文・石川真禧照(自動車生活探険家)
上品な佇まいで、高級感があり、優雅で美しい形状を持つ車といえば2ドアクーペだ。仕事の足として乗れば、おしゃれでセンスのよい大人のビジネスマンに見える。プライベートで乗れば、大人の遊び心があり、行動範囲の広さが窺がえる。女性がクーペを運転すれば、その姿だけでハイソサエティな生活を送る日常が想像できる。高級なクーペというのはそのような雰囲気を周囲に醸し出す存在といえる。
メルセデス・ベンツが2ドアのクーペをはじめて世に送り出したのは1969年のこと。当時の小型車クラスに250Cという2ドアクーペを発表したが、この車はセンターピラーがなく、ドアウインドとリアサイドガラスを降ろすと、ガラス部分に何の遮るもののない開放感のあるスタイルになった。メルセデス・ベンツは、このピラーレスのハードトップクーペをこのときからシリーズにして、カタログにのせた。
センターピラーのないクーペはそのときからスポーティモデルのモデルラインナップとして、Sクラス、Cクラスまで拡大していった。
センターピラーのあるハードトップの登場はそれから約1世紀近い時を経過したときだった。
最初に登場した2ドアクーペは、CLKと呼ばれた。そのモデルは当時、最小モデルのCクラスと足回りは共通だったが、車体前部の形状や部品などは、1クラス上のEクラスと共通するという手法がとられた。
1クラス下の車体の大きさの車に、1クラス上の装備などを施し、車両価格もそれにふさわしい価格設定にする。これがメルセデス・ベンツが2ドアクーペの手法として採り入れたものだった。車体は小さめだが、エンジンや装備は1クラス上。質感は高く、高価な車は、余裕のある生活をしている人たちに受け入れられた。
ふだんはオーナーがひとりでハンドルを握り、都合によっては助手席に家人やビジネスパートナーを同乗させる。後席は大人2名分の座席があるが、ランチにでかけるときに同乗できるぐらいの居住空間はあるが、ふだんはコートや上着、ハンドバッグなどを置くだけの役目を果たすだけ。これが2ドアクーペの後席だ。
今回の「CLE200」も、後席は左右1名ずつのセパレートシートになっており、車内での横の移動はできない。足元も狭めで膝を組むことはできない。着座位置も高めなので、同乗できるのはせいぜい身長160cm位までだ。左右のウインドも開閉ができない固定式を採用している。
2ドアクーペの愛好者は、後席への同乗をあまり好まないオーナーが多いのも理解できる。
CLE200は直列4気筒2Lのガソリンターボエンジンと9速自動変速のマイルドハイブリッドだが、最近になり直列6気筒3Lガソリンターボ+4輪駆動、マイルドハイブリッドの「CLE53 4MATIC+クーペ」も加わった。2Lモデルでも日常のクーペ生活を楽しむことはできるが、AMG3Lターボモデルは、さらにダイナミックな走行性能も楽しめるプレミアムミドルサイズクーペに仕上がっているはずだ。
メルセデス・ベンツ/CLE200クーペ
全長×全幅×全高 | 4850×1800×1420mm |
ホイールベース | 2685mm |
車両重量 | 1800kg |
エンジン | 直列4気筒ガソリンターボ/1997cc |
最高出力 | 204ps/5800rpm |
最大トルク | 320Nm/1000~4000rpm |
駆動形式 | 後輪駆動 |
燃料消費率 | 14.5km/L(WLTC) |
使用燃料/容量 | 無鉛プレミアムガソリン/66L |
ミッション形式 | 電子制御式9速自動 |
サスペンション形式 | 前:ダブルウイッシュボーン/後:マルチリンク式 |
ブレーキ形式 | 前:ベンチレーテッドディスク/後:ベンチレーテッドディスク |
乗員定員 | 4名 |
車両価格(税込) | 850万円 |
問い合わせ先 | 0120-190-610 |
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。
撮影/萩原文博