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低い温度でじっくり火を入れることで、お肉や魚を柔らかくできる低温調理器。火を使わないので安全で、長時間調理でもつきっきりになる必要がなく、機器任せでよいなど、思った以上に使いやすいと人気があがっています。

誰でも美味しく簡単に、さまざまな調理が可能な低温調理器ですが、更に美味しくできる方法を提案してくれるのが『一流シェフの低温調理器レシピ』(世界文化社)。日本を代表する、野崎洋光(日本料理)、脇屋友詞(中国料理)、日高良実(イタリア料理)、高良康之(フランス料理)の4人による低温調理専門のレシピブックです。
※野崎さんの「崎」は正しくは「たつさき」、高良さんの「高」は正しくは「はしごだか」です。

今回は、野崎洋光料理長による「和風ローストビーフ」と「温泉卵」のレシピをご紹介。アレンジ方法も提案されているので、活用幅も広がりますよ。

しっとり仕上がるお肉料理や、とろんとした食感の魚料理など、レストランのような味を簡単に楽しめる低温調理器を使って、レパートリーを広げてみませんか。

【日本料理】野崎洋光(のざきひろみつ)

「加熱温度の調整がぴたりと決まるから、どんな素材の食感も思いのまま。和食の繊細な火入れを叶えてくれます。肉も魚も卵もですが、筍、山菜のアク抜きやだしをとるのにもおすすめです」

東京・南麻布「分とく山」総料理長。従来の考え方にとらわれない自身の料理哲学を柔らかい語り口でわかりやすく説く。栄養専門学校を卒業した栄養士でもあり、健康の源は食べることと提唱し、家庭料理の大切さと家庭でしか作れないおいしさをTVなど多くのメディアで伝えている。

和風ローストビーフ

しっとりと和風に仕立てたローストビーフ。醤油、酒、水を合わせた煮汁で低温調理し、牛肉に香りと味を含ませます。牛の塊肉は最初に全体に軽く焼き色をつけますが、野崎式では、もうひと技をプラス。湯でさっと霜降りして脂分を落としてから低温調理していきます。
「最初に焼くと肉の形が引き締まって整い、さっぱりと食べられるのが利点。200gの大きさなら1時間で手早く作れますよ」

【材料】(作りやすい分量)
牛ランプ肉(塊肉)…200g
塩…0.2〜0.4g(牛肉の重量の0.1〜0.2%)
(a)醤油…15ml 酒…45ml 水…30ml
【たれ用】
大葉(せん切り)…5枚分
長ねぎ(粗みじん切り)…2分の1本分
水あめ…大さじ1
【黄身おろし】
卵黄…1個分
大根おろし(軽く水気を絞ったもの)…70g

1.下ごしらえ

1.調味液を用意する。(a)を小鍋に合わせてひと煮立ちさせ、酒のアルコール分を飛ばして粗熱をとる。

2.牛ランプ肉の全面に塩をふって30分やすませる(A)。フライパンに入れて強火にかけ、一面ずつ焼いてすべての面に軽く焼き色をつける(B)。

3.【2】を熱湯に30秒ほど浸けて霜降りし(C)、取り出して(D)、水気をキッチンペーパーで拭く。食品用耐熱袋に入れ、【1】を加える(E)。

2.低温調理

低温調理の水槽を60度に予熱する。水温が目標温度に達したら、牛肉の入った袋を水槽に沈め、水圧法で脱気。封をして1時間調理する(F)。

3.仕上げ

1.袋を湯から引きあげ、氷水で急冷する。牛肉はバットに取り出して、袋の煮汁は煮詰めてたれに用いる。

2.たれを作る。【1】の煮汁をフライパンにあけて強火で沸騰させ、大葉と長ねぎを加えてひと煮立ちさせる。アクを取り、水あめを加えて混ぜながら溶かし、小さい器に注ぐ。
水あめは保湿力があって冷めるととろみがつくので、牛肉に絡みやすくなる。

