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©惣領冬実・講談社/ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』製作委員会

コロナ禍を乗り越え、念願の公演が実現。ヨーロッパ統一を夢見た冷酷な野心家の若かりし日の姿を描いた歴史大作

チェーザレ・ボルジアは、ルネッサンス期にイタリア統一の野望を抱いた権力者。ヨーロッパ史に興味のある人は、この人物にはあまりいい印象を抱いていないという人が多いかもしれません。しかし、彼はマキャベリから「理想の君主」と謳われています。そもそも、最初から冷酷な野心家だったのでしょうか? そんなチェーザレがピサの大学に通う16歳の青春時代が、ミュージカルになります。キリスト教の最高位である教皇の座を巡る派閥争いの中で、父ロドリーゴ・ボルジアを教皇の座につかせ、さらに自らの理想実現のため、戦いに身を投じていく前の、若きチェーザレの姿を描きます。

この『チェーザレ 破壊の創造者』は、2023年に150周年を迎える明治座が「日本オリジナルのミュージカルをつくりたい」と企画し、初めてオーケストラピットを稼動させ、生演奏で上演することでも話題の超大作です。原作は、2005年から2021年まで『モーニング』(講談社)で連載された歴史大河コミック。原作者の惣領冬実が史実を調べ尽くし、華麗にして緻密な筆致で描いた作品で、累計発行部数は140万部を突破しています。実はこの作品、2020年に上演の予定で稽古を重ねていましたが、開幕直前に新型コロナの感染拡大により中止という憂き目に。それから3年近い月日を経て、2023年にやっと上演されることになったのです。

チェーザレ役は中川晃教さん。実力派ベテラン俳優と人気パフォーマーたちがWキャストで出演

©惣領冬実・講談社/ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』製作委員会

チェーザレを演じるのは、『ジャージー・ボーイズ』など数々のミュージカルで素晴らしい歌唱と演技を披露してきた中川晃教さん。彼を取り巻くキャストには、別所哲也さん、藤岡正明さん、今拓哉さん、岡幸二郎さんといった本格的ミュージカルの実力派から“うたのお兄さん”こと横山だいすけさん、初ミュージカルとなるEXILEの橘ケンチさん、そして“2.5次元ミュージカル”などで活躍する若手俳優たちという混成チーム。“2.5次元”俳優たちのステージも数多く上演してきている明治座だからこその面白い座組と言えるでしょう。

悩みや葛藤を抱えながらも、明るい未来のために突き進むキャラクターたちに背中を押される作品

満を持しての開幕を前に、稽古に励む中川さんは「運命の役に出会えたんだな、と再び実感しています」と感慨深げ。

「この作品の稽古をしていた2020年から3年という月日を経て、その間にひとりの人間としてさまざまな経験をさせていただきました。そして先日、稽古場で再び顔合わせをして、明治座さんの熱い思いを聞きながら『この作品のチェーザレとして、自分の中の何が活きていくのか』が見えてきたように思えたんです。チェーザレは、悩んでいます。そして葛藤もしているんですね。私たちも日々、悩みや葛藤をもちながら生きている。そういう思いがこの作品の中のマグマとなっていくような気がします。時代が変わっていくルネッサンスで、チェーザレたちは希望や明るい未来を信じて、光に満ちています。そういう作品が、いまの時代と、2020年に経験した苦い思い出もすべてを追い風として、『これでいいんだよ』という指針をくれているように思えました」

2020年の稽古場では、俳優たちと演出家が熱く意見を交わし、切磋琢磨しながらの建設的な作品づくりが行なわれていました。3年を経た再開後も、その熱は変わりません。

製作発表の記者会見時の中川さん(撮影/若林ゆり)

「この物語が描いている青春ドラマ、学園ドラマみたいなところが、けっこう僕たち自身とドキュメンタリー的な重なりを生んでいるんですよ。この『チェーザレ』という作品に携わる人間の『ここに呼ばれたオリジナル・キャストとして自分たちが作っていくんだ』という、プレッシャーではなく心構え。その心意気が切磋琢磨を生んで、みんながこの物語の中で何かを担って、オリジナル・キャストとして『描かれていること以上のことを書き足さなきゃならない』という自覚を持っている。『何ができるのか?』というところで否定というより破壊が生まれ、それが創造に繋がっているんです」

関係者一人ひとりがエネルギーを注いで提示する新しいミュージカルの形をご覧あれ!

撮影/若林ゆり

まさに“破壊の創造者”たち! それにしても、この物語でのチェーザレは、まだ壮大なドラマを歩き出したばかり。内面の変化が繊細に描かれている一方で、まだ重大な事件は何も起こりません。だからこそ、演じる中川さんの表現力に頼る部分が非常に大きくなります。

「この作品の面白みをどこに感じるかと言ったら、“自由”なんですよ。自由に青春を過ごしながら、わき上がる感情、信じるものをふつふつと感じる、さわやかなチェーザレがそこにいる。僕は、チェーザレが何を考えているのかということの裏側まで感じられないと、芝居が成り立たないと思っていて。僕たち役者の心の動きが重くかかわっているので、役者サイドもしっかりと考えて構築していかなくちゃいけない。オリジナルを作るってこういうことなんだ、芝居を作るってこういうことなんだと改めて感じています。まさに新しいミュージカルの形みたいなものを、僕たちは提示しようとしているから。本質的な部分で、僕も含めて関わる人間ひとりひとりのエネルギーが、ミュージカル・シーンを色濃くしていくんじゃないかな」

©惣領冬実・講談社/ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』製作委員会

ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』

期間:2023年1月7日(土)~2月5日(日)
会場:明治座

<キャスト>
中川晃教 
橘ケンチ(EXILE)
【スクアドラ ヴェルデ】山崎大輝 風間由次郞 近藤頌利 木戸邑弥(Wキャスト)
【スクアドラ ロッサ】赤澤遼太郎 鍵本輝 本田礼生 健人(Wキャスト)
藤岡正明 今拓哉 丘山晴己 横山だいすけ 岡幸二郎
別所哲也 ほか

公式サイト:https://www.cesare-stage.com

取材・文/若林ゆり

 

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