
ベルギー王室御用達のフラワーアーティスト、ダニエル・オスト氏の展覧会「ダニエル・オスト in 鎌倉 覚園寺の秋をいける」が、2026年11月12日(木)から17日(火)までの6日間、鎌倉の名刹・覚園寺にて開催されます。主催はダニエル・オスト実行委員会。境内に移築された江戸時代の藁葺き農家を舞台に、鎌倉の山々で集めた落葉や木の実、枝を素材とした約30点のインスタレーションが立ち現れます。境内をゆっくり回遊し、花の芸術を心行くまで堪能してみてはいかがでしょうか。
文/土田貴史
鎌倉の自然が彫刻に。落葉と枝が織りなす造形美
覚園寺の境内で繰り広げられるのは、切り花を用いた従来の花のしつらえとは一線を画す試みです。鎌倉の山々から集められた落葉や木の実、枝——秋の自然そのものが素材となり、オスト氏の手によって建築的なスケールを持つ彫刻へと生まれ変わります。それは花という概念の枠を超え、自然の力が確かな形を得た芸術と言うべきものでしょう。
一つの作品に用いる素材を求めて900キロを走り、十分の一ミリの狂いも許さない針金の扱いに徹する。師ペーター・クルフス氏のもとで培われたこの技術への執念は、しかし完成した作品の前では跡形もなく消え去ります。見る者の目に映るのは、技術ではなく美そのもの。技術を極めた先に技術が消えることこそ、オスト氏が追い求めてきた境地です。
竹工芸の人間国宝・藤塚松星氏との協働をはじめ、日本の伝統技術との対話を40年にわたり重ねてきたオスト氏。花が最も美しい瞬間だけでなく、朽ちてゆく姿にも美を見出そうとするその眼差しは、儚さのなかに永遠を刻もうとする人間の根源的な願いに触れています。800年の祈りを伝える覚園寺という舞台は、その哲学が結晶する場としてまたとない場所といえるでしょう。

「花は生きた彫刻である」。花の建築家の哲学と評価
1955年、ベルギー・セントニクラースに生まれたダニエル・オスト氏は、ベルギー王室御用達の地位を持ち、CBS Newsから「世界をリードするフラワーデザイナー」と称される人物です。フィリップ国王(1999年)、ローラン王子(2003年)のロイヤルウェディングの装飾をはじめ、王室の慶事を幾度も手掛けてきました。近年ではシャネルやルイ・ヴィトン、カルティエ、ロレックス、デルヴォーといったラグジュアリーメゾンのフローラルパートナーも務めています。

「アーティスト」と称されることを、彼は避けると言います。自らの肩書に選ぶのは、フロリストでもフルーリストでもない、古いフランドル語の一語「bloembinder(花を結ぶ人)」。“花は装飾ではなく、生きた彫刻である”という信念のもとに生み出される造形は、これまでの花の概念を超え、見る者を魅了してやみません。米ニューヨーク・タイムズは「彼をフラワーデザイナーと呼ぶのは、アニー・リーボヴィッツを写真屋と呼ぶようなもの」と評し、建築家の隈研吾氏は「彼の作品を見ると、建築家としてのキャリアを捨てたくなる」と語っています。2015年には、花の芸術家として旭日小綬章を受章しました。
東西を結ぶ「The Bridge」。800年の古刹が舞台となる意味
そんなオスト氏と日本との縁は、1985年に遡ります。初めて日本を訪れた彼は、花のたましいと深く結びついた生け花の世界に衝撃を受けました。以来、生け花の大家・栗崎曻氏に師事し、東洋の自然観と精神性を創作の根幹に据えるようになります。100回を超える来日を重ね、西洋の装飾的な美と東洋の精神性を併せ持つ独自の表現に到達したその姿勢から、彼は「The Bridge」と呼ばれるようになりました。
※栗崎氏の「崎」は、正しくはタツサキです。
会場となる覚園寺は、建保6年(1218年)に鎌倉幕府二代執権・北条義時が薬師堂を建立したことに始まる名刹です。本堂には重要文化財の薬師如来坐像が祀られ、800年にわたる祈りの歴史を今に伝えています。そして展覧会のメイン会場となるのは、江戸時代の1706年に建てられ、名主を代々つとめた農家(旧内海家)。1981年に境内へ移築されたこの古民家は、日本人の原風景ともいえる佇まいを今に残しています。


京都の重要文化財・杉本家をはじめ、世界遺産の仁和寺、東寺、金閣寺、そして出雲大社、明治神宮鎮座百年祭と、オスト氏はこれまで日本の聖地で幾度も展覧会を重ね、そのたびに大きな反響を呼んできました。累計動員数は二十万人を超えています。今回も歴史ある空間に花の芸術が息づくことで、失われゆく日本の建築文化に新たな光が当てられることになるでしょう。入場料と協賛金の一部は覚園寺への奉納として納められ、この比類ない文化遺産の護持にも役立てられます。


会期:2026年11月12日(木)~17日(火) 6日間
開場時間:午前10時~午後6時30分(午後4時30分よりライトアップ ※最終入場は午後6時まで)
会場:覚園寺(神奈川県鎌倉市二階堂421番地) 江戸時代の古民家(旧内海家)ほか境内一帯
主催:ダニエル・オスト実行委員会
後援:公益財団法人鎌倉市芸術文化振興財団
入場料:前売券4000円/当日券4500円(拝観料含む・税込、中学生未満無料)
アクセス:鎌倉駅東口バス乗り場より鎌倉宮(大塔宮)行き(鎌20系統)バスで終点「大塔宮」下車、徒歩約10分
問い合わせ:ダニエル・オスト実行委員会 TEL 03-6278-8145 FAX 03-6278-8146 E-mail info@danielost.jp
イープラスでの申し込みはこちら https://eplus.jp/danielost_kamakura/
※チケットはイープラスのほか、メール・FAX・電話によるお申込み、ファミリーマート店内Famiポートでも取り扱っています。





