伝統と革新が調和する時計、それがパテック フィリップの真骨頂です。2024年10月、同社は25年ぶりとなる新コレクション「Cubitus(キュビタス)」3リファレンスを発表しました。丸みを帯びた角型ケースに、水平方向のエンボス模様を備えた文字盤。クラシカルでありながら現代的な佇まいは、成熟した大人のための新しい選択肢となりそうです。
文/土田貴史
至高の時計芸術と現代デザインの融合
Cubitusの特徴は、これまでにない独創的なケースデザインにあります。正方形を基本としながら、角を丸く処理し、さらに八角形の要素を加えることで、幾何学的でありながら柔らかな印象を実現しています。
ケースは風防側からムーブメントを組み込む二体構造で、両サイドには特徴的な結合部を配置。時計の内部構造までデザインの一部として昇華させています。また全モデルに共通する45ミリメートルのケースは、手首に心地よくフィットする薄型設計です。
シリーズの頂点に立つのが、プラチナケースの「Ref.5822P」です。Cubitus誕生を記念するこのモデルには、パテック フィリップならではの技術の粋を集めました。12時位置には2窓式の大型日付表示を配置し、7時位置には月の満ち欠けと曜日を表示。これらの表示は、毎晩午前0時に、僅か18ミリ秒という短い時間で、瞬間的に日付が切り替わります。
この画期的な機構には6つの特許が出願されており、複雑機構の王者としての力量が遺憾なく発揮されています。ネイビーブルーの文字盤には、水平方向のエンボス模様が施され、光の角度によって様々な表情を見せてくれます。
ローズゴールドとステンレスを組み合わせたツートーンの「Ref.5821/1AR」は、上質な華やかさを求める方に応える一本です。18金ローズゴールドをベゼルとブレスレットの中央部分に贅沢に配し、ステンレススチールとの絶妙なコントラストを生み出しています。文字盤には深みのあるブルーを採用し、ホワイト夜光付きのローズゴールド製バトン型インデックスと針が、気品ある輝きを放ちます。
仕上げにも細やかな工夫が施され、ポリッシュ仕上げと縦サテン仕上げを交互に配することで、光の角度によって様々な表情を見せる、洗練された佇まいを実現しています。3時位置の日付表示窓には、ローズゴールドの別付けフレームを施すなど、細部へのこだわりも見事です。
一方、オールステンレスの「Ref.5821/1A」は、現代的なスポーティさを追求したモデルです。文字盤には、落ち着きのあるオリーブグリーンを採用。水平方向のエンボス加工とソレイユ仕上げにより、光の加減で深みと明るさが変化する、豊かな表情を実現しています。
インデックスと針には、昼夜を問わず高い視認性を確保する夜光材が施された18金ホワイトゴールドを採用。3時位置の日付表示窓には、ホワイトゴールドの別付けフレームを配し、スポーティでありながら品位ある仕上がりとなっています。ブレスレットには、ロック可能な調整システムを備えた折り畳み式バックルを採用し、確かな装着感と快適な着け心地を両立しています。
パテック フィリップは1976年発表の「ノーチラス」、1997年発表の「アクアノート」で、スポーティながら品位を備えた時計作りを確立してきました。新コレクション「Cubitus」は、その伝統を現代的に解釈しながら、まったく新しい美学を提示しています。30メートルの防水性能を確保しながら、スリムなケースフォルムを実現するなど、実用性への配慮も忘れていません。
腕時計史に燦然と輝く1ページを加えた「Cubitus」。パテック フィリップ25年ぶりの新コレクションは、同社が探求し続ける「永遠の美」の、現代における最適解となりそうです。