文・石川真禧照(自動車生活探険家)

街中を走っている車を見ていると、乗用車に混じって、車高が高く、形も武骨なオフロード向きの4輪駆動車を見かけることがある。オーナーはどのような人だろう。

アウトドアな生活を楽しむための道具として乗っている人。街中でもアウトドアな気分を楽しみたい人。ファッションとしてアウトドアの雰囲気を楽しんでいる人。

乗っている目的は様々だが、今やファミリーカーと化しているSUV(スポーツ多目的車)とは異なるワイルドな世界を楽しみたい人に、クロスカントリー系の4輪駆動車は人気になっている。

この分野ではトヨタが1951(昭和26)年に初代ランドクルーザーを発売してから、熱心な愛好家たちにより支持されてきた。

しかし、最近では海外市場での人気が高まり、輸出が主になっていた。2021年に高級車のランドクルーザー300が開発され、これも世界中で人気車種になった。

そのランドクルーザーに普段使いもできる実用性を備えたシリーズが誕生した。3年前に登場した最高級の「300シリーズ」と共通の足回りを使い、開発された「250シリーズ」だ。

角目3灯式のヘッドライトは上級モデルの「300」シリーズに共通するデザイン。「ファーストエディション」は丸目2灯式で、8000台の限定モデル。
全長4925mm 全幅1925mmの大きさだが、左右のオーバーフェンダーで実際のボディは狭い。
フロントドアのウインドがリアに比べて広いのがわかる。運転をしていて見切りが良い。

最近のSUV(多目的スポーツ車)は、乗用ワゴンのように都会的になってしまった。もっとワイルドさが欲しい、という国内の声にトヨタが答えてくれた。

250シリーズのエンジンは、4気筒2.8Lディーゼルターボと4気筒2.7L自然給気ガソリンが用意された。クロスカントリー系の4輪駆動車というと、大抵はディーゼルエンジンを勧める。しかし、今回の250シリーズを試乗するにあたり、街乗りを中心にした使い方をしてみた。実際、本当にアウトドア用としてこうした車を使用している人は、周囲を見ても少ない。大半は街中で乗っているように思えたので、ガソリン車とディーゼル車を乗り比べてみたというわけだ。

比較してみると、ディーゼルエンジンの振動やエンジン音の大きさが気になってくる。確かにガソリン車は低速からのトルクの盛り上がりなど決して速くはないのだが、エンジンからの振動や室内への音の侵入は少なく、快適さが違うのだ。販売員に聞いてみても「街中を中心に乗るのでディーゼルよりもガソリンのほうがいい」と言って購入する人は少なくないという。

ランドクルーザー250の2.8Lディーゼルターボは1000回転から2000回転あたりのアクセルオンでの唸り音が耳障り。街中での常用域なので、気になる。2.7Lガソリンエンジンは1500回転以下のトルクが細いので、出だしの加速は物足りないものの、アイドリングや街中での音や振動が少ないのだ。高速走行での両車の違いは少ないが、街中ではだいぶ印象が違う。

4気筒2743ccというビッグボアのエンジンは6速ATと組み合わされ0→100kmを14秒台でのんびり加速する。
7000回転まで刻まれたエンジン回転計は5600回転からレッドゾーン。それでも全開加速では5400回転まで上昇した。

4輪駆動時は、余裕のあるサスペンションと、上級モデル「300シリーズ」と共通の基本的車体構造を基礎にスイッチ操作で6つのモードから走行状態を選択できる。さらに4つのカメラが車輪近くに備わっているので、4輪と路面の状況を運転席にいながら自分の目で安全を確かめるということもできる。

「300」シリーズと共通のプラットフォームなので、悪路走行でもフロントスタビライザーの切り換えやセンターデフに高性能なトルセンLSDを備えている。電動のリアデフロックも前後駆動力配分の自由度を高めている。

車体は最低地上高が215mmも確保されているので、かなりのオフロードでも走破することができる。アウトドア気分を街中で味わうだけでなく、いざというときのために日常的にオフロードモデルに乗っていることも安心感を得るのには大切なこと。折り畳み式の3列目シートも使い勝手がよく、実用性が高かった。

水平基調のインパネはオフロードでの車体の傾きが解るので安心感がある。
ガソリン車の変速は6速ATなので、高速走行ではエンジン回転も2400回転と高め。ディーゼルと同じ8速ATが欲しい。
4駆シフトはH4F、H4L、L4Lが選択できる。リアデフは電動式。

安全性能も高スペックだ。衝突回避、被害低減では歩行者や自転車に加え、車速の速いオートバイも検知できるまでに検知範囲を広げた。また、運転の状況に応じたリスクの先読みを行う支援を採用。歩行者や自転車、駐車車両に近づきすぎないよう、ハンドルやブレーキのサポートも行ってくれるという。

ドライブレコーダーも車体の前後に設置されていて、単眼カメラと後方カメラがとらえた走行中の映像を内蔵メモリーに録画。映像データはディスプレイオーディオでの再生だけでなく、スマホやUSBメモリーに転送し持ち運ぶこともできるのだ。

駐車スペースと資金に余裕があれば、セカンドカーとして置いておきたい車だ。

後席の乗員や荷室荷物に関係なく後方の状況をカメラがうつし、それを室内のミラーで見ることができるデジタルインナーミラーは便利な装備。
室内色はこの「ブラック」と「ダークチェスナット」の2色だけ。着座位置を高めにすると、ハンドルの上下調節が少し低めになる。
2列目は固定式でスライドしない。床面は中央部は若干盛り上がっているが狭くはない。着座位置はやや高め。エアコンはこの席からでも風量だけでなく温度も調節できる。
足元がフラットでスペースとしては狭くはないが、3列目の着座は高めなので身長160 cm以上だと厳しい。
7人掛けのときのラゲージスペース。奥行きは25cm。
5人掛けの時のラゲージ。3列目は半分ずつ電動スイッチで可倒する。
リアゲートのウインドは開閉可能。

トヨタ /ランドクルーザー250VX 7人乗り

全長×全幅×全高4925×1980×1925mm
ホイールベース2850mm
車両重量2240kg
エンジン直列4気筒ガソリン    2693cc
最高出力163ps/5200rpm
最大トルク246Nm/3900rpm
駆動形式フルタイム4WD
燃料消費率7.5km/L(WLTC) 
使用燃料/容量レギュラーガソリン/80L
ミッション形式電子制御6速AT
サスペンション形式前:ダブルウイッシュボーン 後:トレーリングリンク
ブレーキ形式前:ベンチレーテッドディスク 後:ベンチレーテッドディスク
乗員定員7名
車両価格(税込)545万円
問い合わせ先0800-700-7700

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
20代で自動車評論の世界に入り、年間200台以上の自動車に試乗すること半世紀。日常生活と自動車との関わりを考えた評価、評論を得意とする。

撮影/萩原文博

 

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