暮らしを豊かに、私らしく

水引を用いて、日本文化や四季を表現する水引作家の田中杏奈さん。毎月、季節を彩る美しい水引作品をご紹介するとともに、日本文化や習わし、それらが古より引き継がれてきた背景にある日本人の心について想いを語っていただきます。記事の最後には、水引にまつわる豆知識も掲載しているので、これを機に水引の制作に親しんでいただけたら嬉しいです。

【日々を紡ぐ、季節の水引】
第1回 登り鯉で祝う端午の節句

文・写真 田中杏奈

あと一か月ほどが過ぎれば、季節は穀雨から立夏へ向かう頃。

春の雨を糧に、日に日に濃く深くなる新緑を眺め思い出すのは、故郷の山々です。兵庫県淡路島。実家の玄関を出れば、南方一面に海が見え、北方には山が広がる。そんな、大きな自然に囲まれ生まれ育った私は、5月初旬にかけて山々を覆うやわらかく初々しい、爽やかな青葉の色が大好きでした。

故郷である淡路島の、実家の前から見える風景

小学生の頃、朝起きて、身支度を整え玄関を出て山へ目を向けた時に、急にコントラストが深くなった緑を発見し、とても驚いたことを今でも覚えています。陽が高くなり影が立つ、昨日まで聞こえなかった鳥のさえずりが聞こえてくる。時を置かず変わってゆく、この時期の自然の変化に、無性に気持ちが高揚するのは今も変わりません。

立夏の登り鯉

もう間もなく、暦上は初夏へと向かい、生命が輝く季節へ。青く澄んだ鮮やかな空が広がり、植物も動物も活気に溢れます。そんな生き生きとした姿をあらわすような、登り鯉を水引で結んでみました。

二十四節気とその季節の水引結びを掲載した著書には、「立夏」の項を、以下のように書かせていただきました。

「新緑が眩しい5月、夏の始まりである立夏を迎えます。初夏の空を優雅に泳ぐ鯉のぼりは、江戸時代に庶民の文化として始まりました。黄河を登り切った魚が龍になるという、中国の伝説に由来しているといわれています。(『水引で結ぶ二十四節気の飾り』 p38より)」

端午の節句

五月五日の端午の節句には、平安時代から、軒に菖蒲やよもぎを挿し、粽(ちまき)を食べ、邪気を祓う習わしがあったとのこと。その後、鎧や兜を飾り、鯉幟を立てて、粽や柏餅を食べて、男の子の成長や出世を願う行事になったのは江戸時代になってから広まった風習です。

家の中の数か所に神棚がある、築100年以上の日本家屋である私の実家では、祖母が継いでいた習わしを今では母が引き継ぎ、5月5日には、それぞれの神棚にお燈明をいくつも灯し、御神酒に菖蒲をさして祀っています(なお、大晦日や元日には榊を、3月3日の上巳の節句には桃の花を御神酒にさすそうです)。幼い頃は、祖母やご近所さんみんなが、山から採ってきた笹で粽を作って、互いにお裾分けしていました。当時は、我が家も例に漏れず毎年たくさんの粽が集まっていました。私はそれが大好物で、一日中お腹一杯になるまで食べていたことを思い出します。ただ、今は粽を手作りする人が減り、お裾分けし合う家の数もめっきり少なくなってしまったと母に聞きました。

ちなみに、笹(竹)は、高く長く伸び、力強く成長する生命の象徴とされていますし、柏餅の柏葉は、冬でも落葉せず、春の新芽が伸びる頃に初めて古い葉を落とすことから、子孫繁栄の意味があるといわれています。

鯉の結び

今回の鯉の結び、主役の結びは「松結び」。水引細工の結びでは、少し手順が多いですがよく見るメジャーな結びで、松の樹形をそのままデフォルメしたような形です。

松結びから左右に伸びる先端をアレンジし、口の部分と、尾の部分の形を作っています。ヒレは、水引を短くカットして並べた上に、接着し、金色の水引で華やかさを加えてみました。鱗を表現しているのは、「花結び」や「かけ結び」と呼ばれる結びで、その結びを鯉の体の大きさに合わせて、幾重にも重ねています。

滝登りを思わせる数筋のラインには、軽くしごいた水引をそのまま使用し、繊細で美しい曲線を目指しました。

今回の主役の結び「松結び」

穀雨と立夏の水引選び

今や水引には数百種類の色があり、毎シーズン、各社から新色がリリースされています。

どの色も、基本はWEBで購入できるのですが、水引を始める方がまず悩むのは、膨大にある色の中から、どの色を選び購入するのか。今回は、数ある水引の中から今の季節に合う色合わせを選んでみました。

穀雨(4/19~)の色選び

春の雨や、芽吹く若葉、薫る春風をイメージして、優しく淡い春の色と、初夏へ向かう新鮮な色を合わせました。

·絹巻水引  白
·花水引 紫陽花色
·花水引 若菜色
·花水引 桜鼠

立夏(5/5~)の色選び

濃くなる緑や、陽が高く強くなる日差しの中の夏木立をイメージして、初夏らしい爽やかではっきりした色を合わせました。

·絹巻水引 うぐいす
·絹巻水引 白
·純銀水引 極
·花水引 天鵞絨(ビロード)

巡る四季の色に想いを馳せながら、豊かな結びのひと時を愉しまれてくださいね。

記事に出てきた情報の詳細はこちらよりご覧ください。

『水引で結ぶ二十四節気の飾り』(田中杏奈 著)
日東書院本社

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■「鯉の結び」(本記事の結びは、原型のレシピから少しアレンジを加えています)

■水引の購入先
有高扇山堂 https://aritaka.jp/ 「絹巻水引  白」
SUN OIKE http://www.sun-oike.co.jp/ 
「花水引 紫陽花色」「花水引 若苗色」「花水引 桜鼠」「絹巻水引 天鵞絨」
水引素材.com  https://mizuhikisozai.com/ 「絹巻水引 うぐいす」「純銀水引 極」

田中 杏奈(たなか・あんな)
水引作家、mizuhiki hare designer、水引教室「晴れ」主宰。幼少期から日本の伝統文化に興味を抱く。広告代理店営業職に従事する中、産休中の2016年に文房具店で水引に出会い、作品制作をスタート。独学で学びながら作品を発表。広告代理店退職後はフリーランスとして、書籍の出版、ワークショップイベントの開催、水引教室の主宰など幅広く活動。
HP:https://www.mizuhikihare.com/
Instagram:https://www.instagram.com/__harenohi/

田中杏奈さんのインタビュー記事はこちら https://serai.jp/kajin/1116135

 


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