文・石川真禧照(自動車生活探険家)

最新の320dツーリング。全長4720mm、ホイールベース2850mmは、4ドアセダンの320dと同じ。ボディもフロントドアまではセダン、ツーリング共通だ。

普段使いの車はどのような車が良いのか考えてみた。平日は買い物や日常の用事の足として使用する。休日は家族や友人たちと遊びに出かける。条件はさまざまだが、便利なのは、人数がある程度乗れ、荷物も積め、運転しやすいこと。遠出をする人は、燃費も気になるところだ。

仕事柄、軽自動車から大型リムジン、ミニバン、SUVなど、さまざまな車種を試乗しているが、そのときに、自分が所有するとしたら、どのような使い方をするだろうか、ということは常に考えている。

最近試乗した車の中で、日常使いなら、この車、1台でかなり楽しい生活を送れそう、と思ったのが、「BMW 320d xDrive ツーリング Mスポーツ」だ。

ボディの幅広化に伴ないキドニーグリルは左右方向に拡大され、上下方向は薄くなった。ヘッドライトは昼間でも点灯するデイタイムランニングライト機能を有するLEDを採用。
テールランプは細く、水平な形状とし、テールパイプ径を90mmの大径サイズを使用、スポーティさを演出。

ドイツのBMW社が生産、販売するミドルクラスの乗用車だが、その形はリアまで天井が延びているステーションワゴンだ。BMWの3シリーズは、1975年にドイツ本国で初代モデルが誕生している。日本に実車が輸入されたのは1970年代後半から。このときは4ドアセダンだった。このセダンをベースにステーションワゴンがつくられたのは1982年に登場した2代目から。以来、3シリーズには必ずステーションワゴンがつくられた。ちなみにBMWではステーションワゴンはツーリングという呼び方をした。現行の3シリーズワゴンは2019年に7代目として登場、2022年9月に大幅な改良を受けている。

前席の着座位置は高め。ボンネットも見えるので、前の余裕や車幅が確認しやすく、運転がラク。座面から脇腹にかけての支えもしっかりしている。
後席の着座はやや低め。床面中央の盛り上がりも高めなので、大人の3人掛けはキツい。背もたれ中央を倒すとカップホルダーとひじ掛けが表れる。背もたれ全体は2/1/2の3分割で倒すこともでき荷室と一体になる。真ん中の部分だけを倒すと長尺物を積んで、左右に1名ずつ座ることができる。

320dツーリングの良さは、取りまわしの良さだ。車体サイズは全長が4.7m、全幅は1.8mをわずかに超えているが、都会の立体駐車場にも対応している。

リアゲートのガラス部分はこのようにゲートとは別に開けることができ、荷物の出し入れができる。最近のステーションワゴンでは珍しい機能だ。

3シリーズツーリングで重宝なのは、リアのゲートだ。ゲート全体で大きく開閉できるのは当然だが、ガラス部分だけでも開閉できる。その高さも1mちょっとなので、小さな荷物などは、いちいち大きなゲートを開かなくても、荷物の出し入れができる。狭い駐車場などで、この仕様は有難い。しかも、ガラス部分がきちんと閉まっていないと、大きなゲートは開かないという安全装備も付いている。

でっぱりの少ない荷物スペース。手前の部分はテールランプの裏側まで空洞でゴルフバッグがヨコ置き出来る。

リアの荷物は、奥行は約1m。左右幅は、1番広いところは1.3m以上確保されている。荷室手前の部分には、ゴルフバッグが横置きできる長さがある。このクラスの輸入車で、この広さがあるのは珍しい。ゴルフ場で自分のバッグを積みこんでいるときに、バッグの横置きを見た人が、わざわざ声をかけてきたほどだ。

室内のデザインも大きく変わった。なかでも前席の前のパネルは運転席から中心にかけての12,3インチと14,9インチのコントロールパネルが一体化し1枚の湾曲した画面になった。
3シリーズのエンジンは320dの2Lディーゼルターボの他に2Lガソリンターボと3Lガソリンエンジンが用意されている。駆動方式も後輪駆動と4輪駆動が選べる。
オートマチック変速機の操作も大きく変わった。変速用のシフトレバーがなくなり、指でシフトのつまみを操作する方式になった。

走行性能はどうだろう。320dツーリングのdはディーゼルのこと。2LディーゼルターボエンジンはBMWが長年培ってきた技術。アイドリング時に若干のエンジン音とうなり音が聞こえたが、走り出してしまえば8速ATが適切な仕事をしてくれる。燃費も高速走行で17km/L前後、街中では13km/L前後が標準的数値だった。高速走行中の安定感も良く、長距離走行での疲れも少ない。

いま乗る車を1台だけ選べと言われたら、この車を推したい。

BMW 320d xDrive ツーリング Mスポーツ

全長×全幅×全高4720×1825×1455mm
ホイールベース2850mm
車両重量1740kg
エンジン直列4気筒DOHCディーゼルターボ
最高出力190ps/4000rpm
最大トルク400Nm/1750~2500rpm
駆動形式4輪駆動
燃料消費率15.5km/L(WLTCモード)
使用燃料/容量軽油/59L
ミッション形式8速自動
サスペンション形式前:ストラット式/後:5リンク式
ブレーキ形式前後:ベンチレーテッドディスク
乗員定員5名
車両価格764万円
問い合わせ先0120-269-437

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

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