文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/海外プチ移住ライター)
奇跡的に下宿がみつかりほっとひと安心。いよいよ学生生活のスタートです。期間限定の貴重なキャンパスライフ。色んな経験を楽しもう! と、どきどきワクワクしながら挑んだのですが……。
韓国の語学学校「語学堂」とは?
韓国には何度も訪れているけれど、韓国語は全く分からず看板のハングルも解読不能。いつか学んでみたいと思っていたのですが、いよいよその時がやってきました。教育熱心なお国柄の韓国には外国人向けの語学学校も多く、様々な選択肢があります。せっかくなら一からしっかり習いたいと思い、大学に付属する語学堂へ通うことにしました。ソウルにたくさんある語学堂のなかから、日程と立地、1学期(10週間)から申し込み可能などの条件が合った学校を選択。そこは歴史ある名門大学に付属する語学堂のようでしたが、よく知らなかった私は後に様々な想定外のことに驚かされることになるのでした。
韓国ブームに圧倒されたオリエンテーション
授業が始まる数日前に行われた言語別のオリエンテーション。日本語の会場だった大きな講堂は椅子が足りなくなるほどの人で埋め尽くされていました。ほとんどは若い女性で、おそらく私が最年長。日本人だけでも数百人はいたと思いますが、隣の中国語会場はさらに巨大で、そのほかに英語の会場も。なんと同語学堂だけで2千人もの学生がいるというからびっくり。こんなに大勢の人たちが、世界中からはるばる韓国語を学びにやってくるなんて!
その場の雰囲気にすっかり圧倒され、理解できない韓国語交じりの説明を聞きながらどんどん心細くなっていきました。なんだかすごい所に来ちゃったみたい。果たしてここでやっていけるのだろうか……。
ゼロからの韓国語学習に悪戦苦闘
オリエンテーションで洗礼を受け、よく眠れないまま迎えた授業初日。クラスは1級から6級まであり、韓国語初心者の私はもちろん1級からのスタート。12人のクラスメイトのうち半分くらいは中国語圏からで、もう半分はアジア諸国と欧州からというインターナショナルなメンバーです。1級とはいえ大半が自国で韓国語を学んだ経験があり、まったくのゼロでやってきたのは私くらい。
授業は韓国語で進められます。初日はカナダラ(韓国語のあいうえお)から始まりほっとしたのもつかの間、翌日からは急にスピードアップ。当校はカリキュラムがきっちりと決まっていて、文法をしっかり教えてくれることに定評があるようです。あまり使っていなかった頭と気力と体力をフル稼働させても、どんどん進んでいく授業についていくのは難しく、ぐったりして帰宅する毎日。
それでもなんとか続けられたのは担任の先生のおかげです。今学期を最後に退職されるというベテランのチョン先生の授業はとても分かりやすく、素晴らしいお人柄でいつも思いやりをもって接してくださいました。先生の最後の生徒になれたのは、本当に幸運だったと思います。
もっとキャンパスライフを楽しみたい!
いっぱいいっぱいで余裕のない日々を過ごしながら、私は焦っていました。貴重な学生生活なのに、このままでは楽しめないまま終わってしまう。もっと楽しみたい、今しかできないことをしよう! と、広大なキャンパスを積極的に探検することに。
ユニークなクラスメイトとの交流
この道30年のベテラン先生に「これまでで一番大変なクラス」と言わしめた我がクラス。クラスメイトの大半は二十歳そこそこの学生さんで、私からみたら自分の子みたいな年代です。授業に遅れてくるのは当たり前。授業中も携帯電話でチャットをしたりK-POPの動画を見たり。先生に何度注意されてもケロッとしていて、なんて自由なんだろうと感心したものです。
なんともユニークでまとまりがあるとはいえないクラスでしたが、一緒にサムギョプサルを食べに行ったり、モンゴル出身の子を誘ってモンゴルタウンに出かけたり、忘れられない面白い思い出ができました。
そして迎えた最終日。リタイアされる先生を送る会をみんなで準備したのですが、これまでにない団結力をみせ大成功。思わず目頭が熱くなりました。
語学堂に1学期通った成果といえば、この間まで何かの暗号にしか見えなかったハングルが(数秒かかるけれども)解読できるようになり、話していることがなんとなく理解できる気がする時があるくらいなのですが、私にとってはそれだけでも大きな変化です。
韓国生活で一番長い時間を過ごしたあの教室に、時々無性に戻りたくなります。あんなに大変だったのに、終わってみると、なんて贅沢なかけがえのない時間だったことかとしみじみ感じています。
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文・写真/坪井由美子
ライター&リポーター。ドイツ在住10数年を経て、世界各地でプチ移住しながら現地のライフスタイルや文化、グルメについて様々なメディアで発信中。著書『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。