見た目もスッキリして、掃除もしやすいIHヒーター。直火を使わないので安全性も高く、最近は炊飯などのオートメニューまであってとても便利です。上手に使いこなしている人がいる一方、見た目では火加減がわかりにくい、強火を使った料理ができない、ガスコンロの時はおいしく作れた料理がうまく作れないなど、悩みを抱えている人も多くいます。
20年以上にわたってIHヒーターを使用し、商品開発にも携わってきた料理家の脇雅世さんは「IHとガスでは料理のレシピが変わります」と言います。ガスコンロとIHヒーターではそもそも加熱の仕組みが違うからです。その仕組みを知らずにガスコンロと同じように調理してもおいしくできないのは当たり前なのです。
今回は、脇雅世さんの著書でIHヒーターのための料理本『IHクッキング・レシピ』から、みんなが大好きなカレーと、蒸し器を使わなくてもできる茶碗蒸しのレシピをご紹介します。
文/脇雅世
ポークスパイスカレー
安定した弱火が保てるIHでは煮物が上手に作れます。長時間の煮物はタイマー機能を使うと便利。
【材料】(作りやすい分量)
豚肩ロース 2~3枚(400g)
aクミン、ターメリック* 各小さじ1
a塩 小さじ1/2
a生姜(すりおろし) 小さじ2
玉ねぎ 1個(200g)
ホールトマト(缶) 100g
油 大さじ2
塩 小さじ1
生姜、にんにく(共にすりおろし) 各1かけ分
bコリアンダー、ターメリック、クミン 各小さじ2
ローリエ 1枚
ガラムマサラ 小さじ1
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ご飯 適量
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直径23cm浅型両手鍋(容量2.5L)
【作り方】
下ごしらえ
1.豚肩ロースはやや大きめのひと口大に切り、ボウルなどに移して、aをすり込みなじませる。
2.玉ねぎは薄切り、缶詰のホールトマトはフォークなどでつぶしておく。
IH調理(玉ねぎを色づくまで炒め、鍋に具材を順次加えて煮込む)
3.鍋に油と玉ねぎ、塩小さじ1を入れ、よく混ぜながら中火強で茶色くなるまで炒める。この玉ねぎをしっかり炒めるのが味のポイント。おいしそうに色濃く仕上がる。
4.中火弱にして生姜とにんにく、水50mLを加え、水分が飛ぶまでよく煮る。
5.生姜とにんにくの香りが出たらホールトマトを加え、さらに水分が飛ぶまでしっかりと煮る。
6.bのスパイス類を加え、弱火でなじむまで炒めたら1の肉を加え、肉の周りが白っぽくなるまで中火で炒める。
7.ローリエと水200mLを加え、蓋をして中火弱で約30分煮る(IHタイマー機能を使う)。
8.火を止め仕上げにガラムマサラを加える。ご飯と一緒に盛る。
IHは煮ている間の水分蒸発が少ないので、水分は控えめでOK。市販のルーでカレーを作る場合は、表示より2割程度水分量を控えるとちょうどいい分量になります。
冷たくなったカレーを温め直す時は、まずとろ火にかけ、少しゆるんできたら火を強め(中火)、シリコンべらで底をこするように混ぜると焦げつきません。
茶碗蒸し
火力調整が思いのままのIHは蒸し料理にも威力発揮。
【材料】(2人分)
卵 2個
だし 250mL
aみりん 小さじ1/2
a塩 小さじ1/2
a醤油 少々
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〈あん〉
椎茸 1枚
鶏ささみ 50g
ゆり根 1/5株(30g)
海老 2尾(30g)
銀杏 4~5個
三つ葉 少々
bだし 150mL
b塩 小さじ1/3
b酒 小さじ1
片栗粉 小さじ2
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直径23cm浅型両手鍋(容量2.5L)
直径15cm片手鍋(容量1.0L)
【作り方】
下ごしらえ(あんの具を用意する)
1.椎茸は1cmの角切り、鶏ささみは筋を取り1cm角に切る。ゆり根は1枚ずつはがしておく。海老は背わたと殻を取り除き1cm幅に切る。三つ葉は1cm長さに切る。銀杏は殻と薄皮をむいて半分に切る。銀杏は軽く割ってから電子レンジに40秒かけると殻を外しやすい。
茶碗蒸しの生地を用意する
2.小鍋にだしを軽く温め、aを加え、塩を溶かし混ぜる。ボウルに卵を割りほぐし、だしを温かいまま、少しずつ加えて混ぜる(だしは80℃以下であれば問題ない)。茶漉しで漉しながら器に入れる。
IH調理(茶碗蒸しを湯せんで蒸し、あんを仕上げる)
3.鍋にペーパータオルを一枚敷いて2の器を入れ、湯を4~5cm高さになるように入れる。
布巾を挟んで蓋をし、沸騰したら1~2分中火にかけ、その後蓋を少しずらして弱火で11~12分蒸す。火力が強すぎると器が躍り、すが入って表面や内部に細かい穴が開くので注意。
4.小鍋にbのだしを入れ火にかけ、煮立ったらbの調味料を入れ、1の椎茸、鶏ささみ、ゆり根、海老を加え、3~ 4分蓋をして中火弱で煮る。
5.片栗粉を同量の水で溶いて4に加え、とろみをつける。最後に三つ葉と銀杏を加え、3の茶碗蒸しの上にかける。
茶碗蒸しの表面が艶やかに仕上がらなくても、具だくさんあんをかけることで目立たなくなり、ご馳走感も演出できるレシピ。茶碗蒸し用の筒形の器でなく、写真のような平鉢などでも構いません。
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脇 雅世(わき・まさよ)
料理家。東京生まれ。1977年に渡仏し、ル・コルドン・ブルーやマキシム・ド・パリなどで学ぶ。1981年より10年間、24時間耐久カー・レース「ル・マン」にマツダ・レーシングチームの料理長として参加。1984年に帰国、服部栄養専門学校国際部ディレクターに。1991年より「脇雅世料理教室」を主宰。雑誌やテレビなどのメディアで和洋中、幅広いレシピを紹介する一方、IHクッキングヒーターや低温調理器の使いこなしを分かりやすく提案し、家庭料理にも調理科学に基づく考え方の必要性を提唱する。そのバックボーンからIH用調理器具を貝印株式会社と共同開発し、2008年よりo.e.c.シリーズを展開している。2014年、フランス農事功労章を受章。著書多数。近著に『いちばん親切でおいしい 低温調理器レシピ』(世界文化社)がある。
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『IHクッキング・レシピ』(脇雅世 著)
世界文化社