『猫のダヤン』を描いた絵本や旅のエッセイなど、さまざまな作品を発表し続けている作家の池田あきこさん。今年2023年は、『猫のダヤン』の生誕40周年。そんな記念すべき年に、花人日和では、池田さんご自身が日々の暮らしの楽しみを綴った連載エッセイを4回にわたってお届けしました。第4回で訪れた『船に揺られて東京を周遊! 水上バスで行くぶらり旅』の特別編として、水上バスに乗る前に池田さんが楽しんだ浅草散歩の様子もご紹介します。
第5回 水上バス旅前に粋な浅草で食べ歩き!
文・池田あきこ
さわやかな風が吹く五月。今日のプチ旅は水上バスがメインだけれど、久しぶりに浅草をブラブラしてみようと朝から出かけてみた。
一時期上野に住んでいた私は、浅草愛がとても強いのだ。浅草はずっとコロナで閑古鳥が鳴いていたと聞いたけど、今は回復したのかな? との心配は全く杞憂。雷門から仲見世を歩けば、いろんな顔の外国人で大賑わい。もちろん日本人グループもたくさんいて、浮かれて着物を着た人も多い。
みんな顔が緩みっぱなしで買い食いをしながら、携帯を掲げ写真を撮っている。仲見世は基本食べ歩きは禁止。混雑していたら服や商品に食べ物が付いちゃうからね。おおむねそのマナーは守られていて、買った店の中や周辺で大口を開けて美味しそうに食べている。
特に人だかりがあった喜久屋では大きめふた連なりのお団子が人気。アジア人も白人もムスリムと思われる人も手に手に串を持ってほおばっている。
藁苞(わらづと)に刺したあったかい焼き団子を大鍋のみたらしをくぐらせている様子は見ていても唾が出ちゃう!……とそれを悟られたか? 私の描いた絵を見て、お店の方がいそべ餅をふるまってくれた。
隣の寺子屋本舗の串ぬれおかきも、大好きなぬれ煎餅を串に刺した優れものだったけれど、イマイチ外国人には受けていなかった。やっぱり人気はしょうゆ味より甘いものなんだろう。
芋ようかんで有名な舟和でも圧倒的人気はアイス。せっかくなら芋ソフトにすればいいのにみんな手にしていたのはクレミアという生ソフト。少年ふたりが夢中で食べていたのがかわいかった。
浅草名物人形焼きの店もたくさん並んでいたけれど、やっぱりここは慶応4年創業、最も歴史のある木村家人形焼本舗で職人さんを描くことにした。 浅草名所にちなんだ五重の塔・雷様・提灯・鳩の四つの型の人形焼があっという間に焼き上がるのを見ているのは楽しい。
浅草名物ハトといえば、『ダヤン日本へ行く』のコミックで、鳩をはとバスに仕立て、魔女の案内で雷門見物に行くシーンがあるのでちょっとお見せしちゃいましょう。
浅草寺にお参りしてから左方面に歩けば、お祭り感たっぷりに幟を立てまわした西参道が新しくできていた。入り口を入ってすぐの右側にとってもかわいいお店を発見! その名も「浅草きんぎょ」。
西参道には射的屋、踊り衣装、日本刀の店があってちょっとしたテーマパーク。本屋にしても”ギャンブルに特化“と大書されて実に浅草っぽい。客引きに熱心な車屋さんがペラペラと英語をしゃべっているのはコロナの最中に勉強したのかな。それにしても賑わいが戻ってよかった~。
浅草散歩を楽しんだ後は、いよいよ水上バスの旅! 記事はこちらからご覧ください。
池田 あきこ(いけだ・あきこ)
本名池田晶子。東京吉祥寺生まれ。1983年に初めてダヤンを描き、その後ダヤンを主人公とした物語を多数生み出していく。旅をイラストとエッセイでつづったスケッチ紀行のシリーズや教科書の挿絵なども手がけ、幅広く活躍。’96年から笠間日動美術館ほかで「池田あきこ原画展」、’99年春には日本橋高島屋で「猫のダヤン 池田あきこ原画展」を開催、大好評を博す。画集、長編物語、旅のスケッチ紀行シリーズなど作品を多数発表。2023年6月末からは、40周年を迎える猫のダヤンの原画展が全国で開催予定。2023年6月28日から7月10日まで、銀座松屋にて「猫のダヤン40周年記念 池田あきこ原画展-ダヤンの不思議な旅-」が開催されます。
『猫のダヤン』 40周年特設サイトはこちら
https://www.nekono-dayan.com/40th/
撮影/黒石あみ(小学館)