文・石川真禧照(自動車生活探険家)

トヨタの高級ブランドとしてレクサスが登場したのは1989年(平成元年)、北米市場からはじまった。それまでにない日本メーカーらしい高級車をつくろうという壮大なプロジェクトとしてスタートした。当初はドイツ御三家(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)に販売台数、知名度で負けていたが、日本車らしい丁寧なつくりや経済性、信頼性などが徐々に浸透していった。









この成功で自信をつけ、2005年には日本国内でもレクサスを立ち上げた。日本では高級車に乗りたいが、輸入車は周囲の目があるし、という人や会社が予想外に多く、そうした乗り換え需要などで、徐々に販売台数を伸ばし、高級車としての地位を確立していった。それでもレクサスが本当に高級車として定着するには20年近い年月がかかった。
国産高級車レクサスが定着したことで、トヨタはレクサスに新しい方向性を与えた。それは先進性や自由発想の車をつくることだった。高級車ブランドは、新たに、センチュリーを立ち上げた。




レクサスの新しい方向性の一端が、RZ550e”Fスポーツ”だ。
レクサスRZは電池とモーターだけを動力源とするEV(電気自動車)で、通称BEV(ベヴ)と呼ばれている車種。レクサスとしてはじめての専用モデルとして2023年に発売された。EVには動力源をエンジンとモーターにするハイブリッド(HEV=ヘヴ)、エンジンとモーターだが電池に外部からも充電できるプラグインハイブリッド(PHEV=ピーヘヴ)、エンジンとモーターを搭載するが、エンジンは電池への充電のみで走行はモーター(HEVシリーズ式、日産はe-Power)というのも実用化されている。
動力源として電池+モーターを備えたEVは、実用化の歴史も浅く、改良型も登場している。RZも25年末には、先進技術を満載した新型を投入。このRZの新型はレクサスの先進、革新というこれからの方向性を示す、ひとつのモデルといえる。



新型RZ550e”Fスポーツ”の運転席を見たときに大抵の人は、ハンドルの形状を見て驚く。ハンドルは円型ではなく、左右の手を握る部分しかない。それは航空機の操縦桿のような形状だ。以前、アメリカのテスラが最上級車で採用したことはあったが、国産車で実用化されたのははじめて。
さっそく、運転席に座り、動かしてみる。両手でハンドルの左右を握り、走り出す。最初に曲がり角を曲がる。90度の方向なら、片手が真上にくるところまで動かせば、車は曲がる。直進時の操舵力は重め。切りこむのも重めなので、両手でハンドルを握っていないと不安だ。最初にとまどったのは車庫入れや駐車するときだ。ハンドルはロックからロックまでが1回転なので、ふだんはハンドルを持ちかえることはない。しかし車庫入れのように、切りかえしが必要なときは、ハンドルのどこを持っていいのか迷う。ここには慣れが必要だった。内がけハンドルなんてできない。ハンドルは常に9時15分の位置で持たなければならない。
このハンドルは通常のハンドル操舵のように歯車などを使わず、電子信号により動かすステアバイワイヤシステムを採用したことで可能になった。



レクサスは過去にもESというセダンで、ドアミラーに小型カメラを用い、その映像を室内の画面に映し出すというデジタルアウターミラーを採用したことがあった。
今回のステアバイワイヤ専用ハンドルの採用を見ていると、従来のラグジュアリーブランドから、先進性に特化したプレミアムブランドを目指す初期段階なのかもしれない。
例えば、縦列駐車の時、車両を真横に動かすとか、空を飛ぶとか。レクサスの次の一手が楽しみになってきた。
レクサス/RZ550e”Fスポーツ”
| 全長×全幅×全高 | 4805×1895×1635mm |
| ホイールベース | 2850mm |
| 車両重量 | 2120kg |
| モーター | 交流同期 |
| 最高出力 | フロント227ps/リア227ps |
| 最大トルク | フロント268Nm/リア268Nm |
| 駆動形式 | 4輪駆動 |
| 電費/航続距離 | 144Wh/km/582km |
| 使用燃料/容量 | リチウムイオン電池/ 76.96kWh |
| ミッション形式 | 電気式無段変速(eAxle) |
| サスペンション形式 | 前:ストラット/後:ダブルウィッシュボーン |
| ブレーキ形式 | 前:ベンチレーテッドディスク/後:ベンチレーテッドディスク |
| 乗員定員 | 5名 |
| 車両価格(税込) | 950万円 |
| 問い合わせ先 | 0800-500-5577 |

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。
撮影/萩原文博





