文・石川真禧照(自動車生活探険家)

車幅が広いことを意識すれば、エンジンは低回転から使えるし、EVなら静か。一般的な峠道ならスイスイ走ってくれる。意外に街中でも乗り易い。

ランボルギーニ・レヴエルトは、ランボルギーニが創業60周年を記念して発売した同社初のプラグインハイブリッドのスーパースポーツカー。

角度の浅いY字型のデイタイムランニングライトとシャークノーズのボンネットが迫力。
Y字型のランプはリアにもモチーフされている。六角型のテールパイプも特徴。リアウインドが小さいのがわかる。
航空工学を生かしたボディデザイン。フロントウインドとルーフの角度は急傾斜だが室内の圧迫感は少ない。

イタリアの実業家であり、富豪のクルマ好きだったフェルッチオ・ランボルギーニは、世界中のスーパースポーツカーを手に入れ、走らせていたが、その性能や品質が気に入らなかった。そこで彼は自らスーパースポーツカーの生産にのり出すことを考えた。1963 年、第1号車が完成し、アウトモビリ・ランボルギーニが誕生した。その後1974年に経営から退くまでの間にカウンタック(クンタッチ)など次々と話題になるスーパースポーツカーを発表し、フェラーリと並ぶスポーツカーメーカーに成長させた。

両側のドアをハネ上げたカット。左右のドアの高さと角度がほとんど同じなのは工作精度の高さを物語る。
乗り降りしやすいシザーズドア。室内から閉めるときはやや力を要す。

しかし、1970年代後半からアウトモビリ・ランボルギーニは経営難と経営者の変更が相次ぎ、苦難の道を歩んだ。1999年にアウディ傘下に入り、ようやく経営が安定した。 その後に次々と発表されるスーパースポーツは人気になり、現在に至っている。

レヴエルトは2023年に発売された新型車。航空工学に基づいて設計されたカーボンファイバーと軽量素材を広範囲に使用した車体は、原点となるカウンタックの影響を受けている。

動力源は新設計されたV型12気筒6.5Lの自然吸気大排気量のガソリンエンジンと3基の電気モーターが組み合わされている。モーターは前輪用に2基、車体中央のエンジンと接続している8速変速機の近くに1基。この1基は状況で後輪を駆動する働きをする。

空気の流れを重視した車体。リアのエンジン部への空気の流れに気を使っている。それにしてもこの車体色の塗り分けは国産車では考えられない。
高速道路をのんびり流しているレヴエルトはこういう角度から見ることができる。排気管の位置が高いのも特徴だ。

出力はV12エンジンが825ps、725Nm。モーターの出力は3基で合計で450ps、850Nmになるが、システム合計での数値の馬力は1015psと発表されている。

エンジンとモーターによる駆動は電子制御で行われるほか、ドライビングモードスイッチでも選択することができる。

V型12気筒エンジンは車体後部にむき出しで搭載されている。
ガソリンエンジン用のガソリン給油口。
プラグインハイブリッドなので外部からの充電もできるが、200V用だけ。急速充電はできない。給電口はフロントボンネット下にある。
フロントボンネット下はトランクスペース。形状はスクエアではないが、左右幅約610mm、奥行約420mm、高さ約390~440mmある。

走り出す前の解説が長くなってしまったが、そろそろ試乗に出かけよう。

隠されたドアノブに手をかけて、ドアを開ける。ドアは垂直に開閉するシザーズドア。カウンタックからのオマージュ。低い着座に腰を下ろし、手を伸ばして下に引くようにしてドアを閉める。目の前のハンドルは円型に近い形状。最近の車は五角型や四角型が多いので、なぜか新鮮。ハンドルの奥にはインストルメントパネルから独立したメーターパネルが立っている。パネルの中央には10000回転まで刻まれたエンジン回転計。受け取った時のレッドゾーンは8500回転からだった。走り出してわかったのは、水温や油圧が走行により適正状態になると、レッドゾーンがかわり、最終的には9300回転からになったのだ。

座っただけで気持ちが高ぶってしまう運転席。室内色は70色の中から組み合わせ自由で選べる。
体をしっかりと支えてくれる座席。背もたれのうしろにはゴルフバッグが入るスペースがある。
「CITTA」モードでは大径のエンジン回転計が目の前に表示される。エンジンが冷えているときはレッドゾーンが8500回転だが、暖まってくると最終的には9300回転からになる。

