ここ数年、美術オークションが盛況を迎えていますが、なかでも国内有数の日本美術オークションとして知られるのが、東京のギャラリー・加島美術とBSフジが主催する「美術品入札会 廻 -MEGURU-」(以下「廻」)です。特に8月24日から始まる今回の「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALEは、同社が年に4回開催する「廻」のなかで、もっともプレミアムな美術作品が数多く登場するスペシャルイベントと位置づけられています。そこで、開催直前に「廻」の責任者を務める営業部部長の武井智宏さんに詳しくお話をお聞きしました。

初心者にも参加しやすい、開かれたオークションを目指して

加島美術で「廻」がはじめて開催されたのは、2019年夏。日本美術に特化して、美術品を売りたい人、買いたい人をつなぐ「マーケットプレイス」として誕生しました。出品されるのは、近世近代の物故作家の作品を中心に、日本画や洋画、墨蹟、工芸、浮世絵まで、毎回多彩なラインナップ。江戸後期に活躍した円山應挙や伊藤若冲といった近世の大物から、近代を代表する横山大観や速水御舟など、さまざまな大家の作品が登場します。

加島美術 営業部 部長 武井智宏さん。古美術にかかわって25年になる。「廻」では一貫して出品作品の審査にかかわるなど、加島美術の屋台骨を支える大ベテランだ。

「スタートした頃は作品集めに苦労したこともありました。年に1度開催するのがやっとでした」と語る武井さん。しかし、「その後、お客様からの要望をもとに改善を重ねた結果、今では年に4回、一度に500~600点が集まって、日本全国からお客様が参加してくださるイベントに成長させることができました」と胸を張ります。

第1回から18回まで、歴代の「廻」作品カタログ。出品数が充実するにつれ、サイズも分厚く、リッチな装丁で発行されるようになった。

では、「廻」はなぜこれほど美術愛好家から支持されるようになったのでしょうか? その理由のひとつとして、「廻」が徹底して初心者に配慮した仕組みづくりを目指したことが挙げられます。

「廻」の特徴は、入札によって最高額を提示した人が落札する形式をとっていること。一般的なアートオークションのように参加者同士が競り合う「競り上がり」方式ではないので、初心者でも落ち着いて参加できるだけでなく、誰でも落札できるチャンスがあるのです。

“幸せを運んでくる”という意味合いを込めて、第1回から紅色の入札箱が使われている。

「美術ギャラリーって、どうしても敷居が高くて入りづらいな……と思われがちなので、「廻」では最低入札価格が数万円クラスの作品から数多く準備するように心がけています。落札手数料も業界最安値となる13.2%に設定しています。国内なら16%以上、海外では20%以上かかるオークションも珍しくないので、気軽に参加していただけると思います。おかげで、始めた当初に比べると20代、30代の若い方にも気軽に参加していただけるようになりました」と武井さんは言います。

また、オークションの直前に作品をチェックするための下見会も、「廻」では9日間も確保されています。武井さんは、「通常のオークションでは、2~3日が基本ですが、「廻」ではじっくり考えていただくために、下見期間を1週間以上とるようにしました。もちろん、気に入った作品があればその場で入札していただくこともできます」と教えてくれました。

下見会では実際に日本間を模したギャラリー内に展示される作品もあり、部屋に飾るイメージでチェックすることができる。

下見会の期間中は、常に複数のスタッフがギャラリー内に待機。日本美術を知り尽くした精鋭揃いで、武井さんも「ぜひ、気軽に話しかけてください。作品の来歴やエピソードといった作品情報から入札の方法、疑問点まで、気になったことは何でもお話いただければ嬉しいです」と話してくれました。

また、下見会ではガラスケース越しではなく、直に作品を見られるだけでなく、自由に写真撮影も可能。茶道具やうつわなどの工芸作品は手にとって確かめることもできます。ある意味、美術館以上の鑑賞体験を得られるので、美術作品をみる「目」を鍛えたい人にも良い機会となりそうです。

スペースの都合上すべての出品作品の展示が難しいため、ギャラリー内に展示されていない出品作品については、リクエストすれば、その都度展示して見せてもらえるとのこと。ぜひ気軽にスタッフに声をかけてほしい。
やきものや茶道具については、手にとって感触を確かめることもできる。

第19回目の「廻」は、夏のお祭り的なイベントに

ところで、加島美術では昨年から夏の「廻」に特に力を入れており、今回のMAIN SALEは“年に1度の特別なお祭り”と位置づけたスペシャルなオークションとなっています。

「通常の「廻」では500点以上出品されますが、今回はあえて優品、逸品に限定して178点まで絞り込みました。今回は数十万円の価格帯からのスタートなので少しハードルが上がってしまうかもしれませんが、美術館に収蔵されるようなクオリティの作品を集めています」

出品予定の作品リストを見せていただくと、確かに近年人気の大家の作品がズラリ。円山應挙や伊藤若冲といった18世紀京都の巨匠たちから、酒井抱一や鈴木其一といったきらびやかな琳派の画家たち。近代日本画では、日本美術院の系譜に連なる横山大観、下村観山、速水御舟、片岡球子あたりまで幅広く人気画家が揃います。藤田嗣治の貴重な素描をはじめとする洋画や、草間彌生など現代作家にも良いものが並んでいました。

「特に今回は、私たちスタッフが目を見張るような逸品も数多くあります。今回を逃すと、あと数年~数十年もマーケットには出てこないのではないか……と思われるような貴重な作品も出ていますので、ぜひ楽しみにしてください」と武井さん。

速水御舟「黄菊」絹本着色 /「廻」Vol.19 出品作。夭折の天才画家が遺した、数少ない作品。その稀少性から高値になることが多く、今回の入札会でも多くの美術ファンに注目されそうだ。
加山又造「牡丹」/「廻」Vol.19出品作。金泥と水墨で描かれた“墨牡丹”は、加山が特に好んだ代表的な画題。新調されたシルバーの額装とよくマッチしている。

「廻」Vol.19が始まる8月下旬は、お盆休みの行楽疲れなども残る時期ですが、だからこそ、一幅の掛け軸を愛でて心の隙間を満たすにはちょうどいい機会かもしれません。武井さんは「下見会にふらっと遊びに来ていただけるだけでもOKです。ぜひ、サライプレミアム読者の方には、「廻」をきっかけとして、本物の日本美術を間近に堪能していただけると嬉しいです」とお勧めしてくれました。

サライプレミアムでは、今回の「廻」Vol.19に出品される主な注目作を、8月中旬頃から随時紹介していきます。ぜひ、「美術品入札会 廻 -MEGURU-」でいち早く芸術の秋を先取りしてみてはいかがでしょうか。

「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE 基本情報

過去の「廻」下見会風景写真。

■スケジュール
下見会: 2024年8月24日(土)〜 9月1日(日)(来場予約不要、入場無料)
入札締切日:2024年9月1日(日)18時
開札日: 2024年9月3日(火)15時
時間:10:00〜18:00
下見会会場:加島美術(東京都中央区京橋3-3-2)
出品数: 178点
公式サイト:https://meguru-auction.jp
(※出品作品は8/16公開)

■下見会詳細
会期:2024年8月24日(土)〜 9月1日(日)
時間:10:00〜18:00 入場無料/会期中無休
会場:加島美術(東京都中央区京橋3-3-2)
出品数:178点

■オリジナルカタログも無料配布中
全出品作品が掲載されたオリジナルカタログを希望者に無料配布中。
カタログ申し込みフォーム:https://www.meguru-auction.jp/Inquiry/

取材・文/齋藤 久嗣 写真/五十嵐 美弥

 

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