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慢性の頭痛や月経痛、むくみ、だるさなど原因不明の不調を訴える女性が増えています。薬を飲んでも改善しないその不調の原因は病気ではなく、実は栄養失調なんだとか。飽食の現代において栄養失調とは驚きですが、極端な食事の偏りにより、からだが最適な状態を保てないことも栄養失調なのです。

医学的根拠に基づいた食事法「栄養療法」で、延べ500人以上の患者を救ってきた梶の木内科医院の梶尚志院長による『え、私って、栄養失調だったの? その不調は病気でなく状態です!』(みらいパブリッシング)から、栄養とからだのしくみについて紹介します。知っているようで知らないことや誤解も多く、目からうろこが落ちること必至です。

文/梶尚志

人間のからだは栄養素でできている

人間のからだって何でできているんだろう? と考えたことはありませんか?

うーん、深く考え出すと難しく思えますよね。私たちのからだは約三十七兆個の細胞が組み合わさってできています。「細胞」と言われて思い出すのは、学校の理科の授業で、四角い壁の中に丸い粒が1つあって、その周りを何かが動いている、みたいな感じでしょうか。そのイメージは植物の細胞で人間はちょっと違いますが、イメージとしては同じようなものです。

細胞がとにかくものすごい量組み合わされて、「人間」というものを造っています。ではその細胞は何から造られるのでしょうか。お気づきの方もいますね、そう「栄養素」です。タンパク質や脂質といった栄養素が材料となって、私たちのからだの細胞を造り、維持しています。脳、皮膚、内臓、筋肉、血液……これらすべてがもとをたどれば、自分が食べたものから摂った栄養素でできているということです。栄養素が元気いっぱいの細胞を造ってくれれば、みなさんの心もからだも元気になり、健康が保たれるのです。

足りない栄養は人それぞれ違う?

では、それなりに質の良い食材を、毎日バランス良く摂りさえすれば「最高の細胞」が手に入るのか、というと、実はそう簡単な話ではありません。人には個人差があるように、栄養状態も人によって違います。生まれ持ったからだの状態や年齢、生活環境などが違うわけなので当然です。ですから、「最高に調子が良い状態」にするためには、まず、自分のからだの栄養状態を知ることが大事です。この考え方は、栄養療法の大もと、「分子整合栄養医学」によるもので、特別な血液検査をすることにより、個人の栄養状態を正確に把握することができます。

するとたいてい、からだに不調を抱えている人は、いくつもの栄養素が足りていなかったり、偏っていたりすることがわかります。今その人に必要な栄養がわかるので、バランスの良い食事はもちろんですが、足りない栄養素に焦点を当てて、必要な食事指導を行います。時にはサプリメントの力を借りることもあります。そうすると数か月先には、みるみる細胞が元気になってからだの不調も改善していくのです。

「体調が悪い」は、実は「かくれ栄養失調」だった

体調が悪いと一言でいっても、個人個人で症状の出方や感じ方は違います。「頭が痛い」にしろ「お腹が痛い」にしろ、シクシク痛むのか、ズキズキ痛むのか、立ち上がれないほど痛いのか、気になる程度なのか……。そしてその原因ももちろん大きく違います。

何かしらの原因がある、例えば
・胃の中に、「ピロリ菌」が住んでいて胃潰瘍になって胃が痛くなる
・タバコの吸いすぎが原因で慢性の肺の病気になって呼吸が苦しくなる
・心臓の血管がつまって心筋梗塞を起こして胸が痛くなる

など、明らかに内臓や器官に異常が起きて症状が出る「病気」があります。その一方で、例えば「頭痛」、「めまい」、「肌荒れ」、「倦怠感」、「ひどい月経痛」、「不眠」、「不妊症」など、症状が起きているのに、原因が見つからない場合もあります。このように検査をしても診断できない、説明できない場合は、「病気」ではなく、いわゆるからだの調子が「悪い状態」であると私は考えています。その「悪い状態」の原因は「栄養失調」なのです。

栄養失調をあと押しする「ヤバイ!」あなたのその食事

写真はイメージです

忙しくて食事への意識がおろそかになっている方、逆に健康意識の高い方、どちらでもなくそこそこ気にかけている方、食事に対する意識は人それぞれですが、この本を手に取ってくださった皆さんは、きっと何かしら自分の食事や栄養状態について考えていらっしゃるはずです。例えば忙しいなりに、どこかで聞いた良さそうな食事法を試してみたり、コンビニで見つけたからだに良さそうな成分入りの食品を購入してみたり、自分なりの工夫をされているのではないかと思います。

しかしそのひと工夫、本当に正しいのでしょうか。実は、栄養医学の観点からみると、 皆さんの常識が、時には大変危険な食生活を招くことがあります。そしてその危険な食生活を良いと誤解して熱心に実践している方たちが多くいらっしゃることも事実です。
では、どんな食事が「ヤバイ!」のでしょうか?

