脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓など、突然症状が起き、短時間のうちに亡くなってしまう“突然死”。糖尿病治療の名医であり、生活習慣病の予防にも詳しい医学博士・板倉弘重先生によると、その要因のひとつとなるのが血管にできるかたまり“血栓”だといいます。ですが、その血栓は外から見ただけではわからず、自覚症状もありません。だからこそ、血栓を予防することや、できても溶かして流すことがとても重要になります。
そこで今回は、板倉先生監修の『血栓をつくらない!』(宝島社)から、血栓をつくらない&できた血栓を溶かすために積極的に食べたい4大食品をご紹介します。
監修/板倉弘重
【納豆】ナットウキナーゼが血栓だけを溶かす!
1日1パックの納豆で突然死リスクを減らす
国立がん研究センターなどが実施している「JPHC研究」※で、発酵性大豆食品の摂取が多い人は、循環器疾患の死亡リスクが低いという研究結果が発表されました。大豆の発酵食品とは味噌や納豆。
※多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究
この研究では、1日に発酵性大豆食品を50g(納豆1パック程度)食べている人は、ほとんど食べない人に比べて循環器疾患の死亡リスクが10%低いそうです。
納豆のネバネバには、ナットウキナーゼというたんぱく質分解酵素が含まれています。このナットウキナーゼが、血栓のおもな成分であるフィブリンを分解したり、血液をサラサラにしてくれる効果があるのです。
血栓ができやすいのは夜、寝ている間なので、夕食に納豆を1パック食べるのがおすすめです。
納豆は、食物繊維やたんぱく質、カルシウムなど栄養面でも優れた食品ですから、ぜひ日々の食習慣に取り入れましょう。
血栓に効く! 納豆の食べ方
・食べるなら夜が効果的
・タレは混ぜたあとにかける
・1日1パック(50g)を目安に食べよう
・加熱はしないほうが血栓には効く
納豆と一緒に食べたい食材
納豆+大葉
納豆+酢
納豆+キムチ
【玉ねぎ】血液をサラサラにして血栓予防
血管をダメージから守り血液の流れをよくする
玉ねぎには、細胞を傷つける活性酸素から血管を守るケルセチンが含まれています。ケルセチンはポリフェノールの一種で、身の黄色い色素部分や皮に豊富にあります。血管拡張の働きをする一酸化窒素を邪魔する活性酸素をとらえてくれ、血管のダメージを抑えてくれます。また、血栓を溶かしてくれる作用をもつ硫化アリル、その一種で血管の壁を柔軟に保つ働きのあるアリシンなど、血栓予防、できた血栓を溶かす、動脈効果予防など、血管にさまざまないい影響をもたらしてくれる血液サラサラ&血管強化食材の代表です。
栄養を効率よく摂取するなら、1日50g(1/4個)を目安に生で食べるのがおすすめ。水にさらすとケルセチンが溶けてしまいます。生で食べる際には極力水にさらさず、加熱する場合はスープごといただくようにしましょう。皮はお茶にすることで、ケルセチンを効率よく摂取できます。
血栓に効く! 玉ねぎの食べ方
・水には極力さらさない
・みじん切りがベスト
・加熱する際は油で炒める
・1日50g(1/4個)食べよう
アリシンを含む野菜
アリシンはねぎ類に含まれるにおいと辛味成分ですから、玉ねぎだけではなく長ねぎやにんにくなどにも含まれています。
赤玉ねぎ
長ねぎ
にんにく
【酢】糖の吸収を抑えて血圧を下げる!
血管を広げて血液の流れをスムーズにする
疲労回復やダイエットなど、さまざまな健康効果があることで知られる、お酢。主成分である酢酸は、血圧を上げる作用に関わるホルモンを抑える働きがあります。また、酢酸が代謝する際にアデノシンという血管を広げる働きのある物質がつくられ、血液の流れがスムーズになることも、自然と血圧が下がる理由です。
酢酸には、糖の吸収を穏やかにしてくれる効果もあり、脂肪をできにくくしてくれます。血圧、血糖、コレステロールの数値を下げて血栓を予防したいときには、積極的に活用したい調味料です。
血栓予防にとてもいいお酢ですが、胃の刺激になるため摂り過ぎには注意。毎日大さじ1杯程度を5〜10倍に薄めて飲んだり、ドレッシングやお酢煮などの料理に使ったりするのがおすすめです。
最近ではいろいろな種類の健康酢が発売されていますが、糖分の多いものは血糖値を上げてしまうので、原材料をチェックして選ぶようにしましょう。
血栓に効く! 酢のとり方
・毎日大さじ1杯程度が目安
・飲む場合は薄めて飲もう
・糖分の多い加工酢は避ける
・毎食1品酢料理をプラス!
