文・写真/佐知ゆりこ(海外書き人クラブ/カナダ在住ライター)
ウォーキングが最高に楽しい街。カナダの西海岸沖に浮かぶバンクーバー島南端に位置する古都ビクトリアは、まさにそんな街。
古き良きイギリスの風情を残す街並み、輝く太陽に照らされ鮮やかな色彩を放つ街中の花々、青く広がる空と海。最も気温の高くなる盛夏でも東京の初夏並みの最高気温でカラリとした晴天が続きます。そんな夏の爽やかな風を頬に受けて豊かな自然を感じながら歩けば、目にする全てのものからポジティブなエネルギーをもらえるよう。
この心地よいエクササイズは、地元マダムの若さと美の秘訣。心身ともにリフレッシュできるビクトリアのウォーキングルートをご案内します。
スタート地点は、観光客で賑わうハーバーエリア
ビクトリアの玄関口の一つであるビクトリア・ハーバー。観光客が集まる賑やかなこのエリアは、名門クラッシックホテルの「The Empress(ジ・エンプレス)」、州議事堂の「Legislative Assembly of British Columbia(レジスレイティヴ・アッセンブリー・オブ・ブリティッシュコロンビア)」といったビクトリア様式の建物が港に面して建ち、絵ハガキそのままの風景が広がります。
ウォーキングのスタート地点は、ここハーバーエリアの中心地、ガバメント・ストリートとベルビル・ストリートの交差点。右手にビクトリア・ハーバー、左手に州議事堂を見ながら出発です。
この州議事堂は、若き日のイギリス人建築家フランシス・ラッテンベリーによって設計され1897年に完成したもの。時折、観光馬車が通りかかると周囲に蹄鉄の音が鳴り響き、毎正時には時を知らせるカリヨンの鐘の調べも聞こえます。いかにもヨーロッパらしい風情にここが北米であることを忘れてしまいそう。港にはバグパイプを演奏している人もいて、この街が「イギリスよりイギリスらしい」といわれるのも納得です。
一軒一軒が個性的でおしゃれ。住宅街ウォーキング
港沿いにそのまま進むと観光名所として有名な「フィッシャーマンズワーフ」に着きますが、ここは左折して住宅街を行くのが「地元流」。繁華街のビクトリア・ダウンタウンに隣接する住宅街、ジェームズ・ベイ地区を横切って海辺へ向かいます。
表通りを逸れると観光客の姿はほとんどなく、静かで落ち着いた雰囲気に。海外では住宅地を歩いてその土地の日常の雰囲気を垣間見るのも楽しみの一つです。個人宅や小さなホテルなど、それぞれが個性あふれるおしゃれなデザイン建築がゆったりと立ち並びます。街中に飾られたハンギングフラワーや道路わきの草花が鮮やかな色彩を添えています。
視界が開けると、青い空と水平線が目の前に!
閑静な住宅街を抜けると、目の前に広がるのは遥かなる水平線! ここはこのバンクーバー島の南側の先端で、面しているのはカナダとアメリカの国境である「ファン・デ・フカ海峡」です。一面に広がる青のグラデーションの開放的な美しさに、思わず息をのんでしまいます。
夏のビクトリアの合い言葉は「日射しを楽しみましょう!」。カナダの短く爽やかな夏そのものを味わうように地元の人々があちこちで寛いでいます。
海上の絶景ポイント「ザ・ブレイクウォーター」
ここには海の上を歩くことができる遊歩道があります。その名も、「The Breakwater(ザ・ブレイクウォーター)」。海沿いの道「ダラス・ロード」からファン・デ・フカ海峡にせり出すように伸びるこの防波堤は全長約800メートルもの長さがあり、海に向かって歩く不思議な感覚が味わえます。1916 年築のどっしりとした白い灯台「ブレイクウォーター・ライトハウス」が鎮座するその先端まで行くと、船で沖に出たかのような海景が望めます。
防波堤の先端からの眺めは、絵の具を溶かしたような見事な青のグラデーション。心が洗われるようです。
この周辺の海域は豊かな生態系で知られ、沖には野生のシャチの群れも生息。すぐ眼下にはアザラシやカナダカワウソなどの可愛らしい海洋哺乳類が姿を見せることもしばしばあります。
海沿いの道「ダラス・ロード」は、歩道と自転車道が整備され安全にウォーキングが楽しめます。階段を下れば砂浜のビーチに出ることもできます。好きな景色を探して道沿いを歩いてみるのもよいでしょう。
絶景散歩のエピローグは、名門ホテルのバラ園へ
潮風香る青の絶景を存分に楽しんだら、スタート地点のハーバーエリアに戻ります。絶景ウォーキングの最後に立ち寄りたいのが、冒頭でも触れた、ビクトリアを象徴する建築物の一つでもある1908年開業のクラッシックホテル「ジ・エンプレス」(https://www.fairmont.com/empress-victoria/)の庭園です。
「ジ・エンプレス」の庭園は宿泊客以外にも開放されていて、誰もが憩いのひとときを過ごすことができます。注目は、広々とした美しい芝生の庭園の奥にある小さなバラ園。ホテルの私有地のため地図にも名前が出ていない「名もなきローズガーデン」です。実際に訪れないと辿り着きにくいこの場所、バラ好きにはぜひとも訪れてほしい目的地のひとつです。
比類なき香り高さ。ローマ教皇の名を冠した白バラ
このバラ園には約40年前から少しずつさまざまな種類のバラが植えられてきて、現在見ることができるその種類は約15種。必見は「史上最も香り高いバラ」と名高い「POPE JOHN PAUL II(ヨハネパウロ2世)」という名の白バラです。その清らかな美しさだけでなく、耐病性などの強さも氏の不屈の精神を象徴しているとして世界中のバラ愛好家から人気の高い品種。シトラスを感じさせる強い芳香はまるで香水のよう。
その他、薄紫色の「MOON SHADOW(ムーンシャドウ)」、熱帯の夕焼け空のようなグラデーションカラーの「TAHITIAN SUNSET(タヒチアンサンセット)」、ブーケのような姿で咲く「CRIMSON BOUQUET(クリムゾンブーケ)」など、見ごたえあるユニークな品種が集結しています。
自然の恵みに感謝すれば、心身ともにリフレッシュ
ここビクトリアの地元マダムたちにとって、ウォーキングやジョギング、サイクリングなど美と健康を保つエクササイズは日課のひとつ。颯爽と街歩きを楽しむ女性たちの姿がよく見られます。
歩くことを楽しむ姿からは、身の回りの自然に感謝し共存しながら生活を楽しもうとするこの地のライフスタイルが垣間見えます。どこまでも続く青い空と海、輝く太陽、美しい花々のエネルギーを感じて、心身ともにリフレッシュしてはいかがでしょう。
文・写真/佐知ゆりこ(カナダ在住ライター)
教育移住や海外文化、多様な女性の生き方について雑誌やWebメディアで執筆。noteやTwitterでも情報を発信。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。