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体重や血糖値、血圧の数値は気にしているのに、“口の老化”を気にかける人は少ないといえます。でも、多くの研究者が「すべての老いは口からはじまる」と警鐘を鳴らしていることをご存じでしょうか。

最近、「食事中によくムセる」「食欲がわかない」「食べているとなんだか疲れる」「胃もたれする」「口が乾く」「滑舌が悪くなった」……、そんな症状を感じている人は口の老化が始まっているかもしれません。

『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)が13万部のベストセラーとなった、歯学博士・照山裕子先生の最新刊『食事でムセる かみ切れない 口臭が気になる人のための口の強化書』から、オーラルフレイルの重要性についてご紹介します。

文/照山裕子

口の衰えが老化の分かれ道。「口の老化」で失われる、4つの力とは?

よく「口のなかを健康に」といわれると、歯の本数や「噛む力」だけをイメージする人がいますが、口のなかを健康な状態にするには、それだけでは足りません。なぜなら、「自分の口で食べる」ためには、歯だけではなく、口全体の機能が大切になるからです。

口のなかの機能は互いに関連しているため、1つひとつの機能としてではなく、口全体として考える必要があるわけです。まず、食べることは、おおまかに次の「4つの口の力」で成り立っています。これら4つの力のうち、ひとつでも弱まると、食べることに支障が出てしまいます。

【4つの口の力】
1.噛む力
2.舌の力
3.唾液量
4.飲み込む力

口の力の衰えは、すべての年齢層で見られ、体全体の不調につながる「オーラルフレイル」の予備軍として、いま問題になりつつあります。オーラルフレイルとは、「口の老化」状態であり、「口の機能が弱っている状態」を指す言葉です。つまり、実際の年齢などに関係なく、「口が老化」してしまっている人が多く、そして弱っている自覚がない。わたしは日々、多くの患者さんの口や歯を診療している際に実感しています。年齢を重ねるにつれて、かたいものが噛み切りづらくなったり、大きめのものや粘り気のあるものを飲み込みづらくなったり、ムセやすくなったりするなどの症状があらわれるようになります。

これらは、口まわりの筋肉が低下することで起こります。すると、弾力のある肉類や、繊維質の根菜類や葉物類の野菜などが食べられなくなり、たんぱく質やビタミン類といった栄養素をうまく摂ることができず、栄養バランスが崩れます。こうした衰えが、口から体全体へとつながっていき、全身の機能が弱っていく「フレイル」にいたる恐れがあります。また、舌の筋肉が弱ると、会話をするときに、言葉の滑舌が悪くなるといった変化もあります。一般的には、60代後半あたりから顕著になるといわれていますが、早い人では40代後半あたりからこうした変化があらわれることも珍しくありません。さらに、現代では子どもや若年層にもオーラルフレイルの危険性が広がっています。

あなたの「口」は大丈夫? オーラルフレイルをチェック!

あなたの“今”の口の状態をチェックしてみましょう。質問事項を読んで、あなたの状態にあてはまるものに〇をしてください。そこにかかれている数字があなたの点数です。4点以上の人は危険性が高いので要注意です!

出典:東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島勝矢

食べ物を食べる構造は、餅つきと同じ

「4つの口の力」と関連して、食べる動作は、むかしから「餅つき」に例えられることがあります。具体的には、口のなかは臼、歯は杵、「噛む力」はつき手の筋力、こねる人は舌、打ち水は唾液といわれています。たとえば、餅米をつくためには、当然丈夫な歯(杵)が必要ですが、それだけがあっても、「噛む力」(筋力)やこねる「舌の力」が弱ければ、口のなかで餅はうまくまとまりません。また、唾液(打ち水)が少なくても、食べやすい餅はできないでしょう。

そして、餅をしっかりつくれたとしても、それを食道へ送る飲み込む力も必要だというわけです。つまり、自分の口でしっかり食べるためには、口全体の機能が保たれていることが必要なのです。口のなかが健康かどうかを判断するには、「4つの口の力」のうち、自分はどこに問題があるかを、まず確認することが大切になります。

* * *

食事でムセる かみ切れない 口臭が気になる人のための口の強化書
著/照山裕子 監修/來村昌紀
アスコム 1430円

照山裕子(てるやま・ゆうこ)
歯学博士。東京医科歯科大学非常勤講師(顎顔面補綴外来)。
日本大学歯学部卒業、同大学院歯学研究科にて博士号取得。世界でも専門医が少ない『顎顔面補綴』を専攻し、口腔がんの患者と歩んだ臨床体験から予防医学の重要性を提唱する。「日本人の口腔ケアへの意識を変えるにはどうしたらいいのか?」という課題の答えのひとつとして考案した内容を『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)として書籍化。13万部のベストセラーとなった。現在は大学病院及び全国の歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも多数出演。『日経xwoman』のオフィシャルアンバサダーも務める。『新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)など、著作多数。

監修/來村昌紀(らいむら・まさき)
らいむらクリニック院長。千葉大学臨床教授。医薬学博士。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。
和歌山県出身、和歌山県立医科大学、千葉大学大学院卒業。和歌山県立医科大学附属病院などで経験を積み、2014年にらいむらクリニックを開設。著書に『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(あかし出版)などがある。

 

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