履き心地のよさとデザイン性を併せ持ち、足の悩みを持つ女性から高い支持を集めている『ミスキョウコ』の靴。デザイナー兼プロデューサーの木村恭子さんが、外反母趾に悩んでいた母に“おしゃれで快適に歩ける靴を贈りたい”という想いから誕生しました。1995年の創業以来、100万足以上の靴を販売し、2016年には東京・青山に旗艦店をオープン。母娘で訪れるファンも多いといいます。
そんな『ミスキョウコ』のブランドを創ってきた木村恭子さんの素顔を知りたくて、大阪のご自宅を訪問。仕事からプライベートなことまで、お話を伺いました。
1回目は人生の転機になった出来事や靴作りへの想いなど、お仕事の話、2回目は仕事で愛用しているアイテムや仕事の息抜きの方法について、3回目のライフスタイル前編では、趣味や休日の過ごし方などをお届けしました。後編の今回は、インストラクターの資格を取得するほど夢中になっているポーセラーツ(※)の魅力を、実際に作りながらお話しいただきました。
※ポーセラーツ…porcelain(磁器)とart(芸術)を組み合わせた造語。白磁にシールのような転写紙や磁器絵付け用の絵具で絵柄を付けて、高温で焼成して仕上げるハンドクラフト。ポーセリンアートとも呼ばれています。
デザインを考えているときが一番楽しい
――趣味の中で、もっとも夢中になっているのがポーセラーツだそうですね。
今はそうですね。空いた時間があると、レッスンに通ったり、道具も揃えたので、家でも作っています。ポーセラーツは既製の転写紙を白磁に貼るだけで、素敵な作品が作れるので、手軽に始められる趣味だと思います。
――どんな手順で作っていくのですか?
まず、自分が作りたいアイテムの白磁を用意します。カップやお皿などは、食器として日常的に使えるので、初めての人にはいいかもしれませんね。『ミスキョウコ』青山店で催しているワークショップでは、ソープボトルやスプレーボトルを作っています。
それから、自分の好きな絵柄の転写紙を選びます。絵柄を白磁にどう載せていくか、構図を考えながら転写紙を切り取り、水に浸して、絵の付いているシートを台紙から剝がします。そして、白磁に貼り付けていくのですが、「どんなデザインにしようか」、と考えているときが一番楽しいですね。
細かなデザインの見せ方とスキルが向上
――デザインはすぐに思い浮かぶものなのですか?
私は直感で、わりと早くデザインを決めてしまいます。手を動かすのも早いほうで、2時間半のレッスンで、3つのアイテムを仕上げたこともありました。
転写紙は、乾かないうちなら貼り直せるので、位置がずれてしまったら、修正します。大きな失敗がないのも、ポーセラーツのいいところですね。
転写紙を切って貼るだけで、十分に素晴らしい作品になりますが、自分で絵付けをすると、もっとデザインの幅が広がります。
――初期の頃と比べ、上達したと思うところはどこですか?
作品の見せ方として、「ここで柄を切ったほうが、スッキリしてきれいに見えそうだな」などと、細かいディテールまで考えて、デザインができるようになりました。あとは、回数を重ねた分、スキルが上がったと思います。丸くなっているところや、湾曲している部分に、転写紙を貼るのは難しいのですが、うまくできるようになりました。また、塗りのムラもなくなりました。
自分だけのオリジナル作品を作れるのが魅力
――どんな柄やデザインが好きですか?
作るときの気分にもよりますが、幾何学模様や、キラキラしてスタイリッシュな柄が好きですね。ポーセラーツは洋風のイメージですが、和柄もあるんですよ。デザインの種類がとても豊富なので、いろいろと試してみたいです。
――当分、ポーセラーツ熱は続きそうですね。
ええ。ポーセラーツは、同じデザインの転写紙でも、カットの仕方や貼る位置で、見え方が変わり、自分の思うままに創作できるのが楽しいです。難しい技法にも挑戦したいですし、何よりも自分だけのオリジナル作品を作れるのが魅力ですね。
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木村 恭子(きむら・きょうこ)
1968年生まれ、兵庫県出身。貴金属の卸会社に勤務し、母の介護で離職。その後、インドでボランティア活動をする。2000年に『ミスキョウコ』ブランドを発足し、デザイナー、プロデューサー業に携わる。2016年に東京・青山に旗艦店をオープン。高島屋大阪店、あべのハルカス近鉄本店、京王百貨店 新宿店の常設店以外にも、全国の百貨店でポップアップイベントを開催。青山店では、ポーセラーツやフラワーアレンジメントなどのワークショップを開き、講師も務める。
取材・文/北野知美 撮影/奥田珠貴