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監督は実娘であるシャルロット・ゲンズブール。唯一無二の存在、ジェーン・バーキンの真理に迫る映画

7月16日にパリのサンロック教会で葬儀が執り行なわれたジェーン・バーキン。76歳でした。若い世代の人には、「エルメス」のバッグに名付けられた「バーキン」の名の方が知られた存在かもしれません。彼女のフレンチカジュアルのお手本のような、白いシャツにデニムといった、一見、無造作なほどにシンプルなコーディネイトは時代を超え、多くの人を魅了しました。

彼女はどのようにして、あの「ジェーン・バーキン」なスタイルに辿り着いたのでしょう。映画『ジェーンとシャルロット』はジェーン・バーキンが出演した最後の作品。家族にすらミステリアスなバーキンの真理に迫ろうと、娘であり女優のシャルロット・ゲンズブールが初監督を務めたドキュメンタリーです。シャルロットはこの作品のPRのために来日する予定でしたが、かないませんでした。近年はバーキンの介護をしていたシャルロット。彼女は母との残された時間を考えて、この作品に取り組んだのかもしれません。

3人の夫、娘の死……シャルロットがカメラを通して見つめ、初めて触れた母ジェーンの姿

ジェーン・バーキン

――2018年、東京。シャルロット・ゲンズブールはジェーン・バーキンの撮影を始める。二人の間には長年、どこか他人のようなよそよそしさがあった。その原因を探ろうとシャルロットはジェーンに真正面から向き合う。父であるセルジュ・ゲンズブールのもとからジェーンが出て行ってからは父親に育てられたシャルロット。セルジュと同じようにシャルロットにも特別な何かがあると感じ、どこか恐れていたジェーン。シャルロットはカメラを通し、初めて母の真実に触れることになる――

シャルロット・ゲンズブールは三姉妹で、3人それぞれ父親が違います。彼女の父はフランスを代表する伝説的ポップスター、セルジュ・ゲンズブール。ゲンズブールとバーキンはフランスのアイコン的カップルで、デュエット曲「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」が世界的に大ヒットしました。ゲンズブールと別れたバーキンが映画監督のジャック・ドワイヨンと出会い、その間に生まれたのが女優のルー・ドワイヨンです。二人には姉のケイト・バリーがいます。バーキンは最初の夫の作曲家ジョン・バリーと長女ケイトが生まれた年に離婚。その後、ゲンズブールと恋に落ちました。ケイトは13歳になるまで、ゲンズブールを父として、その後はジャック・ドワイヨンを父として育てられました。

シャルロット・ゲンズブール

2013年、写真家だったケイト・バリーが46歳で亡くなります。飛び降り自殺と言われています。シャルロットは姉の死をきっかけに本拠地をニューヨークに移しますが、逆にパリにいる母の側にいたい、彼女を見つめてみたいと考えるようになりました。母はどのように姉の死を乗り越えたのか。姉や妹のように母に接してもらえなかったと記憶するシャルロットはバーキンに自分をどう思っているのか、率直に問いかけます。

母はどんな思いで母になったのか。子どもの頃は当然のように母は母だと思っていたけれど、自分が母になったからこそ、わかることがある。ジェーンは娘の成長に戸惑っていただけでした。シャルロットは自分の娘アリスに対して、自分が今、同じ気持ちであることに気づきます。セラピーさながら、娘に心のうちを明かすうち、ジェーンもまた、自分の中にかつての母を見出します。家族にすら特別な存在に見えるジェーンやシャルロット。その実態は私たちと変わらない、誰かの母で誰かの娘でした。

「人生を警戒せず、人を信じ、すべてに興味を持ち、寄り添う」。映画が教えてくれる、ジェーンの人間哲学

冒頭の日本から場所を移して、フランスのジェーンの自宅へ。室内はセンスの塊。高価そうなものも、そうでないものも、同じように雑然と置かれていて、なんともいえず、おしゃれで、さすがです。

それでもシャルロットとその娘、アリスと過ごす時間はジェーンをリラックスさせ、すっかり、おばあちゃんの顔つきに。老眼鏡をかけて、小さな字を見にくそうにするジェーン。ゆったりした服装で気づきにくいのですが、「ここ数年で体型が変わった」と打ち明けます。

――この数年、鏡を見て、老いを感じるようになった。「大歓迎」と考えようとする。象の膝みたいな肌でも素敵な女性は大勢いる。皺だらけの顔にもそのうち慣れる。気にしない境地になってきた。見た目は変わる。メガネを外して、考えないようにするのが一番――

なんでもあるがままに。年齢だって、受け入れる。そんな彼女でも、娘ケリーの死だけは別でした。時間がかかり、シャルロットやルーのために時間を割けなかったことを後悔しています。

人生を謳歌しているように見えたジェーン・バーキン。その優しい笑顔の裏にはたくさんの繊細さが隠されていました。偏見がなかったのも、自由を愛したのも、細やかな配慮がもたらしたものでした。

親日家でもあったジェーン・バーキン。映画は渋谷で行われたコンサートの様子を映し出したシーンから始まります。街を歩いていたら、ふと彼女に会えそうな気がしてきました。今頃は風になって、これまで以上に自由に過ごしているかもしれません。

『ジェーンとシャルロット』

8月4日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町 / 渋谷シネクイント 他にて全国縦断ロードショー
出演:ジェーン・バーキン/シャルロット・ゲンズブール/ジョー・アタル
プロデューサー:マチュー・アジェロン / マキシム・ドロネー / ロマン・ルソー / シャルロット・ゲンズブール
芸術監督:ナタリー・カンギレイム
編集:ティアネス・モンタッシー 
追加編集:アンヌ・ペルソン
撮影:アドリアン・ベルトール
ポスプロマネージャー:フラミンゴス=オウドリアン・アジェジ
第一助監督:ジーナ・ディサンティ
美術:ギョーム・ランドロン
録音:ジャン=リュック・オウディ / マルタン・ラノー / サミュエル・デローム / マルク・ドワーヌ
ロケーションマネージャー:シルヴィー・サルヴァニヤック・ドゥ・サン-シール
配給:リアリーライクフィルムズ
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/janeandcharlotte
(C) 2021 NOLITA CINEMA – DEADLY VALENTINE PUBLISHING / ReallyLikeFilms.

文/高山亜紀


 


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