文・写真/福成海央(海外書き人クラブ/オランダ在住ライター)
花の国 オランダのガーデニングセンターとは
オランダといえばチューリップ。でもそれだけではありません。実はオランダには「世界最大の花市場」と言われるアールスメール花市場があり、毎日世界中から花が集まり、また世界中へ出荷されています。
そういう事情もあってか、スーパーでも抱えるほどの花束が10ユーロ(約1400円)程度と手頃な値段で買うことができます。ちょっとした手土産にも花がよく使われ、ショッピングモールや町中にも鮮やかな鉢植えが並び、日常の身近なところにいつも花があります。そんな「花の国」の園芸屋さんでは今の時期、どのようなものが売られているのでしょうか。「オランダの春のガーデニングセンター」をみなさんと一緒に回ってみたいと思います。
ちなみにオランダはヨーロッパにある、九州とほぼ同面積の小さな国。緯度は北海道より高く、あまり雪は降りませんが4月の平均気温は10~12度くらいと、日本よりも少し肌寒い気候です。
春を告げる4月下旬のガーデニングセンター
今回は私の家から車で10分ほどのガーデニングセンターに行ってみました。入口には季節に合わせた装飾品が展示され、いつ来てもわくわくした気持ちにさせてくれます。
さっそく花コーナーを見てみましょう。釣り下がる花の形が美しいフクシアがたくさんありました。同じフクシアでも小ぶりなハンギングから、すっと直立して仕立てられた鉢植えなど、バリエーション豊かに揃います。
彩りが鮮やかな花々は、アパートのベランダにもよく見かけます。
こういったベランダの柵をまたぐ形のプランターがあり、室内からだけではなく外を歩く人々も花を楽しむことができます。
細長く片面が平らな容器に植えられている花がありました。これは壁面や玄関横に飾ります。プラスチックの太い筒のようなものもあれば、袋を吊り下げるものも。
野菜の苗にはまだ寒い
続いて、果物や野菜も見てみましょう。
ですがこの時期はまだ寒いからか、品ぞろえは少なめ。来月にはトマトやナス、パプリカなどの夏野菜、様々なハーブの苗などが多く並ぶことでしょう。少しだけあった苗はコールラビ、芽キャベツ、カリフラワーなど、オランダでよく食べられているアブラナ科の野菜たちでした。
一方、種子は多くの種類があり、育苗用の蓋つきプランターも様々なサイズが勢ぞろいでした。中でもマメ科の種類が豊富で驚きました。
果樹コーナーには、リンゴやプラム、イチジクやブドウの木がありました。バラ科の果樹の花は、どこか日本の春を思い出す面影があって心が和みます。ラズベリーやブラックベリーなどのベリー類も人気があり、毎年多くの苗木が並んでいます。
オランダ流・虫のためのガーデニング
さて、こんな一角がありました。「蝶や蜂のためのコーナー」です。蜜を多く出す花や良い香りの花など、蝶や蜂が好む種類が集められています。オランダ人は花粉を媒介する虫たちを大切にしていて、こういった虫が集まる庭作りも好まれています。
虫のためといえば「インセクトホテル」というものがあります。見た目は鳥の巣箱のようですが、虫が安全に冬を越すためのもの。中には木片や松ぼっくり、竹筒など、虫の生態に合わせて好まれる素材が詰められ、その隙間に虫たちが入りこみます。表には金網がついていることもあり、外敵に襲われることなく過ごせる、まさに「虫たちのお宿」。こちらは家庭用のサイズですが、公園や森には1m以上の大きなものが置いてあることもあります。
また、殺虫剤を使わずに虫を遠ざける工夫も。夏のヨーロッパではオランダに限らず、町中の植え込みや民家の窓際に多くのゼラニウムを見かけます。これはゼラニウムに蚊やハエなどに対する虫除け効果があるため。このガーデニングセンターにはゼラニウムだけが置かれた専用の広大な温室があり、入口に案内板が置かれるほどでした。生活に欠かせない花なんですね。
植物だけではない、多彩な品ぞろえ
この店舗は面積が1万2千平方メートル以上と大変広く、店員は店内の移動に自転車を利用するほどです。今回はご紹介しきれませんでしたが、屋内用の観葉植物や造花コーナー、植木鉢コーナー、そしてもちろん肥料やガーデニング用品も数多く取り揃えられています。また屋外用のダイニングセットやバーベキュー用品など、庭やベランダを第2のリビングとして楽しむ商品売り場も充実していました。
オランダはこれから気温がぐんぐん上がって日照時間も伸びます。人々も植物も短い夏を謳歌する季節の始まりです。もう少しすると店内には野菜の苗やハーブ類が増え、花の苗もさらに種類が増えてくるでしょう。また機会がありましたら、ぜひ他の季節の様子もご紹介できたらと思います。
文・写真/福成海央(オランダ在住ライター)
2016年よりオランダ在住。元・科学館勤務のミュージアム好きで、オランダ国内を中心にヨーロッパで訪れたミュージアム、体験施設は100ヵ所以上。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。