レヴエルトを走らせるには、センターコンソール中央の赤いカバーをハネ上げて、スタートボタンを押すところからはじまる。ボタンを押すと、V12、6.5Lエンジンが爆音と共に目をさます。というのがこれまでのランボだった。しかし、プラグインハイブリッドのレヴエルトは、音もなく、メーターに電気が入り、走行可能な状態に。長いパドルレバーを引き、Dレンジに。ハンドルスポーク左のウインカースイッチを押し、スタートする。音もなく、レヴエルトは走り出した。その後も走行音もなく、モーター走行を続ける。ドライビングモードは「Citta(チッタ)」モード。シティの意味だ。3kmも走ると電池の充電量が50%まで減少した。ここでハンドルスポーク左上にあるEVダイヤルを操作し、「RECHARGE」モードを選択する。突然、V12エンジンが目をさまし、いつもの爆音を発する。いつものスーパースポーツ、ランボルギーニだ。このモードで充電を開始すると、数分で充電が100%になった。これで再びEV走行だ。

センターコンソールには4ウエイフラッシャー、給油口開、スタート/ストップスイッチ、変速スイッチが並ぶ。
スタート/ストップスイッチは、カバーをハネ上げて操作する。なんとなくガンダムチック。
ハンドルスポーク右にあるEVダイヤルとリアウイング操作。EVは3モードから選ぶ。
ハンドルスポーク左はドライビングモード(赤)と前輪車高調節ダイヤル。方向指示スイッチもここに。

EV走行中のレヴエルトは、静粛性(周囲に対しても)も高く、車体幅が広く、右前(左ハンドル)の感覚がつかみにくいものの、運転しやすい。確かに後方視界は、小さなリアウインド+V12エンジンが発する熱でかげろうが立ち、見えづらいが、ウインカーを出すとだいたい後方の車は車線を譲ってくれるので、車線変更もあまり苦労せずに行える。

静かなランボルギーニは異次元の体験だ。次は本来のランボを楽しむことにする。「STRADA」モードを選択すればV12はアイドリングから周囲の視線が集中する。それでも「STRADA」モードでのパワーは全開の1015PSではなく、886psに抑えられている。でも0→100km/h加速は実測で3秒台で走り切る。一方で、この6.5Lは60km/h 7速1500回転で街中を走ることもできるほど低回転域でのトルクも太い。ドライビングモードはさらに「SPORT」(927ps)の最高出力を楽しめるが、そこはサーキットで楽しむことを勧めたい。

CORSAモードではエンジン回転計の表示はバーグラフになり、変速ポジションが大きく表示される。
狭いリアウインドを通して、後方を見る。エンジンからの熱でかげろうが立つ。
助かったのは、車を後退させるとき。センターコンソールの8.5インチ画面に周囲の様子が映し出されること。これで後退もこわくない。
マニュアルモードでの変速は、パドルレバーで行う。レバーは上下に長く、シフトしやすい。

乗り心地に関してもレヴエルトは上質だった。スポーティモードの「STRADA」での目地の乗りこえも、ゼブラ舗装の路面も、上下動や突き上げがなく、フラットだった。タイヤは超扁平のランフラットなのに、この乗り心地は素晴らしい。サスペンションチューンのレベルの高さだ。

ちなみに時速100キロの巡航時のV12エンジンはDレンジなら1800回転でユルユルと回っているに過ぎない。もちろんその気になれば、パドルレバーで素早くシフトダウンし、9000回転まで使い、異次元の加速をたのしむこともできる。

スーパーカー系の最近の流行りが助手席前の小さな画面。運転席と画面を共有できる。
タイヤはブリヂストンとの共同開発によるランフラットタイヤ。フロントは265/30ZR21、リア355/25ZR22を履く。こんな超扁平でも乗り心地はフラット感があり、安定していた。ブレーキのディスク盤が大きい。

プラグインハイブリッドのスーパースポーツ、レヴエルトは、63年前、世界最高のスポーツカーを造ると言ったフェルッチオ・ランボルギーニの理想に近い車に仕上がっているといってもよいほどに素敵なスーパーカーに仕上がっていた。

ランボルギーニ/ランボルギーニ レヴエルト

全長×全幅×全高4947×2038×1161mm
ホイールベース2779mm
車両重量1780kg
エンジン/モーターV型12気筒 6498cc/交流同期×3基
最高出力825ps/9250rpm/150ps+150ps
最大トルク725Nm/6750rpm/350Nmx2+150Nm
駆動形式四輪駆動
燃料消費率/複合電費6.6km/L(WLTC)12.7kwh(WLTC)
使用燃料/容量無鉛プレミアムガソリン/未公表
ミッション形式8速デュアルクラッチAT
サスペンション形式前:ダブルウィッシュボーン 後:ダブルウィッシュボーン 
ブレーキ形式前:カーボンセラミック 後:カーボンセラミック  
乗員定員2名
車両価格(税別) 約6000万円~
問い合わせ先0120-988-889

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

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