは、その話をしましょう。

「めぐる」は、日本有数の漆器産地である会津で<水平(すいへい)><日月(にちげつ)>という器とともに2015年に誕生した漆器ブランド。その2つの器は、禅の修行に用いられる「応量器(おうりょうき)」をモチーフにした三つ組椀で、国産のトチの木で作られた木地の上に、会津漆器の腕利きの職人たちが漆を丁寧に塗り重ね、仕上げられています。

その誕生に至るまでの試行錯誤で重要な役割を果たしたのが、光を遮断した空間の中を歩き、視覚以外の様々な感覚やコミュニケーションを楽しむエンターテインメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドの女性たち。暗闇の案内人として日々専門的なトレーニングを積んでいる彼女たちは、“目には見えない感覚”や“数値や図面には表せない情報”をキャッチして伝えることが得意。その能力を器の開発に生かしたのです。試作品を使ってもらい、視覚に頼らない彼女たちであればこそ感じ取ることができる感想やアドバイスを改良に反映させる。それを繰り返すことにより、「めぐる」の第一子といえる<水平><日月>は生まれました。

「めぐる」の三つ組椀。左〈水平〉:手にしたときに器の傾きが分かりやすく、確かな安定感がある。右〈日月〉:思わず頬ずりしたくなる優しい形。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドのおひとり曰く「ずっと手の中に包んでおきたい」

<水平><日月>の特徴は、心地よい手触りや口当たりや、抱き上げたくなる優しいかたち。加えて、漆器の寿命は直せなくなるまでと言われるように、漆の塗り直しやカケ・ワレの補修などをすれば長く使うことができます。ちなみに、三つ組椀の内の小さなものは子ども用の椀としても使い易いサイズ。ですから、迎えられた家庭で世代を超えて愛されるようになる器ともいえるのです。

美味しいものが美味しくいただける漆の匙

美味しさを引き出す「めぐるの匙」は普段使いをすることで愛おしさが深まる。

「<水平><日月>の開発をしている時から、長い人生を共にしたくなるような匙を作りたいと思っていました」と語るのは「めぐる」の運営を手掛ける貝沼航さん。胸で温めていた思いを実現させようと匙の開発をスタートさせたのは2020年のこと。

デザインの方向性が決まり、試作品が形になった段階で、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドたちに参加を要請。漆職人、さらには開発メンバーたちの家族まで巻き込んで、その使い心地の感想をシェア。それを何度も繰り返して改良に反映させていくという<水平><日月>方式を再び採用したのです。

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドとして活躍する3人が、“触覚のアドバイザー”として商品開発に参加。

約2年の歳月をかけ、多くの対話を重ねて完成した「めぐるの匙」。水平を保ちやすくこぼしにくい柄の形、口に入れたときにすっと馴染む優しいツボ(凹み部分)の形など、美味しさを引き出す口当たりや持ち心地が徹底的に追求されています。

そして、感動するのが多彩な漆塗りの表現。6種を展開する「めぐるの匙」はベーシックな赤や黒の本塗りだけでなく、古来からの珍しい技法をアレンジした「銀春慶(ぎんしゅんけい)塗り」や「四分一(しぶいち)塗り」など、会津若松の3人の塗師の手になる高度な技が取り入れられています。

すっと口に入り、食べ物を優しく届けてくれる口当たりのいいツボ(凹み)。手の中で取り回しやすいため、心地よく安心して使うことができる。小さいお子さんの口元に運んであげるときもスムーズ。
トチの木で作られた木地の上に漆を丁寧に塗り重ねるのは高い技術を持ち信頼の厚い会津若松の3人の塗師たち。今や希少となっている日本産の上質な漆を使用している。
漆の匙というと和食のイメージだが、多様な技法を取り入れている「めぐるの匙」は、フレンチやイタリアンにも対応する進取性も兼ね備えている。写真は「銀春慶塗り」。

最後に、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」のアテンドの方が初めて「めぐるの匙」を使ったときに感じたという、印象的なひと言を挙げておきます。

漆器のお椀に、めぐるの匙が当たるときの音がとても心地よく、やさしく食べ物を集めようという気持ちになります。

4月15日から常設展示がスタート!

会場 ダイアログ・ダイバーシティミュージアム 「対話の森」
住所 東京都港区海岸1丁目10-45 アトレ竹芝シアター棟1階
電話 03-6231-1634
時間 11:00~21:00
定休 年中無休
入館 無料
https://taiwanomori.dialogue.or.jp/#access

※商品の詳細・問い合わせ:漆器「めぐる」公式サイト https://meguru-urushi.com
漆器「めぐる」公式オンラインストア https://meguru.stores.jp/

「めぐるの匙」の魅力やダイアログ・イン・ザ・ダーク×会津漆器のコラボレーションの様子はこちらの動画で見ることができます。

『めぐるの匙 Story Movie -新たなスタンダードの誕生- 』https://www.youtube.com/watch?v=Fpptd0q75dU

取材・文/堀けいこ

 

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