姉を反面教師に父親の前ではいい娘を演じていた
そんな父親とよく衝突していたのは陽子さんではなくお姉さんだったそう。進路についていつも言い合いをしており、結局お姉さんは希望していた進路を諦めて働きながら母方の祖父母の家で暮らし始めたと言います。
「姉は服飾系の専門学校に進学したかったんですが、当時の父親の考えでは、大学と違って学歴にならない専門学校にお金を出すつもりはなかったみたいで。父がご機嫌のときに何度も下手に出ていた姉でしたが、あまりに反対されたりするものだからキレてしまって。母親は姉の味方についてくれたのですが、それがより父親が気に入らないポイントだったようで、そこから姉が出ていくまでずっと機嫌が悪かったです。それから姉が祖父母の家に行ってしまったことがよほど腹が立ったのか、父と姉はそこから絶縁状態が続いています。私はそんな毎日の中で存在を消すことだけに務めていました」
そんな姉の姿を反面教師に、地元の短大へ進学したという陽子さん。行きたい学校というよりは一番条件がいい学校だったと振り返ります。
「別になりたい夢とかも当時はなくて、専門学校もダメだし、父の納得いくようないい大学に進学できる頭もなかった。だから2年間の学費で済んで、実家から通えるところを選びました。ここなら父も納得するだろうと思って。短大に行きたいと伝えるときはまさにプレゼンのような感じでしたよ。内容は、こんな勉強をしたい、家から近いから交通費も少しで済むこと、移動時間がないからアルバイトをして学費の足しにするなどです。父が好きな親孝行の娘を演じました。結果、私は見事進学を認められました。家は決して貧乏ではなかったのでお金を請求されることも、奨学金を利用することもありませんでした。姉には申し訳ないけれど、あの1年弱の父姉バトルで学ばせてもらいました(苦笑)」
短大卒業後は外食チェーンを運営する企業に就職。店舗配属となり、職場で前の旦那さまと出会います。交際の3年間でその間一度も親に会わせたことがなかったそうですが、それが父の結婚反対の理由になってしまいます。
【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。