髪が美しく豊かな女性はそれだけで魅力的なものです。そんな美しい髪を維持するには手間もお金もかかってしまうと思っている人も多いでしょう。しかし、ヘアケアの記事編集に携わってきた美容ジャーナリストで毛髪診断士でもある伊熊奈美さんによると、だれもが無理なくできて、体にやさしく、それでいて素敵な髪と褒められる、そんな白髪ケアの方法があるそうです。
そこで今回は、伊熊さんの著書『いい白髪ケア、やばい白髪ケア』から、年齢を経るとともに増してくるヘアケアの重要性についてご紹介します。
髪はいくつになっても「女性の命」です。髪に自信を持つことで、自分にも自信をつけませんか。
文/伊熊奈美
年齢を重ねるほど、髪はあなたの美意識そのもの
「見た目の7割は髪で決まる」という言葉を女性誌などでよく見かけます。それほど顔の額縁である髪型、髪の状態が重要ということですが、年齢を重ねるほどその比率がジワリと上がっていくような気がします。
それは、肌と髪のバランスに関係があります。
年をとればとるほど、肌は透明感が薄れ、くすみやすくなってきます。顔色がくすむと、いいことは何もないような気がしますが、ひとつだけうれしいことがあります。ジュエリーがぐっと肌映えするようになることです。
私はファッション誌に携わっているにもかかわらず、昔から服はおしゃれに見えるものを安く買うタイプでした。H&Mもなく、ユニクロもメジャーでなかった頃は、自分のワードローブの半分は「しまむら」でしたし、婚約指輪すら「それより旅行を!」と断った現実的な人間です。
でも、40歳になる頃、同じ年齢の女性誌編集者が手元につけていたダイヤモンドのファッションリングがあまりにまぶしい輝きを放っていて、彼女の手元がとても素敵に見えました。その場でちょっと借りてみると、子供がまだ小さくてネイルが素のままだったにもかかわらず、私の黒く節ばんだ指先(私はかなりの地黒です)が、驚くほど美しく見えたのです。それはまるでイタリアのバカンス好きなマダムのよう!単なる地黒に年齢ぐすみが加わった自分の肌が、です。
と、前置きが長くなりましたが、大人にとって艶やかで美しい髪は、そんなジュエリーに似ています。若ければ、仮に髪がパサパサで傷んでいても、発光するようなみずみずしい肌とのアンバランスさが逆におしゃれでかわいく見えます。全体が白髪のように明るいシルバーヘアや、ダメージ感があるドライな質感ですら「あえて」に見える、若さの特権です。
40代、50代、そして60代になって肌のハリや透明感が失われているところに、同じようにパサパサと白茶けて、白髪が不規則に交じった髪を持ってきたらどうでしょう。白髪とパサつきがくすんだ肌と完全にシンクロしてフィットしてしまい、いとも簡単に、貧相なおばさんができ上がります。
大人のツヤ美髪は、自信を与えてくれる自前のジュエリー
では、肌は少々くすんでいるけれど、ツヤがあって、ボリュームのある髪を持ってきたら……? 肌と髪のアンバランスさで若い人が逆にかわいくなったように、大人も頭から全身が輝きのオーラに包まれて一気に素敵なマダムと化します。
同窓会でひとりだけ時が止まっている人は、もしかしたら何かの美容医療をやっているかもしれませんが、同時に髪も美しいはずです。
その大切な“自前のジュエリー”にどんな輝きを持たせるかの選択肢は、昔に比べてずっと増えましたし、身近になりました。白髪染めといっても、ホームカラーですら、最近では「明るい白髪染め」が流行になっていて、昔のようにただのっぺりとした暗い色だけではなくなってきています。
でもやはりハイスピードで増えていく白髪に合わせて染め続けていると、大人の髪は脆く、髪の内部成分が抜けて空洞化します。するとどんなにトリートメントをしても、すぐに色が抜けてしまうようになりますし、頭皮の問題で、ある日から突然染められなくなることだってあります。
それは私たちの“自前のジュエリー“に輝きがなくなるタイムアウトでもあるのです。その先にウイッグがあるとはいっても、やっぱり自前の喜びにはかないません。長い目で、自分が続けられる白髪ケアを見つけることが、自前のジュエリーを死守するために急がれます。
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『いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(伊熊奈美 著)
小学館
伊熊奈美(いくま・なみ)
美容ジャーナリスト。日本毛髪科学協会 毛髪診断士・認定講師、国際毛髪皮膚科学研究所 毛髪技能士。1972年静岡県浜松市生まれ。地元タウン誌の編集記者、女性誌編集部の美容担当などを経て、フリーランスに。以来20年以上、「女性のリアルな生活に活かせること」をモットーに、スキンケア、ヘアメイクなど、見た目づくりから医療分野まで幅広く企画・取材。特に毛髪科学分野とヘアケアに精通し、雑誌、新聞、WEB媒体にて執筆中。今までに約2万点以上の化粧品や美容関連アイテムに触れてきた目利きとしても信頼を得ている。講演活動も行う。