平成30年には、全国の高速道路で200件もの逆走が発生しています。また、その約7割が65歳以上の高齢ドライバーによるものです。NEXCO東日本は、「高齢ドライバーの高速道路での逆走」を自分の家族にも起こりえることだという意識を持つことを呼びかける「家族みんなで 無くそう逆走」プロジェクトを実施しています。三世代が集う自動車教習所と考える、交通事故を家族で防ぐためにできることを株式会社京成ドライビングスクールとともに対談、提案をしています。
■「三世代免許」というタイミングを迎えたら“同じドライバー”として家族で話し合う機会を
自動車教習所は、今では免許を取得する場というだけでなく、免許を取得した後も事故のない安全運転に向けてドライバーに対し様々な研修や講習を展開しています。「教習所は今、三世代が関わる場所となっております。孫世代では運転免許を取得する場所として、親世代は企業の安全運転研修を受けていただく場所として、そして祖父母世代は免許更新前の高齢者講習を受けていただく場所となっています」(京成ドライビングスクール)
座学や目に関する検査、実車での運転などを行う高齢者講習。参加された高齢ドライバーの方たちは、自身の衰えを感じつつも、まだ運転ができることに安堵される方が多いです。しかし、視力や運転能力など講習でクリアできたから「よかった」で終わらせてはいけないのも事実。「加齢に伴う身体機能の低下が運転に影響を及ぼす可能性があることをご理解いただき、今後の安全運転に役立てていただきたいです」(京成ドライビングスクール)
■孫世代が祖父母世代の身体の変化を体験する「高齢者疑似体験」イベントも実施
若いドライバーたちが、実際に重りを背負って“体の動きが鈍くなった状態“を作り出し、高齢ドライバーの身体的状況を疑似的に体験してもらいました。
「私自身もキットをつけて高齢者の身体の変化を疑似体験したのですが、ただ歩くだけでも体に結構な負担があり、思った以上に変化があるものなのだなと思いました。疑似体験では、ビフォーアフターがわかりやすいのですが、これが徐々に訪れると思うと、自分の体の変化を自覚できるかどうかは難しい気がしました。運転についてはなおさらだと思います」(NEXCO東日本)
現役ドライバーの祖父母をもつ家族にとっては、体の様子や運転について客観的に見て声を掛けるなど、家族で話をすることも大切だと言えます。「若い人が体験して、高齢者の大変さを認識することは非常に価値があることだと思っております。老いは長い年月をかけてゆっくりとやってくるものですし、1日の講習で劇的に改善することはやはり難しいと思います。そのため、日々衰えの可能性を認識していただくことが大事だと思います」(京成ドライビングスクール)
NEXCO東日本が独自に行った調査で「孫が運転免許を取得した時の気持ち」を高齢ドライバーに聞いたところ、孫の成長を喜んだり、運転を心配したりといった回答が多い中、「孫が運転免許を取れるほど自分も年を取ったので、車を安全に運転することを考えたい」という回答もありました。また、別の質問では運転を心配する家族の言葉に対し、祖父母世代はポジティブに捉えている人が多いという結果も出ました。
「高齢ドライバーの方は豊富な経験を活かして運転する事が重要ですが、良い習慣が周囲の手本となるように常に自分の運転を見つめ直していただきたいと思います。そうなった時にこそ、三世代で助け合えるといいと思います」(京成ドライビングスクール)
■運転ここに注目リスト
高齢ドライバーが運転するにあたり、同乗者の方に見ていただきたい点をまとめた「運転ここに注目リスト」は下記になります。運転操作が衰えていないか? 運転時の判断力が適切か? などを家族みんなで確認してみることをお勧めします。
■スマヌ法
続いて、高齢者の運転に必要な能力をチェックする「スマヌ法」をご紹介します。背中にカタカナの「ス」「マ」「ヌ」の3文字のどれかを指で書き、どの文字が、書かれたのか答える簡単なものです。皮膚感覚をキャッチする脳力の衰えをチェックできますよ。
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時間の経過とともに起こる加齢は、誰しもが避けて通ることのできないものです。高速道路の逆走を防ぐために、これから免許を取ろうとしている若者や高齢ドライバーも、お互いに状況を理解し、意識を高め安全運転を心掛けることが大切ですね。