お酢の種類
穀物酢
米、小麦、トウモロコシなどの穀物が原料。きりっとした風味で、和洋中どんな料理にも対応する、お酢のスタンダード。
米酢
穀物酢のうち原料に一定量以上の米を使用しているもの。純米酢は米の量がさらに多い。まろやかでコクがあり、すし飯に好適。
黒酢
玄米や大麦を原料とし、醸造したのち1年から3年ほど長期熟成させたもの。香りがよく、しっかりとしたうま味のあるお酢。
りんご酢
りんご果汁を発酵・熟成させたお酢。フルーティーでほかのお酢に比べて酢酸が少ないので、お酢が苦手な人にもおすすめ。
ぶどう酢
ぶどう果汁が原料のお酢。別名ワインビネガー。ワインのように赤と白があり、いずれもすっきりとした風味が特徴。
バルサミコ酢
ぶどう酢を木の樽で長期間熟成させたお酢。濃厚なうま味があり、甘さのあるまろやかな風味。オリーブオイルと好相性。
クエン酸はフルーツからも補える
酢にはクエン酸も含まれています。クエン酸は、お掃除でもカルキや水アカを落としてくれますが、体内では血管内に溜まった余分なカルシウムを溶かしてくれる効果が。クエン酸はレモンやライムなど柑橘系にも多いので、お酢と合わせて日々の食事にぜひ取り入れましょう。
【フィッシュオイル】血栓・動脈硬化を予防するDHA・EPAが豊富!
血管年齢を下げる毎日食べたい青魚
さばやさんま、あじなど青魚に含まれる多価不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)は、血流をよくし、血管の健康維持に欠かせない脂質です。EPAは血液の粘度を下げて血栓をできにくくし、動脈硬化を予防してくれる働きがあり、足の血栓症予防の薬として認可されています。そして、このEPAの働きを高めるのがDHAで、中性脂肪を減らす働きや脳を活発する効果もあります。
EPAやDHAは、熱に弱い油なので、生のまま食べるのが一番効率のよい摂取法です。加熱する際は、油が下に落ちてしまう魚焼きグリルより、小麦粉などをまぶしてフライパンで焼くほうが油を逃さずに調理できます。また、魚の缶詰やしらすも、手軽にEPAやDHAが摂取できます。EPAやDHAが含まれているサプリメントもありますので、魚が苦手な人は活用するのも手です。
血栓に効く! 魚の油のとり方
・朝に食べるのがおすすめ!
・油を逃さない調理を
・1日1g(刺身5切れ程度)
・缶詰も賢く利用しよう
魚を毎日食べるコツ
魚は「下ごしらえや調理が面倒」とおっくうになりがちですが、手軽に摂取する方法もたくさん。代表的なのは缶詰。また、しらすはイワシなどの稚魚で、DHA・EPAを含んでいますので、料理に混ぜたりかけたりしてプラスしましょう。
DHA・EPAの含有量
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『血栓をつくらない!』(板倉弘重 監修)
宝島社
板倉弘重(いたくら・ひろしげ)
医学博士。芝浦スリーワンクリニック名誉院長。東京大学医学部卒業。同大学第三内科講師、国立健康・栄養研究所臨床栄養研究部長を経て、現職。赤ワインなどに含まれるポリフェノールの抗酸化作用を世界で最初に発見。著書、監修書は『日常生活のちょっとした工夫で血圧、血糖値は下がる!』(アントレックス)、『大丈夫! 何とかなります 血糖値は下げられる』(主婦の友社)、『医者もやっている血圧の下げ方』(宝島社)など多数。