文・石川真禧照(自動車生活探険家)

12気筒エンジンは高回転、ハイパワーだけではなく、60km/h、1400回転からでも加速する粘り強さも備えている。

自動車用のエンジン型式を表す言葉として気筒数がある。エンジンのシリンダーの数だ。単気筒からはじまり、2、3、4、5、6気筒が一般的だが、その上となると8、10、12気筒がある。1930年代には16気筒というエンジンを搭載した車もあった。米国、キャデラックの高級車だった。気筒数が多ければ、製作工程も多くなり、高価になる。馬力も多くなるので、8気筒以上は高級車に搭載されることが多い。

フロントエンジンのフェラーリとしてデザインを大幅に新しくした。バンパー上の細長い部分にヘッドライトやセンサーを埋めこんだ。ボンネットはフェンダーまで回りこんでいる。
ボンネットはエンジンフードと一体となり、大きく開く。全体のフォルムは1960年代後半の「365GTB/4デイトナ」をオマージュしている。
リアゲートウインドからテールランプまでを黒いスクリーンで一体化しているのがデザイン的に新しい。バンパー下はカーボンファイバーが用いられている。
マフラーは左右2組の2本出しマフラー。形状は新しい長方形デザインを採用している。

最近、少なくなったエンジンに12気筒がある。以前はメルセデスベンツ、BMW、ジャガーも搭載していたが、生産効率や環境問題もあり生産を中止している。今ではロールスロイス、アストンマーティン、ランボルギーニ、フェラーリがわずかに12気筒エンジンを製造し、搭載しているぐらいだ。なかでもフェラーリは12気筒エンジンへのこだわりが強いブランドとして知られている。

フェラーリ12チリンドリはそのこだわりの最新モデルだ。

メーター部分と助手席前のダッシュボードは同じ形状をしており、左右対称になっている。
いかにもホールドのよさそうなシート。リサイクルポリエステルをふくむ素材を使用するなど、サステナブル素材も採用している。 
リアゲートは天井まで大きく開く。荷室も内張りが成されている。
トノボードは取り外すことができ、長尺物も収納できる。
前席後方の空間はトラベルケースなどを固定できるフラットな空間と、荷室を仕切るボードが立っている。

フェラーリと12気筒エンジンの結びつきは1947年にさかのぼる。フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリが初めて自らの名を冠したレーシングカー「125S」のエンジンが排気量1.5Lの12気筒エンジンだった。車名の「125」は1気筒当たりの排気量で、以来、この命名の方程式は2010年代まで用いられている。

レーシングカーからスタートしたフェラーリの12気筒エンジンは、やがて市販車にも搭載されるようになる。1950年代に入り、レースでの好成績を知った富豪や貴族が、同じエンジンを搭載した車に公道でも乗りたいという声があがり、1954年に12気筒エンジンを搭載したスポーツカーを市販したのだ。車体の前に12気筒エンジンを搭載した車は、著名な自動車デザイナーたちが美しい車体をデザインし、高性能、高級なスポーツカーとして、少数台数が市販された。いまでも50~60年代のフェラーリスポーツカーは高額で取り引きされている。

12気筒エンジンはウインド下までもぐりこんでいる。タイヤはムキ出しでフェンダー内張りなどない。基本的にレーシングカーなのだ。

フロント12気筒エンジンのフェラーリは1994年まで生産されたが、突然、エンジンを車体中央に置いたミッドシップに代わった。2012年に再びフロントエンジンが復活している。このあたりからミッドシップではなく、フロントエンジンの12気筒へのこだわりが強くなっていく。それは車名に表れた。2012年「F12」はフロントエンジンの12気筒、2017年「812」は800馬力の12気筒車。そして2024年には「12チリンドリ」。チリンドリはイタリア語で「気筒」を表す。その名も「フェラーリ12気筒」になったのだ。

最新の12気筒エンジンは排気量6496cc、830馬力。フロントエンジンの後輪駆動で、最高速340km/h。こう書くと、手に届きそうにないスーパーカーと思うかもしれないが、実際にシートに座り動かしてみると、全幅2m以上の車幅に気をつければ、意外に走り易い車ではある。

最新のフェラーリのATシフトは、かつてのマニュアルシフトレバーパターンをイメージする形状を採用。左下がR、中央上がA/下がM、右上がLモード。
メーターの中央は10000回転までのエンジン回転計。車速は左下にデジタル表示。
インパネの中央部には空調や音響用調整パネル。
助手席前のインパネにも横長の液晶モニターが埋めこまれており、エンジン回転や車速を目で見ることができる。

ハンドルに内蔵されたスターターボタンを押すと、12気筒、6.5Lエンジンが爆音と共に始動する。これは人前ではちょっと気恥ずかしい。変速機は8速ATだが、シフトは一見マニュアルミッションのようなパターンを採用し、ギアシフトの感覚をイメージさせる。

A(ATモード)を選択し、走り出すと12気筒エンジンのスムーズさが体験できる。その粘りは驚異的ともいえる。時速70キロ、エンジン回転1000回転でもDレンジでユルユルと街中を流せるのだ。エンジンがギクシャクすることもない。もちろん状況さえ許せば、そこからアクセルをグイッと踏みつけ全開加速すれば、12気筒エンジンは9000回転まで一気に上昇し、時速100キロまでは4秒足らずで達する。そのとき12気筒エンジンは狂暴とも言える音と加速で周囲を圧倒する。

ハンドルスポークに内蔵されたモードスイッチ。WET/SPORT/RACE/CTOFF/ESCOFFが選択できる。最初は「SPORT」で走行していたが、ハンドル操作は重く、乗り心地も硬かった。「WET」にするとそれが解消。最近のフェラーリは、「WET」モードがノーマルモードらしい。

エンジンルームを見れば、12気筒エンジンは、奥のほうに赤いヘッドカバーで低く搭載されている。かつてエンツォ・フェラーリは「12気筒エンジン以外のストラダーレ(市販車)はフェラーリと呼ばない」と公言したというが、いまでもフェラーリを買うということは、12気筒エンジンを買うことだ、と年季の入ったフェラリスタは思っているに違いない。

フェラーリ/12チリンドリ 

全長×全幅×全高4733×2176×1292mm
ホイールベース2700mm
車両重量1560kg
エンジン6496cc
最高出力830ps/ 9250rpm
最大トルク678Nm/7250rpm
駆動形式後輪駆動
燃料消費率6.45km/L(WLTC)
使用燃料/容量無鉛ハイオクガソリン/ 92L
ミッション形式8速AT
サスペンション形式前:ダブルウイッシュボーン 後:ダブルウイッシュボーン
ブレーキ形式前:ベンチレーテッドディスク後:ベンチレーテッドディスク
乗員定員2名
車両価格(税込)5674万円
問い合わせ先 https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/ferrari-12cilindri

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

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