暮らしを豊かに、私らしく

文・写真/新宅裕子(海外書き人クラブ/イタリア在住ライター)

イタリアの野菜といえば、トマトやズッキーニが真っ先に思い浮かぶかもしれません。しかし、今回ご紹介したいのはアスパラガス。実は、北イタリアにはアスパラの有数の産地があり、特に太く立派に育ったホワイトアスパラは絶品なのです。

ただし、このアスパラをフレッシュな状態で食べられるのは春のたった2か月間のみ。名産地の一つ、ヴェネト州ヴェローナから、そんなアスパラ事情をお届けします。

新鮮で美味しく安い!春限定のホワイトアスパラ

寒い冬が過ぎてポカポカしてくる頃、市場に並び始める春野菜を見て思わず笑みがこぼれるのはきっと私だけではないはず。3月中旬、北イタリアのホワイトアスパラは「あぁ、もうそんな季節か」と春の訪れを一番感じさせてくれる野菜です。本格的に露地ものが出回るのは4月に入ってからとはいえ、白く綺麗なその姿についつい手を伸ばしたくなってしまう。だって、美味しい採れたてのホワイトアスパラを食べられるのは、5月中旬までなんですから(地域によっては6月まで)。今の時代、これほど旬に敏感な野菜は珍しいのではないでしょうか。この季節限定という特別感に余計そそられてしまうのです。

北イタリア・ヴェローナのホワイトアスパラ(1束、約1キロ)。

ヴェローナには北のアルプスからヴェネツィア南部(アドリア海)へと流れ出るアディジェ川が通っていて、その川沿いにアスパラ畑が連なります。この一帯の土壌が砂であり、さらっとしていてアスパラ栽培に適しているのだそうです。

日本でアスパラというと緑色のほうが馴染み深いですが、実はこの色の違いは品種ではなく栽培方法にあるってご存知でしたか。ホワイトアスパラの畑には常に黒いビニールシートが掛けられているので一目瞭然。日光を遮断して育てられることで葉緑素が作られず、白いまま残るというわけです。

黒いビニールシートで覆われ、日光を浴びないホワイトアスパラの畑。

春に畑周辺をお散歩しているとアスパラの販売を知らせる看板も出ていて、その直売所にふらっと立ち寄りたくなります。12本ほどが1束にまとめられ、約1000円と日本では考えられないほどリーズナブル。生産者と「今年の気候はどうだ」とか「いつ頃までアスパラが採れるか」など直接おしゃべりするのも楽しいものです。

妙に惹かれてしまう手書き看板。

シンプルに茹でるだけで立派なメインディッシュに

調理方法は実にシンプル。ただ丸ごと茹でて食べるのが主流で、素材のうまみをそのまま生かすのがいかにもイタリア料理だと実感します。

下準備は、根元を2センチ程度切り、皮の厚くて硬い部分をピーラーで剥くだけ。水から茹でたホワイトアスパラが適度に柔らかくなったらお皿に取り、オリーブオイルと塩こしょう、粉チーズをかけたら出来上がりです。

縦長の鍋にホワイトアスパラを立て、水を7分目まで入れて蓋をして茹でる。

これで前菜にもなればメインディッシュにもなるのだから、簡単で重宝するのも嬉しいポイント。ホワイトアスパラの、あの独特な甘みがジュワッとお口いっぱいに広がります。

茹で卵を添え、潰しながら一緒に食べるのが伝統。

お米と炒めてリゾットにするのもオススメで、その場合は折れてしまったアスパラを買ってきます。少し割安な上、柔らかい穂先ばかりが手に入るので、お得感も満載の一品に。

ホワイトアスパラのうまみが染み込んだクリーミーなリゾット。

こうして、我が家では週に1度くらいの頻度でホワイトアスパラが食卓に上がります。ちょっと飽きてきたかな、と思った頃にちょうど旬も終わる、春ならではの味覚なのです。

みんなで一緒に旬を満喫するのが最高のイタリア流

さらにイタリアらしさ満開の楽しみ方が「サーグラ」でしょう。1年を通して全土各地で開かれる旬の野菜や穀物などの収穫祭のことで、ホワイトアスパラも例外ではありません。ヴェローナ郊外では毎年4月下旬から5月にかけて大きな仮設会場が設けられ、生産者や地域の有志たちによって10日間ほどアスパラ祭りが行われます。

旬を存分に楽しめる収穫祭「サーグラ」(2022年4月、ヴェローナ近郊)。

生産者たちが直々に調理したものを味わえるサーグラは、まず食券を買い、その料理が提供されるカウンターに引き換えに行くシステム。ライブミュージックが響く中、周辺住民が大勢集まってワイワイと採れたてのホワイトアスパラを堪能するのが醍醐味です。

プラスティックのお皿に盛られたサーグラの料理。

高級感は全くなく、簡易なお皿に盛られるオシャレ感ゼロの素朴さといったら。超庶民的で賑やかな雰囲気に浸りながら、美味しいものを美味しいときに美味しく食す。はい、これに尽きます。イタリア流の贅沢な食生活ってここにあるんだ、と改めて感じられる瞬間です。

文・写真/新宅裕子(イタリア在住ライター)
東京のテレビ局で報道記者を務めた経験を活かし、イタリア移住後も食やワイン、伝統文化、西洋美術等を取材及びコーディネート。ガイドブックにはない穴場や現地の暮らしを紹介するほか、ワインなどの輸出仲介も行う。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。

 


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