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文・写真/倉田直子(海外書き人クラブ/オランダ在住ライター)

世界で最も人気のある画家のひとりであるフェルメール。実は17世紀にオランダ南部の街デルフトで生まれ育ち、そのまま地元で活動したオランダ人画家なのです。そんなフェルメールの作品を28作も集めた展覧会が、アムステルダム国立美術館(https://www.rijksmuseum.nl/)で2023年2月10日から6月4日までの予定でスタートしました。フェルメールの作品は約35点しか現存せず(諸説あり)、世界各地の美術館に収蔵されている作品のうち28点が一堂に会するとあり、オランダでも「一生に一度の事件」と言われています。けれどそんな大人気画家の大展覧会だけあり、世界中から絶大な注目を浴びてしまいました。その影響力の大きさが引き起こした騒動を今回はご紹介したいと思います。

チケットが無い!

アムステルダム国立美術館とフェルメール展の看板

このフェルメール展の入場券は、2022年9月に約45万枚の予定で販売を開始しました。オランダメディアの報道によると、展覧会の開場2日前である2023年2月8日頃までは、まだ半分以上チケットが売れ残っていたそうです。けれど初日が近づくとオランダ国内のニュース番組などでもこの展覧会のことが多く報道されました。それにより、それまで気づいていなかった人々も改めてこの世紀のイベントを認知し、直前になってチケット購入に殺到したのです。そのため、開始直後の2月12日には約45万枚のチケットがソールドアウト。美術館がソーシャルネットワークサービスで完売を宣言しました。

チケット販売サイトにつながらない!

館内のフェルメール展特設エリアへの道筋。

けれどチケットを購入できなかった人々からのラブコールが鳴りやまず、美術館は「3月6日に追加チケットの販売を開始します」と告知。実はアムステルダム国立美術館は、通常の開館時間は午後5時までなのですが、このフェルメール展のみは一部の日にちを「午後10時まで」に延長していました。そこを「午後11時まで」に再延長して、少ないながらも追加チケットの販売に踏み切ったのです。

フェルメールの作品を鑑賞する人々。

けれど、そんなプラチナチケットを求め世界中から販売窓口であるアムステルダム国立美術館のサイトにアクセスが集中したため、システムはあえなくダウン。数日間、つながったりつながらなかったりという不安定な状況が続きました。そして3月11日には、公式に「完売」が発表されています。この一連の騒動は、オランダの報道機関なども詳細にリポートするほど注目を浴びていました。そしてそれ以降は、一切チケットの再販売はなされていません。

「真珠の耳飾りの少女」がいない!

フェルメール展に展示された「真珠の耳飾りの少女」

ちなみにフェルメールの作品の中でも、一番人気はなんといっても「真珠の耳飾りの少女」でしょう。フェルメール展の会場の中でも、この作品の周囲は一際賑わっています。

マウリッツハイス美術館の外観。
通常のマウリッツハイス美術館での展示(2018年撮影)

この「真珠の耳飾りの少女」は通常は、オランダ第二の都市デンハーグにあるマウリッツハイス美術館(https://www.mauritshuis.nl/)に展示されています。

「4月1日に戻ります」という看板が。

この「真珠の耳飾りの少女」は、実家であるマウリッツハイス美術館でも超目玉作品。この美術館の人気を支える作品のひとつであると言っても過言ではありません。そのためなのかは不明ですが、アムステルダム国立美術館でのフェルメール展は6月まで実施されるにも関わらず、この「真珠の耳飾りの少女」のみは3月末日に返却されるという約束で貸し出されたのです。

2か月弱の短期間とはいえ、看板娘の不在はマウリッツハイス美術館にとって痛手。けれど、美術館はその不在を逆手に取った企画を実施して話題を呼びました。

世界中から独自の「真珠の耳飾りの少女」が集合

「My Girl with a Pearl」の説明パネルと作品。 (c)Mauritshuis
「My Girl with a Pearl」の作品たち。 (c)Mauritshuis

それは、「My Girl with a Pearl」(https://www.mauritshuis.nl/en/what-s-on/exhibitions/installation-my-girl-with-a-pearl/)という企画展。世界中から「真珠の耳飾りの少女」をフィーチャーした作品を募集したのです。この企画は世界中のアーティストやフェルメール愛好家の間で話題を呼び、3,482作品もの応募があったのだそう。この数字からも、「真珠の耳飾りの少女」およびフェルメールが世界の人々からどれだけ愛されているか伝わります。

本来の展示場所にデジタルフレームが。

応募作の一部は実際に出力された状態で展示されていますが、その他にもデジタルフレームの画面が次々と個性的な作品を映し出します。点描画の少女だったり動物を「真珠の耳飾りの少女」に見立てていたり、その発想に驚かされるばかりです。会場以外でも、「My Girl with a Pearl」専用インスタグラム・アカウント(https://www.instagram.com/mygirlwithapearl/)で作品の一部を見ることができます。

「真珠の耳飾りの少女」の帰還

「My Girl with a Pearl」展を鑑賞する人々。

そして予定通り「真珠の耳飾りの少女」はマウリッツハイス美術館に返却され、4月1日からふたたび古巣で展示されるようになりました。

あとは6月のフェルメール展最終日まで無事に展示が行われ、すべての作品が元の収蔵美術館に安全に戻れるよう祈りたいと思います。

「アムステルダム国立美術館」(Rijksmuseum)
住所: Museumstraat 1, 1071 XX Amsterdam, The Netherlands
電話番号:+31 (0) 20 674 7000
公式ホームページ https://www.rijksmuseum.nl

「マウリッツハイス美術館」(Mauritshuis)
住所: Plein 29, 2511 CS Den Haag, The Netherlands
電話番号:+31 (0) 70 302 3456
公式ホームページ https://www.mauritshuis.nl/

文・写真/倉田直子(海外書き人クラブ/オランダ在住ライター)
北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。「海外書き人クラブ」会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

 

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