花粉シーズンがもうすぐやってきます。今年のスギ花粉の飛散量は例年より多くなると予想されており、環境省は関東などでは過去10年の中で最も多くなるとの見通しを発表。例年以上に対策が必要になりそうです。
花粉の中でも花粉が壊れた「粉砕花粉」には特に注意が必要だと訴えるのは、埼玉大学大学院 理工学研究科の教授であり、花粉症原因物質研究の第一人者の王青躍(オウ セイヨウ)先生です。王先生は、「排気性能が不十分な一部の掃除機が花粉を壊し、室内に排出してしまう可能性がある」ことを明らかにしました。
そこで、Dysonが発表した最新の研究結果とともに、花粉対策のチェックポイントを解説していただきます。
粉砕花粉とは
粉砕花粉とは、小雨などの外部からの刺激や、都市部での排気ガス等との接触で破裂してしまった花粉のことを指します。
花粉が破裂すると、花粉の中に含まれるアレル物質が空中を漂います。花粉は通常20~40㎛ほどの大きさですが、粉砕花粉はマイクロレベルまたはナノレベルの超微粒子になる場合があるとのこと。花粉が辛い方にとっては、この壊れた花粉が最も避けたい粒子と言われているため、微細な粒子の対策を行なうことが大切なのです。
また、微粒子である粉砕花粉は少しの動きで簡単に舞い上がってしまいます。そして、舞い上がった粒子はなかなか下には落ちず、長時間空気中を浮遊し続けると言われています。人が動くことでも空気中に舞い上がるため、この粒子を避けるためには、空気中の粒子に対しても対策が必要です。
最新研究で掃除機が花粉をまき散らしている可能性が発覚!
日本で販売される掃除機上位5社の掃除機を用いて、同じ条件のもと掃除機がけをする中で花粉が粉砕されるか、排気されるか等の調査を実施。スギ花粉を掃除機で吸引後に、ダストボックス内の花粉が破裂しているかどうかの「花粉破裂率」を算出したところ、実験環境では掃除機の吸引だけでダストボックス内の花粉はほとんど破裂していないという結果になりました。
しかし、続いての実験(埼玉大学の独自計測法で花粉をどれだけ排気しないか、排気のブロック率を比較)では、粒子が小さければ小さいほど、排気の中に粉砕花粉が漏れている掃除機が多いという事実が発覚しました【表1】。
続いて、ダストボックスにたまっている花粉と掃除機の排気口から排出された花粉を電子顕微鏡で観察。上記の実験でPM2.5までブロックできていた掃除機も、さらに小さな微粒子になると排気口から排出されてしてしまうことがわかりました【写真1】。
今回の実験結果から王先生は、「花粉のみを掃除機で吸引した際の状況を確認しましたが、実際の環境では、ホコリやゴミと一緒に吸引するため、花粉とホコリが衝突することで花粉が粉砕される可能性があります。
花粉シーズンは加湿器も使用される季節で、湿度によって花粉が粉砕されやすくなり、掃除機で吸引後、粉砕された花粉が排気口から排出される可能性も十分あります。掃除機を選ぶときは、“排気性能”に重点を置き、微粒子も排出しないものを選ぶのがポイントです。
掃除機の他にも、空気清浄機の使用でも粉砕花粉は空気中に舞い上がりやすいです。空気清浄機は微細な粉砕花粉まで除去することができる高性能なHEPAフィルターが付いたものを選びましょう」と解説します。
花粉のプロが実践する室内でできる花粉対策
室内では他にも、粉砕花粉から自分を守るポイントがあります。部屋の中には花粉が入りやすい・たまりやすい「花粉スポット」が存在するのです。掃除の際に花粉マップのポイントに注意することで、花粉の影響を最小限に抑えることができます。
また、掃除以外にも王先生が実践している花粉対策は下記の通りです。ぜひチェックして、今年の花粉シーズンを乗り切りましょう。
【プロフィール】埼玉大学大学院 理工学研究科 王 青躍(オウ セイヨウ)先生
環境科学、花粉症原因分質の研究者。都市大気汚染計測、対策技術、再生可能なエネルギーの研究と同時に、近年、都市部木本類と草本類の花粉とそれらのアレルゲン物質の飛散挙動、大気汚染による花粉症への増悪、花粉症や大気汚染対策について、NHK総合テレビの「おはよう日本」をはじめ、130回以上のテレビ番組等に出演・解説。The Japan Timesなどの新聞・雑誌でも研究成果が数多く紹介されている。
文/ふじのあやこ