文・石川真禧照(自動車生活探険家)

風と共に走るオープンカーは痛快。真冬の英国でホロを立てて走っていたら、信号待ちで隣りに並んだ初老のドライバーから、なんでオープンで走らないんだ、と怒られたことがあった。

このクラシックスタイルのスポーツカーを見て、2026年の最新型の英国車と解る人はどの位いるだろう。

ドアウインドも外し、フルオープンにした姿。気持ち良いが風の巻きこみは激しい。
後ろ姿もフェンダーの曲線が美しい。リアウインドの面積は広いのでホロを立てていても後方視界は意外に良かった。

英国・ウスターシャーにあるモーガンカーズは、1909年に創業した老舗自動車メーカーだ。最初は前2輪、後1輪の3輪スポーツカーを少量生産していた(今でも改良型を生産している)。その3輪スポーツが速いことで評判になり、4輪スポーツも造ってほしいという声が届くようになった。

1936年に完成したのが、初代モーガン4/4。車体の骨格となるフレームには木材を用いるという独自の製造法を採用。そのスタイリングは、現在のプラスフォーとほとんど同じだった。クラシックなスタイルのまま実に90年近くも、スポーツカーを造り続けているのは、モーガン以外には存在しない。

基本的なフロントデザインは1930年代から変わっていない。5ナンバーであることに注目。
バンパーもない簡素なデザインのリア。「PLUS FOUR」ではスペアタイヤをオプションで装着することができる。トランクなどはない。

もちろん改良も行われている。とくに2021年には、ついに木材のフレームを廃して、オールアルミの基本骨格に改めた。しかし、架装する車体は、以前からのクラシックスタイルを貫いている。安全装備や快適装備も導入されているが、それも最小限。それでも購入を希望する人は世界中で後を絶たず、日本では現在、納車は約8か月待ち、という。

なにしろウスターシャーの工場では少ない従業員が、今でも手造りで1台ずつ仕上げている。

乗員はホイールベースの中心より後ろに座るという古典的スポーツカーのポジション。
ホロの開閉は手動。大人2人で10分ほどの作業で組み上がる。乗降性もそれほど不便ではない。
ホロだけ降ろし、ドアウインドは立てたままの状態。時速100キロでも乗員は耐えられる。

経営は家族経営。創業者はヘンリー・フレデリック・スタンリー・モーガン。裕福な牧師の息子に生まれ、鉄道会社で設計技師になったのちに独立。自動車販売業を経験し、父の援助で自動車製造をはじめた。創業者の没後、息子ピーターが後を継いだ。彼も2003年にこの世を去り、現在はピーターの息子のチャールズが継ぐという典型的な英国の家族経営なのだ。

現在でも3輪スポーツカーは生産しており、6気筒と4気筒エンジンの4輪スポーツカーを合わせて3機種がモーガン車のすべてだ。

低い着座位置の座席。シートヒーターや刺繍入りヘッドレストはオプション。
クラッシュパッドに囲まれたインパネ。太めのハンドルに操作系ボタンは一切ない。エアコンやオーディオはオプション設定。
運転席の目の前には小さな液晶パネルとメーター。メーターは右が水温、左が燃料。
インパネ中央には右から8000回転まで刻まれたエンジン回転計、時計、260km/hまでのスピードメーターが並んでいる。その下のボタンスイッチはエアコンやハザード、スターター、デフロスターのスイッチが並んでいる。

モーガンのもうひとつの特徴として、エンジンがある。自製のエンジンを持たないモーガンはその時代で搭載するエンジンが異なっている。既存の他社製エンジンを購入し、使用してきたという歴史だ。

今回の車にはBMW製の直列4気筒2Lガソリンターボエンジンが載まれていた。さっそく乗りこんでみる。ホロを立てた状態だが低い座席には無理な姿勢をすることもなく座れる。ホロの室内は思ったほどに圧迫感はない。リアウインドも大きめで、後方視界も悪くない。ドアミラーの調節は、ホロを立てた状態では自分では無理。ドアウインドは後方からのスライド式で手が届かないのだ。このあたりの作りの不便さもこの手のスポーツカー乗りには楽しさなのだ。

エンジンはBMW製の直列4気筒2.0Lガソリンターボ。ボンネットはこのように片側ずつ開けるとウイング状態で固定できる。
MT車に次いで新たに加わったAT車。8速ATはエンジンと同じくBMWから供給されている。シフトノブは先代BMWのものを流用している。
細身のセンターコンソールにはシフトレバーとサイドブレーキレバーが。ストライプ柄のパネルにはやや違和感があった。

試乗した日は、真夏日で強い陽射しが照りつけていた。ホロを立てて走行していると、頭頂部が熱くなってきた。モーガンのホロは高級スポーツカーのように何層にもなっていない1枚のキャンパス地。それが熱を持ち室内に入ってきていたのだ。あわてて帽子を被り、熱中症にならずに済んだ。

ホロを開けるのは大人2名なら10分もかからない。さらにドアウインドを外せば、完全にオープンカーになる。上半身はムキ出し。試しに時速100キロを出すと、車内は風を巻きこんで助手席の上に軽い物を置いておくと飛びそうなほど。でもオープンカー好きにはたまらない開放感だ。それにしても、カタログを見ると最高速240km/h、0-100km/h加速4.8秒と記載されている。加速に関しては実測で5秒台が出たので、あながちはったりではないが、最高速は100km/h走行を体験した限りではとても信じられないのだ。ジョンブル魂なら可能なのだろか。

ヘッドライトは1930年代の初期から2021年モデルまで他車の既製品を流用していたが、初めて独自の設計を採用。ウインカー一体型で内部はルーバー模様が施されている。
ドアミラーも専用設計。ミラー面の調整はホロとドアウインドがなければ、自分でできるが、そうでないときは外の人に位置調整を頼むことになる。
フロントウインドの天地幅が短いので、長いゴムのワイパーが使えない。そこで短いワイパーを3本並べてウインドを拭う。
美しいワイヤーホイールはセンターロック式を採用。ホイール径は15インチの小径ホイール。
前席のうしろには少しだけ荷物置きの空間が設けられている。コートやバッグを収納できる。

英国で一度だけモーガンのオーナーの隣りに乗ったことがある。寒くて、小雨の降りそうな空模様だったが、もちろんオープン。郊外の村の信号で停止していたとき、彼は口にくわえていたタバコを右手で持つと、そのまま手をのばして、地面で消したのだ。低い着座位置と低いドアなので、長身の人は手をのばせば、地面に手がついてしまうのだ。「モーガンだとこれができるんだ」。彼はおちゃめな顔で教えてくれた。これもモーガンの魅力か。古き良き英国伝統のスポーツカーを現代で味わいたい人に、ぜひ一度乗ってもらいたいスポーツカーだ。

モーガン/モーガン プラス フォー オートマチック

全長×全幅×全高3830×1650×1250mm
ホイールベース2520mm
車両重量1009kg
エンジン/モーター直列4気筒ガソリンターボエンジン  1998cc 
最高出力258ps/ 4400rpm
最大トルク400Nm/1000~4300rpm
駆動形式後輪駆動
燃料消費率未発表
使用燃料/容量無鉛プレミアムガソリン/ 43L
ミッション形式電子制御8速AT
サスペンション形式前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン 
ブレーキ形式前:ディスクブレーキ 後:ディスクブレーキ 
乗員定員2名
車両価格(税込)1789万7000円
問い合わせ先03-5754-2227 モーガンカーズ・ジャパン

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2026年
7月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店

SNS

公式SNSで最新情報を配信中!