暮らしを豊かに、私らしく

文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/海外プチ移住ライター)

マルタで3か月間のプチ移住。移住準備に始まり、語学学校の様子やグルメについてお伝えしてきましたが、最後にお気に入りのスポットを紹介したいと思います。日本ではまだそれほど知られていませんが、マルタは3つの世界遺産をはじめ、見どころが盛りだくさん。学校の課外活動のほか一人でもあちこちへ出かけ、すみずみまで探検しました。

観光パスで25か所の観光名所を制覇!

世界遺産の巨石神殿群のなかでも保存状態の良いイムナイドラ神殿。海を望む絶景ポイント。

マルタは今回が初めてだったので、滞在中にできるだけ観光や取材をしようと考えました。そこでまず入手したのが「ヘリテージマルタマルチサイトパス(Heritage Malta Multisite Pass)」。このパスでマルタの観光名所約25か所を見学することができます。有効期間は30日間。毎日のようにバスに乗ってあちこちへ出かけ、1か月かけて全スポットをまわりました。

マルタ郷土料理のブラジオリ(肉団子の肉巻き)。スコルバ神殿を訪れた時にみつけたローカル食堂「Farmers bar」にて。

マルタの歴史や騎士団について知ることができる博物館や世界遺産の巨石神殿群のほか、パスが無ければ絶対に行かなかったであろうマニアックな博物館や田舎の誰もいない遺跡まで。思いがけず雰囲気の良いローカル食堂を発見するなど、このパスのおかげでマルタを色んな角度からより深く知ることができました。

静寂の古都イムディーナ

どこを撮っても絵になる古都イムディーナ。路地に迷いこんでみるのも楽しい。

城壁に囲まれた古都イムディーナと隣接のラバトは、何度も通ったお気に入りの町。中世の雰囲気が残るはちみつ色の町はまるで映画のセットのようで、実際に映画やドラマの撮影にもよく使われています。かつて首都として栄えた町ですが、ヴァレッタに首都が移ってからは住む人が少なくなり「サイレントシティ」と呼ばれるようになったとか。日中は観光客で賑わっていますが、路地に入った途端に音が消えたかのような静寂に包まれます。

マルタで知らぬ人はいないパスティッチの名店「Is-Serkin」は地元の人たちの社交場でもある。

イムディーナにはガイドブックに必ず載っているチョコレートケーキが人気の有名カフェがあるのですが、私の行きつけは城壁の外にある庶民的なパスティッツェリア「Is-Serkin」。マルタで1、2を争うおいしいパスティッチ(マルタ名物のパイ)に加えて、やかんから注がれるコーヒーや地元の人たちが集うローカルな雰囲気など全てがぐっとくる、愛してやまないお店です。

マルタにも青の洞窟があった!?

青の洞門めぐりボートは、強風の日は運休の可能性が高い。光の入る午前中がベスト。

「青の洞窟」といえばイタリアのカプリ島が有名ですが、マルタにも負けず劣らず美しい「青の洞門(ブルーグロット)」があります。ボート乗り場から小舟に乗って洞門めぐり。波で浸食されてできた洞窟の中に入ると、光に反射した海水がエメラルドグリーンや深いブルーに輝いてきらきら。神秘的な青の世界に思わず歓声があがりました。

青の洞門がある東海岸は夕日が美しい。海沿いのカフェも人気。

じつはここへは語学学校のバスツアーで行くつもりだったのですが、定員オーバーで申し込めず。同じ状況のクラスメイトと2人で路線バスで向かい、現地でみんなと落ち合うことにしました。しかし当日待ち合わせのバス停に1時間以上も遅れてやってきた彼(この日は夏時間に変わる日だとあれほど言ったのに!)。私たちが現地に到着した時にはすでにバスツアー一行は去った後。みんなで食べるために早起きして作ったおにぎりを喜々としてたいらげる彼の屈託のなさと、目の前に広がる海のあまりの美しさに怒る気もなくなってしまいました。マルタで出会ったラテン系クラスメイトからは、色々と大切なことを学んだ気がします。

ゴゾ島で観光も自然も満喫

盛大なカーニバルが行われるマルタのなかでもゴゾ島のものは有名。

マルタ島の北に浮かぶゴゾ島へは2回訪れました。最初はカーニバルの時期に1泊で。急に思い立って見つけたホテルは思いのほか素敵で海が見えました。

オフシーズンだからか手頃な料金だったゴゾの4つ星ホテル「Cornucopia Hotel」。

この島には要塞チタデルや世界遺産の遺跡など見どころが豊富ですが、やはり一番の魅力は自然。マルタも随分とのどかな島ですが、ゴゾはさらに牧歌的で時間の流れがゆっくり感じられます。地元で人気のパン屋さんで焼き立てのピザをほおばったり、直売所で名産のはちみつを買ったり、夕日が綺麗な海岸でビールを飲んだり、のんびりと贅沢な時間を過ごしました。

語学学校のバスツアーで再びゴゾへ。島を一望できる要塞チタデルにて。

ゴゾ島がすっかり気に入って、後日行われた語学学校の日帰りバスツアーにも参加。”奇跡の教会”と呼ばれるタ・ピーヌ教会や、赤い砂が特徴のビーチ、ラムラ湾を望む絶景ポイントなど、個人で周るにはアクセスが少し不便な場所に行けたのも良かったですが、何よりクラスメイトたちと一緒に過ごした時間が楽しく、忘れられない思い出となりました。

世界で一番透明な海!? コミノ島

自然の色だというのが信じられないこの青さ、伝わるでしょうか!?

「コミノの海はすごい!」とみんなが絶賛するので一度は訪れたかったコミノ島。ドイツから遊びに来た友人と一緒に行ってきました。噂のブルーラグーンとご対面した私達は、あまりの美しさにしばし呆然。ここは地中海の中でも透明度の高さが抜群で、船が宙に浮かんで見えるほど。これまでに見たどんな美しい海とも違う、鮮やかな青の世界に圧倒されました。

コミノの魅力は海だけではありません。島をぐるっと一周し、断崖絶壁や季節の花々など手つかずの自然を満喫して癒されました。

自然とはなんて神秘的なのでしょう!

* * *

マルタの魅力はまだまだ尽きませんが、今回で連載はいったん終了となります。

じつはただいま韓国で暮らしておりまして……次はソウルからお伝えする予定ですので、引き続きお付き合いくださったら嬉しいです!

マルタ観光局 https://www.mtajapan.com/

【50代でプチ移住&大人留学】
第1回 移住の準備 https://serai.jp/kajin/1130064
第2回 語学学校の様子 https://serai.jp/kajin/1140334
第3回 マルタのグルメ・自炊編 https://serai.jp/kajin/1147458
第4回 マルタのグルメ・外食編 https://serai.jp/kajin/1148270

文・写真/坪井由美子
ライター&リポーター。ドイツ在住10数年を経て、世界各地でプチ移住しながら現地のライフスタイルや文化、グルメについて様々なメディアで発信中。著書『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

 

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