文・石川真禧照(自動車生活探険家)

ドライブモードは5モード。ノーマルモードでも操舵力は重く、乗り心地も硬め。サーキットのような路面向き。動力性能は0→100km/h加速は4秒台で、スーパースポーツカーレベル。

トヨタの高級ブランドとしてレクサスが登場したのは1989年(平成元年)、北米市場からはじまった。それまでにない日本メーカーらしい高級車をつくろうという壮大なプロジェクトとしてスタートした。当初はドイツ御三家(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)に販売台数、知名度で負けていたが、日本車らしい丁寧なつくりや経済性、信頼性などが徐々に浸透していった。

EV専用のプラットフォームはさらに改善され、走行安定性を向上させている。
Fスポーツは、空気抵抗を減らす付加装備が装着されている。
レクサス車としては初となる電動化技術をハンドル操舵にも採用したことで、ハンドルをグルグル回す必要がなくなり、このようなハンドル形状が可能になった。メーターはすごく見易い。
レクサス車といえばスピンドルグリルが特徴だが、動力源の冷却を必要としないので、グリルも必要ない。そこでボディ形状でスピンドルデザインを表現した。
ホイールベース2850mmはノア/ヴォクシーやクラウンクロスオーバーと同一寸法。
一文字のテールランプは、最新のレクサス車の特徴。当然だが、バンパー下にマフラーなどはない。
ハンドルの上半分がないのがわかる。前席の座面を高めにセットすると、頭がドア上縁に当たってしまう。ナナメ前は、三角マドがなく視界は良い。
後席の着座は低め。床はフラットなので大人3人掛けも可能。ドアウインドは全開できる。
荷室は奥行、左右幅とも1m近くある。床下には深さ11~30cmのサブスペースもあり、ここに充電ケーブルなどを収納できる。後席背もたれは4対6で前倒しできる。

この成功で自信をつけ、2005年には日本国内でもレクサスを立ち上げた。日本では高級車に乗りたいが、輸入車は周囲の目があるし、という人や会社が予想外に多く、そうした乗り換え需要などで、徐々に販売台数を伸ばし、高級車としての地位を確立していった。それでもレクサスが本当に高級車として定着するには20年近い年月がかかった。

国産高級車レクサスが定着したことで、トヨタはレクサスに新しい方向性を与えた。それは先進性や自由発想の車をつくることだった。高級車ブランドは、新たに、センチュリーを立ち上げた。

Fスポーツは4輪駆動。モーターは前後とも227ps(システム出力は407.8ps)を発生。総電力は76.96kWh。航続距離は582km(WLTCモード)だが、試乗車は受け取ったときに、100%充電状態で、可能走行距離は377kmを表示していた。
充電口は右前フェンダーに200V用。
リッドにFスポーツのエムブレム。
左前フェンダーに急速充電用が設けられている。

レクサスの新しい方向性の一端が、RZ550e”Fスポーツ”だ。

レクサスRZは電池とモーターだけを動力源とするEV(電気自動車)で、通称BEV(ベヴ)と呼ばれている車種。レクサスとしてはじめての専用モデルとして2023年に発売された。EVには動力源をエンジンとモーターにするハイブリッド(HEV=ヘヴ)、エンジンとモーターだが電池に外部からも充電できるプラグインハイブリッド(PHEV=ピーヘヴ)、エンジンとモーターを搭載するが、エンジンは電池への充電のみで走行はモーター(HEVシリーズ式、日産はe-Power)というのも実用化されている。

動力源として電池+モーターを備えたEVは、実用化の歴史も浅く、改良型も登場している。RZも25年末には、先進技術を満載した新型を投入。このRZの新型はレクサスの先進、革新というこれからの方向性を示す、ひとつのモデルといえる。

ハンドルは9時15分の位置で握る。Fスポーツはこれが標準なので、ディーラーでは注文をした人には必ず実車を見てもらうそうだ。
慣れを要するのはマニュアルシフトモードを選択したとき。パドルレバーが小さく、パッシングやウォッシャーレバーの近くにあるので誤操作しがち。
シフトは手前上のダイヤルを回し、R(リバース)やD(ドライブ)を選ぶ。

新型RZ550e”Fスポーツ”の運転席を見たときに大抵の人は、ハンドルの形状を見て驚く。ハンドルは円型ではなく、左右の手を握る部分しかない。それは航空機の操縦桿のような形状だ。以前、アメリカのテスラが最上級車で採用したことはあったが、国産車で実用化されたのははじめて。

さっそく、運転席に座り、動かしてみる。両手でハンドルの左右を握り、走り出す。最初に曲がり角を曲がる。90度の方向なら、片手が真上にくるところまで動かせば、車は曲がる。直進時の操舵力は重め。切りこむのも重めなので、両手でハンドルを握っていないと不安だ。最初にとまどったのは車庫入れや駐車するときだ。ハンドルはロックからロックまでが1回転なので、ふだんはハンドルを持ちかえることはない。しかし車庫入れのように、切りかえしが必要なときは、ハンドルのどこを持っていいのか迷う。ここには慣れが必要だった。内がけハンドルなんてできない。ハンドルは常に9時15分の位置で持たなければならない。

このハンドルは通常のハンドル操舵のように歯車などを使わず、電子信号により動かすステアバイワイヤシステムを採用したことで可能になった。

頭上の圧迫感をなくすため、天井はガラスルーフを採用。
遮光はシェードをやめ、断熱や紫外線99%カットのLowEガラスで、瞬時に調光できる機能を備える。
EVはとくに空力が性能に影響するので、各社、CD値を減らす工夫が行われている。Fスポーツ用空力パーツは、テストコースでレーシングドライバーと協力して実用化されている。

レクサスは過去にもESというセダンで、ドアミラーに小型カメラを用い、その映像を室内の画面に映し出すというデジタルアウターミラーを採用したことがあった。

今回のステアバイワイヤ専用ハンドルの採用を見ていると、従来のラグジュアリーブランドから、先進性に特化したプレミアムブランドを目指す初期段階なのかもしれない。

例えば、縦列駐車の時、車両を真横に動かすとか、空を飛ぶとか。レクサスの次の一手が楽しみになってきた。

レクサス/RZ550e”Fスポーツ”

全長×全幅×全高4805×1895×1635mm
ホイールベース2850mm
車両重量2120kg
モーター交流同期
最高出力フロント227ps/リア227ps
最大トルクフロント268Nm/リア268Nm
駆動形式4輪駆動
電費/航続距離144Wh/km/582km   
使用燃料/容量                リチウムイオン電池/ 76.96kWh
ミッション形式電気式無段変速(eAxle)       
サスペンション形式前:ストラット/後:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ形式前:ベンチレーテッドディスク/後:ベンチレーテッドディスク   
乗員定員5名
車両価格(税込)950万円
問い合わせ先0800-500-5577

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

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