「花粉症」と聞いて、皆さんが思い浮かべる季節のほとんどが“春”なのではないでしょうか? 実際に春先になるとさまざまなメディアで花粉症が取り上げられ、ドラッグストアなどでも対策グッズが数多く並びます。
しかし、実は秋にも花粉を飛散する植物があり、8月下旬から10月に花粉症症状が現れるという人が全体の約3割もいることが、クラシエ薬品株式会社が行なった実態調査(※1)で明らかになりました。
一般的に秋ごろに現れる花粉症は「秋の花粉症」と呼ばれています。秋の花粉症はブタクサのような雑草が代表例で、春の花粉症の基本症状に加え、秋特有の症状も発症することが特徴とのこと。今回は調査結果とともに、たえ子耳鼻咽喉科めまいクリニックの伊藤妙子先生に秋の花粉症の特徴、対策方法を伺いました。
約3人に1人が秋の花粉症を経験
まず、秋に花粉症の症状を感じたことがあるかどうかを聞きました。すると、全体の約3割が秋に花粉症の症状を感じたことがあると回答しました。
性別・年代別で見ると、男女ともに20代が最も秋の花粉症の症状を感じておらず、30代で最も症状を感じていることがわかりました。
また、30代以降で「感じたことがある」と回答した方の割合を見ると、男性は比較的高い数値を維持しているのに対して、女性は徐々に減少する結果となりました。
秋の花粉症の症状は鼻や目の症状が多いも、秋特有の症状もランクイン
秋に花粉症の症状を感じたことがあると回答した方に、具体的にどのような症状を感じたかと尋ねたところ、「鼻水」が最も多い回答となりました。次いで、「目の痒み」「鼻詰まり」が続くことから、秋にも春の花粉症の基本症状と同様の症状を感じている方が多い様子がうかがえます。
一方で、「喉のイガイガ」や「咳」といった風邪のような症状や、肌の痒みを感じる方が存在することから、秋の花粉症特有の症状を感じている方も一定数いることがわかる結果となりました。
風邪と間違えやすい「秋の花粉症」の特徴とは? 伊藤妙子先生による解説
「秋の花粉症」の特徴と春の花粉症との違い
花粉といえばスギやヒノキといった印象が強く、春に悩まされる症状だと思っている方も多いのではないでしょうか。花粉は春以外にも、初夏はイネ科、秋はキク科が飛散し、冬は春の花粉の飛散が始まるため1年中注意が必要です。
秋の花粉は主にキク科のブタクサ・ヨモギ、アサ科のカナムグラが飛散しています。これらは、野原や河川敷といった身近な場所に生えており、背丈も約2メートルとスギやヒノキといった春の花粉と比較して低いため、近づくだけで花粉を吸いこんでしまう可能性があります。
また、秋の花粉は粒子が細かいため、春の花粉では鼻粘膜でとどまっていた花粉も、鼻を通り抜け気管支にまで侵入してしまいます。そのため、春の花粉では感じることのなかった喉の痛みや咳の症状も現れます。さらに、夏の紫外線でダメージを受けた肌に花粉が触れることで顔の皮膚に痒みや赤みを発症するのも秋の花粉症の特徴です。
風邪との見分け方
夏から秋にかけての季節の変わり目は、咳や鼻水といった風邪の症状も現れやすくなります。花粉症と風邪の症状は似ていますが、花粉症は晴れた日に強い症状が現れる、自然に治癒しないといった特徴があります。また、鼻と目の症状で見分けることができます。
鼻の症状として、花粉症の場合はアレルギー反応が原因のため鼻水が無色透明で水のようにサラサラとしており、連続してくしゃみをしてしまいます。一方で風邪の場合ウイルスの鼻粘膜への付着が原因のため、粘度の高い黄色の鼻水であり、くしゃみの頻度は高くありません。また目の痒みは風邪では現れにくい症状のため、鼻の症状に加え、目の症状を感じた場合は、花粉症である可能性が高いと言えるでしょう。
おすすめの予防法・対処法
・花粉症の原因となる場所に近づかない
ブタクサやヨモギといった秋の花粉は背丈が低く、飛散範囲も狭いためあらかじめ近づかないことが一番の予防法です。通勤や散歩で無意識に花粉を取り込んでいる可能性もあるので外出時に雑草の多いところは避けるなどをしてみてはいかがでしょうか。
・自宅に花粉を持ち込まない
花粉は粒子が細かいため、衣服のほかにも皮膚や髪にも付着しています。自宅に入る前に頭から足にかけて花粉を落としましょう。その際に強く払ってしまうと空気中に花粉が舞ってしまうため、ウェットシートや粘着カーペットクリーナーなどで優しく取り除きましょう。
「秋の花粉症」におすすめの漢方薬
<水っぽい鼻水に悩む方向けの漢方薬>
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
「小青竜湯」は、「水(すい)」によって冷えた体の部分を温めながら水分代謝を促す作用があり、鼻水(鼻汁)、くしゃみなどの鼻症状を抑えます。
水のような鼻水(鼻汁)や痰(たん)、くしゃみ、鼻づまり、咳などの症状があるとき、かぜやアレルギー性鼻炎などのときによく処方されます。また、花粉症の治療にも使われているほか、鼻炎、気管支炎、気管支喘息(ぜんそく)などにも用いられます。
<鼻づまりで悩む方向けの漢方薬>
葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
「葛根湯加川芎辛夷」は、体を温める「葛根湯」をベースにした処方で、「川芎」と「辛夷」を配合した処方です。鼻粘膜の血液循環や浮腫を改善して、鼻づまりを鎮めます。鼻づまり、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎の症状のある方に用いられる処方です。
<鼻づまりやちくのう症でお悩みの方向けの漢方薬>
辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
鼻腔内に黄色い鼻汁が流れる、ひどい時には生臭いにおいを伴う、鼻がつまるなどのちくのう症の症状におすすめなのが「辛夷清肺湯」です。
「辛夷清肺湯」は、こもった熱を発散させて鼻の炎症を鎮めて、患部で発生する膿を抑えることで鼻通りを良くします。
また、呼吸器を潤す作用もあるため鼻の乾燥感が強い方に向いていて、鼻づまりの強い方の症状に効果を発揮します。
※1:調査概要
○調査対象:全国の20代~70代の男女200名(有効回答数)
○調査期間:2023年8月23日~2023年8月24日
○調査方法:インターネットアンケート/クラシエ調べ(クロス・マーケティング QiQUMOを利用した調査)
文/ふじのあやこ