
純チタンの3倍の硬度を持つ特殊チタン合金に、新潟の鎚起職人が手作業で立体的な鎚目模様を刻み込みます。朧銀色に輝くケースと銅色のアクセントが織りなす美しさは、まさに現代に蘇る日本の工芸品。カシオ計算機が世界限定500本で発売した『MRG-B5000HT』は、G-SHOCKの卓越したタフネスと伝統美が融合した、“究極”と形容するにふさわしいモデルです。
文/土田貴史
最上位シリーズに込められた日本のものづくり精神
「MR-G」シリーズは、G-SHOCKの最上位に位置するプレミアムラインで、日本のものづくりの精神と革新的な技術を融合させたモデルを展開しています。耐衝撃性を保ちながらも細部まで緻密に作り上げられており、G-SHOCKの技術力を結集したフラッグシップモデルとして位置づけられています。
今回の新製品は、G-SHOCK初号機を受け継ぐ角型フォルム「5000」シリーズがベース。その最大の特徴は、ベゼルとバンドに日本の伝統技法である「鎚起(ついき)」を施している点です。鎚起とは、金属板を鎚で打ち出して立体感のある形状を浮き上がらせる鍛造技術。古くから日本の金属工芸で用いられてきた技法です。


この技法により、重厚な中にも美しさを表現した独特の質感を実現しています。丹念に打ち込まれた鎚目は、たがねの先端形状や鎚をふるう力加減により、一つひとつが唯一無二の微細な表情を生み出しています。
本製品では、純チタンの約3倍の硬度を持つ日本で開発されたチタン合金「DAT55G」を採用。この高強度素材に鎚起を施すことで、美しさと耐久性を両立させています。また、ケースには刀装具や装身具に用いられる独特の光沢を持つ銀灰色の「朧銀(おぼろぎん)」の色合いをDLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理で表現しています。さらに、ビスやボタンには深みのある輝きの銅(あかがね)色をポイントとして配し、全体に華やかさを添えています。
今回の製品で鎚起を手がけたのは、新潟県三条市出身の鎚起職人、渡邉和也氏(1978年生まれ)です。2001年に長岡造形大学工芸デザインコースを卒業後、銅器製作の老舗である玉川堂に入社し、鎚起銅器の伝統技術を学びました。そして2005年に独立し、鍛工舎を開設しています。第43回日本現代工芸美術展新人賞、第47回日本現代工芸美術展現代工芸賞など多数受賞している実力派の職人です。また2010年より個展を中心に活動し、様々なジャンルとの協働を通じて現代の工芸の在り方を模索しています。

『MRG-B5000HT』は2025年8月8日に世界限定500本で発売されました。G-SHOCKの卓越したタフネスと日本の伝統美を融合させた、まさに最上位シリーズMR-Gの名にふさわしい力強いモデルとして注目を集めています。

https://www.casio.com/jp/watches/gshock/product.MRG-B5000HT-1/