3.牛肉を薄く切り分けて器に盛る。

4.卵黄と大根おろしを混ぜて黄身おろしを作り、添える。

付け合わせ

塩ゆでしたじゃがいも、湯通しした生わかめ、大葉、クレソン、すだち。

◆保存は袋のまま氷水で冷却後、冷蔵室で2〜3日、チルド室で4〜5日、冷凍で1か月。リヒート(60度10〜15分)して用いる。

たれは煮汁を使って

「牛肉と一緒に低温調理した煮汁は、旨みも出ているから捨てないで! これがおいしいたれになるんです。でも必ず一度煮立てアクを取って」と野崎さん。大葉や長ねぎなどを入れ、肉に絡みやすいよう水あめでとろみをつける。

黄身おろし

黄身おろしは文字通り、生の卵黄と大根おろしを合わせたもの。牛肉のオイル焼きやすき焼きなどにぴったりで、色も鮮やか。肉のしつこさをやわらげ、あっさりと食べられるプロの薬味。

温泉卵

プロなればこそ、卵料理ひとつにもこだわりが。和食では瓢亭卵がつとに有名ですが、卵も調理次第で料理はぐっと格上げされます。
「ねっとり固まった黄身を、半熟状のとろりとした白身が包む温泉卵。一定温度を確実にキープできる低温調理だからこそ、失敗なく美しくでき上がります。そこから発展する小さな料理を考えるのも楽しいですよ」

【材料】(作りやすい分量)
全卵…5個

1.下ごしらえ

卵は室温にもどしておく。食品用耐熱袋に、卵が浸かるくらいの量の水(分量外)と共に入れる(A)。

袋にも水を入れておけば、それが緩衝材となって殻が割れにくくなる。また、卵が直接温水で覆われるので熱伝導がよく、均一な火入れができる。

2.低温調理

低温調理の水槽(常温の水)に卵の入った袋を沈め、水圧法で脱気し封をする。65度に設定する。水温が目標温度に達してから20分調理する(B)。

3.仕上げ

袋は時間がきたらすぐに取り出す。卵は余熱で火が入らないよう、冷水に浸けておく。殻を割ったでき上がりの温泉卵(C)。

◆保存は袋のまま氷水で冷却後、冷蔵室で1〜2日、チルド室で2〜3日、冷凍は不可。

Arrange 温泉卵と鶏肉の親子丼

【材料】(1人分)
温泉卵…1個
鶏もも肉(お好みで低温調理したもの、厚切り)…5切れ
三つ葉、きざみ海苔…各適量
【煮汁】
(a)だし汁…120ml みりん…15ml 醤油…15ml
水溶き片栗粉…片栗粉小さじ1強を水小さじ2で溶く
ごはん…適量

【作り方】

1.温泉卵は殻を割り、ボウルなどに取り出す。

2.鍋に煮汁用の(a)を入れて強火にかけて沸かす。三つ葉をきざんで入れ、軽く火を通してから、水溶き片栗粉を加えてとろみをつける。

3.丼にごはんを盛り、【2】の煮汁をかける。温泉卵と鶏肉をのせ、きざみ海苔を添える。

Arrange 彩り温泉卵

グラス盛りは、フルート型のシャンパングラスなら野菜と温泉卵の層がきれいに出ます。量も手ごろ。

【材料】(1人分)
温泉卵…1個
【好みの野菜】
オクラ(小口切り*1)、
トマト、長いも、きゅうり、ラディッシュ(以上小角切り)、
わさび菜(葉を小さくつむ)、おろし生姜…各適量
【八方だし*2】(作りやすい分量)
だし汁…100ml
みりん…25ml
淡口醤油…25ml
削り節(追いがつお用)…2g

*1:オクラは塩をふって板ずりし、水洗いしてさっと湯通しして切る。
*2:八方だしは、材料を鍋に合わせてひと沸かしし、漉す。

【作り方】

1.温泉卵は殻を割り、縦長のグラスに入れる。
アルミホイルを小さな長方形に折ってグラスに斜めに差し、殻を割った温泉卵をすべらせると、簡単にグラスに入れられる。

2.温泉卵の上にオクラとトマトを重ね、よく冷やした八方だしを少量注ぐ。残りの小角切りの野菜を混ぜて盛り、わさび菜とおろし生姜を添える。

撮影/西山 航

* * *

一流シェフの低温調理器レシピ
著/野崎洋光・脇屋友詞・日高良実・高良康之
世界文化社 2200円(税込)

 

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