前回、8月24日から始まる東京のギャラリー・加島美術とBSフジが主催する「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE(以下、「廻」)に先立って、同社で美術品仕入の責任者を務める営業部 部長の武井智宏さんに「廻」の概要を伺いました。第2回となる今回は、加島美術で美術作品を見続けて四半世紀となる業界屈指の目利きでもある武井さんに、初心者が美術作品を購入する際のアドバイスや、審美眼の鍛え方について教えていただきました。

前回の記事、「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE が8月24日から開催 |珠玉の178点と出会える年に1度の特別なオークションへのリンクはこちら(https://serai.jp/premium/1196071

意外に難しくない、美術品の保管方法

美術オークションに興味があっても、購入後のアフターケアなどが難しそうで、なんとなく二の足を踏んでいる、という人は多いかもしれません。特に日本美術は「紙」や「絹」といった繊細な素材を扱うので、高温多湿な日本の住環境では保存が難しいのでは……というイメージもあります。そこで、武井さんに実際のところを聞いてみました。

加島美術 営業部 部長 武井智宏さん。このインタビューの翌日も、遠方のクライアントからの要請で、蔵に眠る美術品数百点の査定を行うなど、同社の屋台骨として多忙な日々を過ごしている。

すると、意外にも「実は、そんなに難しいことはないんですよ」と武井さん。「掛け軸はすべて専用の桐箱に収め、押入れなどに収納しておけば十分です。桐箪笥と同じように、桐は調湿機能、恒温機能にとても優れているので、温湿度をある程度自動調整してくれますから。この桐箱ひとつあれば保管は問題ないと考えていただいてOKです。また、室内に掛ける時ですが、昔の住環境ならすきま風が入り込んだり、虫が飛んできたり……といったリスクもありましたが、現代の住宅であれば、直射日光が当たらないようにしていただければ問題ありません」とのことでした。

掛け軸は一般的に専用の桐箱に収めて保管される。

さらに、「桐箱は収納性にも優れているんですよ。掛け軸は丸めて収納するので、1作品あたり、ほんのわずかな場所しか必要ないんです。このラックを見ていただくとわかりますが、何十作品もの掛け軸でも、この程度のスペースに収まってしまうんです」と、実際に同社で「廻」に出品される作品が収められた作品ラックを指さしながら教えてくれました。

日本美術は、わずかなスペースがあれば、かなりの数の作品を効率よく収納できる。
やきものや茶道具などもコンパクトに収納することが可能。

また、加島美術では落札後の修理やメンテナンスについても承っているとのこと。「落札後、5cmだけ掛け軸の丈を詰めたい」「軸装ではなく、額装へと変更したい」など、さまざまな要望に柔軟に対応してくれます。

「お客様がどのように飾って楽しみたいのか、まずはご相談いただければと思います。補修やシミ抜き、額装仕立てへの変更まで、各分野で信頼できる職人との繋がりがありますので、いかようにも対応が可能です。また、表装や額装についての総合的なアドバイスもさせていただきます。もし入札前に合わせてご相談いただければ、修理や仕立て直しにかかる概算費用もお伝えできますから、入札の予算感が立てやすくなるかもしれませんね」

「廻」での入札価格やタイミングの決め方は?

では、初心者は入札会にあたってどのように入札価格を決めればいいのでしょうか? 「廻」では、すべての出品作品に最低入札価格が決められていますが、狙い通り落札するためには、実際のところどれくらいの金額が必要なのか勘所がわからず、不安に思う人も多いかもしれません。

インタビューでは、「とにかく困ったことやわからないことがあれば、気軽にスタッフに聞いてみてほしい」と、初心者や入門者に寄り添う姿勢を強調されていたのが印象的だった。

すると武井さんは、「そんな時も、ぜひ下見会にお越しいただいて、私たちスタッフにお声がけください。その作品の市場でのおおよその相場価格から、勝負になりそうな予想価格帯まで、参加者の公平性を損なわない限りでのアドバイスをさせていただきます。下見会の後半になると、各作品に対するお客様の注目度合いもわかってくるので、この作品は人気がありそうだからちょっと踏ん張って金額を積み増したほうがいいかもしれません……といった助言も可能です。極端な話、少しでも何か疑問に思ったことがあれば、何でもスタッフにお聞きいただくのが一番だと思います」と語ってくれました。

入札のタイミングは人それぞれではあるものの、下見会に来てその場で入札して帰る人は少ないようです。たいていは一度持ち帰り、熟考したうえで入札される方が多いとのこと。「やっぱり入札は心理戦的な要素もありますね。下見期間中、ずっと動向を探りながら、最後の最後で入札価格を決める方が多いようです」とのことでした。

審美眼を養う近道は、「作品を所有すること」

さらに、年間数万点の古美術を見続けてきた武井さんに、美術作品を見る「目」を鍛えるにはどうすればいいのかお聞きしてみました。

「もちろん、より多く見るのが一番勉強になるとは思います。ある日突然、アートを見る目が開眼するわけではないので。そのひとつの方法として、作品を持つことには意義があると思います。自分で購入すれば、もっとその作品について調べたくなりますから。たとえば、横山大観の富士山の絵を「廻」で落札したとして、この作品はいつ頃描かれたものなんだろう、どんな時代背景のなかで何を思いながらこの風景を描いたのだろう、といった興味がどんどん膨らんでくると思います。これが重要なんです。すると、今度は大観の仲間だった菱田春草や下村観山などを買ってみようか……といった具合に、自分の興味関心に沿ったコレクションが自然とできあがっていくなかで、審美眼も鍛えられてくるんです」

円山應挙「藤花狗子図」/「廻」Vol.19出品作。若い人にも「かわいい」と評判の應挙の犬。一筆で一気呵成に描かれた藤の枝の迷いのない描線にも目を奪われる。

なるほど、アートを深く見るためにも、「買う」という行為がもっとも近道であるということですね。最後に、武井さんからサライプレミアムの読者向けにメッセージをいただきました。

「美術愛好家の皆様が、「廻」を通して、日本美術に興味を深めていただくための一助になればいいなと思っています。「廻」では、毎回私たちが責任をもってすべての出品希望作品をチェックし、逸品だけをカタログに掲載していますので、どうか安心してご参加ください。そのなかで、本当に気に入ったものがあれば、ぜひ落札して楽しんでいただければ嬉しいです」

「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE 基本情報

過去の「廻」下見会風景写真。

■スケジュール
下見会: 2024年8月24日(土)〜 9月1日(日)(来場予約不要、入場無料)
入札締切日:2024年9月1日(日)18時
開札日: 2024年9月3日(火)15時
時間:10:00〜18:00
下見会会場:加島美術(東京都中央区京橋3-3-2)
出品数: 178点
公式サイト:https://meguru-auction.jp
(※出品作品は8/16公開)

「美術品入札会 廻 -MEGURU-」Vol.19 MAIN SALE が8月24日から開催 |珠玉の178点と出会える年に1度の特別なオークションの記事はこちら(https://serai.jp/premium/1196071

■オリジナルカタログも無料配布中
全出品作品が掲載されたオリジナルカタログを希望者に無料配布中。
カタログ申し込みフォーム:https://www.meguru-auction.jp/Inquiry/

取材・文/齋藤 久嗣 写真/五十嵐 美弥

 

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