サライプレミアムで、2記事にわたって紹介した日本美術のオークション「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE(以下、「廻」)ですが、出品される全178点のうち、注目の6作品をピックアップして詳しくご紹介。作品の魅力や見どころを掘り下げて解説します。

「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE が8月24日から開催 |珠玉の178点と出会える年に1度の特別なオークションの記事はこちら(https://serai.jp/premium/1196071

加島美術でこの道25年の凄腕目利きに聞く「美術作品購入の基本」と「審美眼を養う方法」の記事はこちら(https://serai.jp/premium/1196133

注目作品1:白隠慧鶴「百壽」

作品情報
白隠慧鶴「百壽」 紙本  1760年代後半
サイズ(本紙寸法):130×56cm /サイズ(全体寸法):205×72cm
最低落札価格:¥8,000,000

白隠慧鶴(はくいんえかく)は、江戸時代中期に生まれた禅僧で、臨済宗中興の祖として知られます。出家後、厳しい修行を経て諸国を遍歴しながら布教につとめ、その過程で禅の教えを説いた絵を数多く描きました。生涯で遺した禅画はのべ1万点にのぼるともいわれ、「廻」Vol.19でも本作「百壽」をはじめ15作品が出品されます。その自由で壮大な画面は、日本だけでなく、近年欧米でも人気を博しています。

白隠が描いたのは釈迦や達磨、菩薩など仏教の尊像にとどまらず、七福神といった民間信仰を題材にしたものや、動物を擬人化した作品など、非常に多岐にわたります。とりわけこの「百壽」はユニークかつ稀少な墨蹟として知られ、タイトルにもある通り、百通りの書体で「壽」が一字一字気持ちを込めて書かれており、見る者の心を強く揺さぶります。

本作は制作年も判明しており、白隠の最晩年となる明和4年(1767年)に書かれました。数十年に及ぶ厳しい禅の修行を重ねた白隠だからこそ、80歳を過ぎてもなお、このように力強いエネルギーを放つ作品を生み出せたのでしょう。深い精神性と自由闊達な創造性が融合した、白隠が生涯の最後に残した最高傑作のひとつです。

注目作品2:棟方志功「二菩薩釈迦十大弟子」から羅睺羅、摩訶迦葉

左:羅睺羅の柵、右:摩訶迦葉の柵

作品情報
・棟方志功「二菩薩釈迦十大弟子」から羅睺羅(らごら)の柵 木版画 額装 棟方巴里爾鑑定証 1939年に板木制作、摺年不明
サイズ(本紙寸法):96×37cm /サイズ(全体寸法):149×60cm
最低落札価格:¥3,200,000

・棟方志功「二菩薩釈迦十大弟子」から摩訶迦葉(まかかしょう)の柵 木版画 共板 額装 1939年に板木制作、1960年摺り
サイズ(本紙寸法):96×38cm /サイズ(全体寸法):119×59cm
最低落札価格:¥3,200,000

本作品は、棟方志功による宗教人物像の代名詞であり、「第28回ヴェネツィア・ビエンナーレ」(1956年)で国際版画大賞に輝くなど、“世界のムナカタ”の名声を決定づけた記念碑的作品として知られます。昨年、東京国立近代美術館など国内数館を巡回し、好評を博した大規模な回顧展「棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」でも大きくクローズアップされた作品のひとつでした。

民藝運動との出会いを通じて宗教的な主題に取り組み始めた志功は、昭和14年(1939年)に奈良・興福寺の須菩提像(すぼだいぞう)に着想を得て本作品を制作しました。普賢菩薩、文殊菩薩に加え、釈迦の10名の高弟(目犍連、舎利弗、優婆離、須菩提、阿難陀、羅睺羅、魔訶迦葉、阿那律、富楼那、迦旃延)を彫った12枚揃いで制作され、いずれも太く力強い輪郭線で、12尊それぞれの個性を際立たせた巧みな構図や配色が見事です。驚くことに、志功は本作を下絵なしで短期間のうちに一気呵成に彫り上げたといいます。版木に顔を近づけ、一心不乱に鑿(のみ)をふるう若き巨匠の姿が思い浮かぶようです。

美術市場では近年とても人気のある稀少な作品です。12枚すべて揃った状態でオークションに出品されることはほとんどなく、そのなかの1枚でも出品されれば高値が付く傾向にあります。過去18回開催された「廻」ですが、「二菩薩釈迦十大弟子」が出品されるのは今回がはじめて。本稿で取り上げた羅睺羅、摩訶迦葉のほかに、軸装の優婆離(うばり)を加えた3作品が出品され、落札価格はそれぞれ高額になることが予想されます。

「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE 基本情報

過去の「廻」下見会風景写真

■全体スケジュール
下見会: 2024年8月24日(土)〜 9月1日(日)(来場予約不要、入場無料)
入札締切日:2024年9月1日(日)18時
開札日: 2024年9月3日(火)15時
時間:10:00〜18:00
下見会会場:加島美術(東京都中央区京橋3-3-2)
出品数: 178点
公式サイト:https://meguru-auction.jp

■下見会詳細
会期:2024年8月24日(土)〜 9月1日(日)
時間:10:00〜18:00 入場無料/会期中無休
会場:加島美術(東京都中央区京橋3-3-2)
出品数:178点

■オリジナルカタログも無料配布中
全出品作品が掲載されたオリジナルカタログを希望者に無料配布中。
カタログ申し込みフォーム:https://www.meguru-auction.jp/Inquiry/

取材・文/齋藤 久嗣 写真/五十嵐 美弥

 

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