文・石川真禧照(自動車生活探険家)

Eクラスの4ドアセダンより全高は50mm低いプロポーション。車体の大きさもEクラスセダンより短く、大きさだけを比較するとマツダ6セダンに近い。ボンネットからグリルにかけての造りは、逆スラントのシャークノーズと細長いLEDデジタルヘッドライトが特徴。

上品な佇まいで、高級感があり、優雅で美しい形状を持つ車といえば2ドアクーペだ。仕事の足として乗れば、おしゃれでセンスのよい大人のビジネスマンに見える。プライベートで乗れば、大人の遊び心があり、行動範囲の広さが窺がえる。女性がクーペを運転すれば、その姿だけでハイソサエティな生活を送る日常が想像できる。高級なクーペというのはそのような雰囲気を周囲に醸し出す存在といえる。

クーペが美しいのはナナメ後方からの眺め。天井からリアウインド、トランクの終わりまでの面と線が美しい。張り出したリアフェンダーと左右とをつなぐ一体化したテールランプが美しい。サスペンションも硬めのスポーツサスペンションが組みこまれている。
ロングボンネット、ショートトランクこそ2ドアクーペがバランス良く見えるポイント。Eクラスセダンよりもホイールベースは75mm短い。Cクラスのサイズだ。

メルセデス・ベンツが2ドアのクーペをはじめて世に送り出したのは1969年のこと。当時の小型車クラスに250Cという2ドアクーペを発表したが、この車はセンターピラーがなく、ドアウインドとリアサイドガラスを降ろすと、ガラス部分に何の遮るもののない開放感のあるスタイルになった。メルセデス・ベンツは、このピラーレスのハードトップクーペをこのときからシリーズにして、カタログにのせた。

センターピラーのないクーペはそのときからスポーティモデルのモデルラインナップとして、Sクラス、Cクラスまで拡大していった。

センターピラーのあるハードトップの登場はそれから約1世紀近い時を経過したときだった。

最初に登場した2ドアクーペは、CLKと呼ばれた。そのモデルは当時、最小モデルのCクラスと足回りは共通だったが、車体前部の形状や部品などは、1クラス上のEクラスと共通するという手法がとられた。

1クラス下の車体の大きさの車に、1クラス上の装備などを施し、車両価格もそれにふさわしい価格設定にする。これがメルセデス・ベンツが2ドアクーペの手法として採り入れたものだった。車体は小さめだが、エンジンや装備は1クラス上。質感は高く、高価な車は、余裕のある生活をしている人たちに受け入れられた。

背もたれはヘッドレストまで一体型となっているハイバックタイプ。前席は専用に設計された。シート素材は黒色レザーが標準だが、オプションで4色が選べる。
着座位置がちょっと高めな後席。座席の形状や大きさなどから大人左右1名ずつが定員。席横の三角ウインドはハメ殺しで、開けることはできない。
最新のメーターパネルは高解像度の液晶ディスプレイを用いている。ハンドル前のメーターは12.3インチ、助手席との間の操作系パネルは11.9インチのディスプレイが装備されている。11.9インチディスプレイは、6度だけ運転席に傾けられ、操作しやすくなっている。また、ダッシュボードトリムやスイッチパネル、ドアパネルなどには64色から選べるアンビエントライトが組みこまれている。
ハンドルスポーク部にもスイッチが内蔵されている。スポーク右側はクルージング系のスイッチが並び、ハンドルから手を離さずに指で操作できる。
9速の自動変速のシフトレバーはハンドルコラムにウインカーレバーのように右に生えている。さらにハンドルスポーク裏にもパドルレバーがある。マニュアルモードを選択したときは、パドルレバーでしか変速を行うことはできない。
11.9インチのメディアディスプレイは各種機能が備わっているが、この手のディスプレイは、運転しながらの操作は、機能表示の位置を確認しなければならないので、むずかしい。音声アシストが主流になる前の段階の操作系だろう。

ふだんはオーナーがひとりでハンドルを握り、都合によっては助手席に家人やビジネスパートナーを同乗させる。後席は大人2名分の座席があるが、ランチにでかけるときに同乗できるぐらいの居住空間はあるが、ふだんはコートや上着、ハンドバッグなどを置くだけの役目を果たすだけ。これが2ドアクーペの後席だ。

客室とは独立したトランクだが、後席背もたれが2/1/2の3分割で前倒し、広い荷室として使える。床下にサブトランクもあり、使い分けることもできる。

今回の「CLE200」も、後席は左右1名ずつのセパレートシートになっており、車内での横の移動はできない。足元も狭めで膝を組むことはできない。着座位置も高めなので、同乗できるのはせいぜい身長160cm位までだ。左右のウインドも開閉ができない固定式を採用している。

センターコンソールの後席側にはエアコンの吹き出し口が設置されている。
後席の中央部分はカップホルダーなので、左右1名ずつしか座れない。

2ドアクーペの愛好者は、後席への同乗をあまり好まないオーナーが多いのも理解できる。

CLE200は直列4気筒2Lのガソリンターボエンジンと9速自動変速のマイルドハイブリッドだが、最近になり直列6気筒3Lガソリンターボ+4輪駆動、マイルドハイブリッドの「CLE53 4MATIC+クーペ」も加わった。2Lモデルでも日常のクーペ生活を楽しむことはできるが、AMG3Lターボモデルは、さらにダイナミックな走行性能も楽しめるプレミアムミドルサイズクーペに仕上がっているはずだ。

エンジンルームは大きなカバーで被われており、エンジン本体は見えない。最近のメルセデスは極力ユーザーにボンネットを開けさせない方向になっている。

メルセデス・ベンツ/CLE200クーペ

全長×全幅×全高4850×1800×1420mm
ホイールベース2685mm
車両重量1800kg
エンジン直列4気筒ガソリンターボ/1997cc
最高出力204ps/5800rpm
最大トルク320Nm/1000~4000rpm
駆動形式後輪駆動
燃料消費率14.5km/L(WLTC)
使用燃料/容量無鉛プレミアムガソリン/66L
ミッション形式電子制御式9速自動
サスペンション形式前:ダブルウイッシュボーン/後:マルチリンク式
ブレーキ形式前:ベンチレーテッドディスク/後:ベンチレーテッドディスク
乗員定員4名
車両価格(税込)850万円
問い合わせ先 0120-190-610

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

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