現代人を蝕むさまざまな病気と「老化」は紙一重で、老化の進行は病気の進行にも密接に関与しています。「細胞環境デザイン学」を独自に提唱する、杏林予防医学研究所の山田豊文所長は、白髪が増えたりシミが目立つようになるのは「許せる老化」であり、骨粗鬆症や認知症、がんなどは「許せない老化」であると言います。
しかし、「許せない老化」を治す力が「細胞」の中にはあり、細胞の環境を整えるための大きな柱が「食事」とのこと。毎日の食事や習慣の選択が、わたしたちを老けさせもし、若返らせもするのです。
今回は、山田豊文さん監修の『老化が止まる食事術』より、食べ方の2つのコツをご紹介します。
監修/山田豊文
「咀嚼」と「少食・断食」が、老けない体づくりのコツ
食事の内容だけでなく食べ方も、健康を維持するために大切。そのポイントは大きく分けると、「よく嚙んで食べること(咀嚼)」と、「空腹の時間をつくること(少食・断食)」です。
食べるという行為は、主に上半身のさまざまな神経や器官が複雑に連動して成り立っています。目で食べ物を確認し、口に入れて嚙むと唾液が分泌され、すでに消化活動がはじまっています。早食いは、こういった体のシステムに逆らう行為です。口のなかで行うべき消化が十分でないまま飲み込めてしまうのは、現代の食事がやわらか過ぎるのが問題。よく嚙まずに早食いをすることは、消化器官に負担をかけるだけでなく、顔や首周りの老化や歯を弱くすることにもつながっています。よく嚙んで食べることは、老化から遠ざかるための基本といえるでしょう。
もう一つ重要なのが「少食・断食」です。現代人はとにかく食べ過ぎ。1日3食が当たり前の人は、空腹に恐怖や嫌悪感さえ抱くかもしれません。しかし、空腹時に体内で発生するケトン体という物質は、エネルギー源になったり、脳をリラックスさせたり、細胞を酸化ストレスなどから守ってくれることがわかっています。また、断食をすると内臓が消化活動を休めるので、じっくりメンテナンスに時間を充てることができます。全身の細胞は「食べない時間」にどんどん若くなるのです。
質の高い少量の穀菜食をよく嚙みながら食べ、ときには断食で体をリセットする。このサイクルが身につけば、自然と「少食モード」になり、脂肪や砂糖への執着もなくなって、細胞から若々しさを保つことができるのです。
消化の負担を減らしてくれる咀嚼の力
戦前に比べて、日本人の1回あたりの食事時間は22分から11分に、咀嚼回数は1,420回から620回にと、ともに半減しています。嚙むという行為は、消化のプロセスというだけでなく、咀嚼によって分泌される唾液が口腔内の環境を整えるなど、さまざまな効用があります。よく嚙むためには、無意識によく嚙める食事にすることが一番簡単。ここでも「嚙み応えのある穀菜食」が鍵を握るのです。
嚙む回数を増やす食事のコツ
●嚙み応えのある食べ物を選ぶ
白米より玄米、豆類や根菜などの野菜類は繊維質が多く、自然としっかり嚙むことができます。逆に嚙み応えのない食事は、体を老けさせるのです。
●飲み物で流し込まない
味噌汁などの汁物以外に、飲み物が食卓にあると、よく嚙まずに飲み物で流し込むというのがクセになってしまいます。お茶は食後に。
●一口食べたら箸を置く
早食いは、食べ過ぎや血糖値の急上昇の原因にもなります。一口食べたら箸を置き、しっかり嚙む習慣をつけましょう。
●ながら食いはしない
仕事をしながら、テレビを見ながらなど、意識が食事以外に向いた状態だと、嚙むことに集中できないので嚙む回数が減ってしまいます。
空腹は修理の時間。少食と断食で体が整う
「少なく食べる習慣」や「まったく食べない習慣」によって、体が大きく変化します。空腹をしっかり感じて暮らすことは、負担をかけ過ぎていた内臓を休ませ、細胞の修復を促進し、長寿遺伝子のスイッチが入るなど、さまざまなメリットがあります。ただし、水だけで行うような断食法は、かえって逆効果になる場合もありますので、適切な方法で取り組むようにしましょう。
無理なく少食にするコツ
まずは1日3食から2食にしてみましょう。どの1食を減らすのでも構いませんが、トライしやすいのは朝食抜きから。本来この時間は体内のサイクルでは「排泄」の時間なので、食事をしないことで排泄機能が高まります。1日2食に慣れたら、最終的には朝はごく軽くで、夕食を抜いた「1日1.5食」のスタイルが理想。夕食を抜くと、就寝を経て翌朝までもっとも長い時間、空腹を保つことができます。空腹に慣れると、朝の目覚めがいい、集中力が高まるといったメリットも感じられるようになるはずです。
無理なく少食にするにも、よく嚙むということはとても大切。よく嚙んで食事をすることで、満腹ホルモンの分泌が促され、少量でも満足できるようになります。つまり「嚙み応えのある穀菜食」にすれば、自然と少食になれるというわけです。
* * *
老化が止まる食事術
監修/山田豊文
宝島社 891円
山田豊文(やまだ・とよふみ)
杏林予防医学研究所所長。日本幼児いきいき育成協会(JALNI)会長。
あらゆる方面から細胞の環境を整えれば、誰でも健康に生きていけるという「細胞環境デザイン学」を提唱し、本来あるべき予防医学と治療医学の啓蒙や指導を行う。2013年6月に「杏林アカデミー」を開校。自ら講師を務める講座を通じて、細胞環境デザイン学を日本に広めていくための人材育成に力を注いでいる。2018年にはJALNIを始動、2022年に現法人名に変更。子どもの健全な育成を目的としたさまざまな活動を全国各地で展開している。おもな著書に『細胞から元気になる食事』(新潮社)、『病気がイヤなら「油」を変えなさい!』(河出書房新社)など。
杏林予防医学研究所
杏林アカデミー
東京開催セミナー[THE“最高の健康”]の詳細はこちらから