野菜中心・菜食主義が一番健康に良い!?

よくお昼どき、コンビニからサラダひとつを抱えて颯爽と出てくる女性を見かけますが、彼女の食事がサラダだけではありませんように、と心の中で祈っています。野菜にはビタミンやミネラルといった美と健康を保つ栄養素が豊富に含まれている他、からだを錆びさせない抗酸化物質も含むので、凄く大切なものであることは事実です。ですが、野菜だけではかなり栄養の偏りが出てしまうのはわかりますね? しかし、からだに良い栄養素がたくさん摂れるわけなので、それはそれでも良いのでは? と思われた方、ここがとっても大切です。よく聞いてください。栄養素はそれ単独では、からだのためにはたらくことができないのです。栄養素がそれぞれ持っている力を発揮するためには、栄養素同士の連携が必要です。ビタミンやミネラル自体が何かになるわけではなく、彼らの役割はあくまでサポート役。野菜が持っていないタンパク質をエネルギーに変換する際、手助けをする役目なので、主役のタンパク質がないとおつとめできずに終わってしまうのです。

フルーツはビタミンの宝庫でしょ!

確かにフルーツにも多くのビタミンやミネラルといった栄養素が含まれていますが、だからといって過剰に食べていると、皆さんが一番恐れている体重増加につながります。フルーツには果糖とブドウ糖という糖質が含まれ、多すぎると、「もったいないから溜めておこう!」と、からだが判断して中性脂肪として蓄積されます。見た目はあんなにさわやかなのに、食べると血糖値もぐーんと上がり、肥満のもとの脂肪分として蓄えられ、それが肝臓に溜まると脂肪肝になってしまいます。脂肪肝になると、肝臓の機能が弱まって、最悪の場合、肝硬変から肝臓癌を発症された方を私は経験しています。お酒も飲まないのに健康診断で肝臓の機能が引っかかる方の多くに、果物好きの方が多いことを覚えておいてくださいね。一日の活動が始まる朝に少量だけ食べるのがフルーツの一番効果的な食べ方でしょう。

腸活のためにヨーグルトは欠かせません!

最近、テレビでも乳酸菌飲料のCMをよく見かけます。その影響からか、「腸活のためにヨーグルト!」とばかりにヨーグルトを買い求める方が多いように思います。果たして本当にヨーグルトは腸に良いのでしょうか? 先に結論をいうと、決して腸に良いものとは言い切れません。乳製品である普通のヨーグルトには、カゼインという成分が含まれています。このカゼインは小麦粉に含まれるグルテンと同じように腸管粘膜を傷つけて、リーキーガット症候群の原因になります。リーキーガット症候群とは、カゼインやグルテンなどさまざまな影響で腸管粘膜が傷ついて、本来、腸の壁をとおり抜けてはいけないものまで腸のバリアをとおり抜けてしまう状態のことです。その結果、何が起こるかというと、とおり抜けてはいけない、例えば十分消化されていないタンパク質や炎症の原因になる物質が、体内に入り込んで、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患や難病にも指定される潰瘍性大腸炎などの重篤な炎症性疾患を引き起こしてしまうのです。最近、女性にこの症候群の方が多いので、ちょっと難しいですが、ぜひこれを機に覚えてください。また、カゼインはグルテンと同様に、脳内の麻薬中枢にくっついて、ヨーグルトが食べたくて食べたくて仕方がない、ヨーグルト中毒を引き起こします。一般的にあまり知られていませんが、最近では野菜や果物といった植物由来の乳酸菌の仲間や大豆を使用したヨーグルトも製品化されていますので、そういった代替食品に切り替えれば、理想的な腸活ができますよ。

脂は苦手! さっぱりしたものが好きです

「太るので脂ものは控えています」とか、「胃もたれするので」といった理由で、脂肪分を控える女性の方が多いと思います。これは女性のからだの健康にとって、大変間違った、もったいない考え方です。そもそも、脂肪分で太るわけではありません。太る原因は、炭水化物です。まず脂肪分を語る前に、大前提として知っていただきたいのが、「脂」は「脂」でもその主成分が違えば、からだに良くも悪くもなるということです。脂は脂でも良い脂を積極的に摂ることによって、女性ホルモンの分泌とはたらきを良くし、また、細胞レベルから健康になることができるのです。

*  *  *

え、私って、栄養失調だったの?
その不調は病気でなく状態です!

著者/梶尚志
みらいパブリッシング 1,540円

梶尚志(かじ・たかし)
梶の木内科医院院長。栄養療法実践医。
1989年、富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業。2000年、岐阜県可児市に梶の木内科医院開設。年間約5万人の患者を診察する中で、通常の診察では解決できない不調が多いことに危機感を感じ、改善策を模索。分子整合栄養医学との出会いをきっかけに、不調の原因が栄養状態にあることを確信する。以来、栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行い、不調の改善に取り組んでいる。

 

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