サライプレミアムで、２記事にわたって特集した日本美術のオークション「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE（以下、「廻」）ですが、出品される全178点のうち、注目の６作品をピックアップして詳しくご紹介。作品の魅力や見どころを掘り下げて解説します。
「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE が８月24日から開催 ｜珠玉の178点と出会える年に１度の特別なオークションの記事はこちら（https://serai.jp/premium/1196071）
加島美術でこの道25年の凄腕目利きに聞く「美術作品購入の基本」と「審美眼を養う方法」の記事はこちら（https://serai.jp/premium/1196133）
注目作品３：円山應挙「藤花狗子図」
作品情報
円山應挙「藤花狗子図」 絹本 着色 1782年（天明2年）
サイズ（本紙寸法）：91×38cm ／サイズ（全体寸法）：173×49cm
最低落札価格：￥3,800,000
円山應挙は18世紀の京都画壇を代表する絵師で、写生の祖と呼ばれています。彼は古典的な絵画様式や先例を模倣する「粉本主義」を脱し、自然を正確かつ詳細に写し取る技法を確立しました。その写実的な様式は現在に至るまで日本画の世界で連綿と受け継がれています。
風景から動植物まであらゆる画題を自在に描きこなした應挙ですが、とりわけ現在に至るまで人気が高いのが、愛らしい子犬をモチーフとした作品群です。「藤花狗子図」で描かれた子犬たちも、精緻な観察力と卓越した技術で動きや骨格を正確に写し取り、見る者の心を温かくするような無邪気な愛らしさを巧みに表現しています。
一方、画面上方では、藤の織りなすような枝ぶりを迷いなく一筆で描ききっています。藤の花や子犬の繊細なタッチとは対照的な大胆な筆さばきですが、違和感なく画面全体に馴染んでいることにも驚かされます。こうした多彩かつ自在な筆遣いもまた、本作品の大きな魅力であるといってよいでしょう。
なお、本作は落款の「天明2年」（1782年）と書き込まれた年記から、正確な制作年代も判明しています。應挙49歳となる、絵師としてもっとも円熟した時期に描かれた逸品です。
注目作品４：加山又造「牡丹」
作品情報
加山又造「牡丹」 絹本 金彩 水墨 共シール 額装 加山哲也鑑定書 1970年代後半～80年代
サイズ（本紙寸法）：32×41cm ／サイズ（全体寸法）：54×63cm
最低落札価格：￥6,800,000
牡丹は古来より日本や中国で「花の王」と称される高貴な花であり、その美しさと豪華さから、数多くの芸術家が題材として取り上げてきました。加山又造もこの花の持つ象徴性と美しさに魅了された画家のひとりで、生涯を通して牡丹を画題とした作品を積極的に手掛けました。
一方、加山は1970年代頃から水墨画の表現技法に傾倒するようになります。画業のなかで常に斬新な表現を求めた加山にとって、水墨画は、深い精神性や内面的な世界を追求するための格好の手段でした。本作品で大輪を咲かせる墨牡丹は、円熟期を迎えた画家が1970年代の後半頃から手掛けた一連の「牡丹」のなかのひとつであろうと考えられます。静謐さの中に蠱惑的な香りも感じられ、加山ならではの独創的な魅力に満ちた意欲作といえるでしょう。
「牡丹図は、古来、名品が多い。近代でも、速水御舟、村上華岳に牡丹の名作がある」と生前の加山は語っていますが、彼の墨牡丹もまた、現在の美術市場で横山大観の「富士」などと並ぶ名物図柄として、非常に人気を博しています。「廻」Vol.19では、出品にあたって額縁も新調されました。ぜひ、下見会で加山の描いた墨牡丹の繊細かつ深遠な輝きを体感してみてはいかがでしょうか。
白隠慧鶴「百壽」、棟方志功「二菩薩釈迦十大弟子」【「美術品入札会 廻 -MEGURU-」注目作品～その１～】へのリンクはこちら（https://serai.jp/premium/1196204）
「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE 基本情報
■全体スケジュール
下見会： 2024年８月24日（土）〜 ９月１日（日）（来場予約不要、入場無料）
入札締切日：2024年９月１日（日）18時
開札日： 2024年９月３日（火）15時
時間：10:00〜18:00
下見会会場：加島美術（東京都中央区京橋3-3-2）
出品数： 178点
公式サイト：https://meguru-auction.jp
■下見会詳細
会期：2024年８月24日（土）〜 ９月１日（日）
時間：10:00〜18:00 入場無料/会期中無休
会場：加島美術（東京都中央区京橋3-3-2）
出品数：178点
■オリジナルカタログも無料配布中
全出品作品が掲載されたオリジナルカタログを希望者に無料配布中。
カタログ申し込みフォーム：https://www.meguru-auction.jp/Inquiry/
取材・文／齋藤 久嗣 写真／五十嵐 美弥
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