ベルルッティ、時を刻む美学を体現する「ラピエセ・ルプリゼ」の新コレクション発表

ラグジュアリーレザーグッズブランド、ベルルッティが2024年9月より、「ラピエセ・ルプリゼ」の新コレクションを展開します。本作は、時の流れが織りなす美しさと、男性のエレガンスの本質を探求した意欲作です。

文／土田貴史

歴史に学ぶ、エレガンスの真髄

「ラピエセ・ルプリゼ」は、フランス語で「継ぎ接ぎされ、修繕された」という意味を持ちます。このネーミングには、近世の貴族たちが自身の衣服の修繕跡を誇りとしていた歴史が反映されています。1800年代初頭のパリやロンドンでは、洒落者たちの間で、衣服の継ぎ接ぎや修繕箇所が連帯の証となっていました。それは単なる補修ではなく、由緒あるしきたりへの精通を示すステータスシンボルだったのです。

2005年、オルガ・ベルルッティが、この伝統を現代に蘇らせたのが「ラピエセ・ルプリゼ」でした。彼女は、人生を共に歩み、手放せなくなった愛着のある衣服への敬意を表現したいと考えました。そして2024年、ベルルッティは再びこの精神に立ち返り、新たなストーリーを紡ぎます。過ぎゆく時の美しさを捉え、より優れた形に再生産する——それが本コレクションの根幹を成す哲学です。

「ラピエセ・ルプリゼ」は、ベルルッティを象徴する5つのモデル（スリッポン、ローファー、オックスフォード、モンクストラップ、ショートブーツ）で展開されます。各シューズには、熟練の靴職人による手の込んだパッチが施されています。パッチは、ターン＆ステッチ構造で丁寧にはめ込まれ、2時間かけて手作業で縫い上げられると言います。この繊細な作業により、まるで長年愛用されてきたかのような風合いが生まれるのです。

コレクションには5種類のパティーヌが用意され、それぞれが時間の経過を物語っています。アシッドグリーンは春の芽吹きを感じさせる活気に満ちたカラー、ルナ・ピエナは夏の夜の柔らかな甘さを思い起こさせる深いインク色、アイスゴールドは夏の終わりや秋の黄金色に輝く木々を想起させる色合い、サンテミリオンはボルドーワインを讃える深いバーガンディカラー、そしてヴィゴーニャは冬を感じさせる、冷たさと熱さを併せ持つ複雑な色調です。

「ラピエセ・ルプリゼ」コレクションは、男性のワードローブの本質を見事に捉えています。高品質な品を選び、丁寧に扱い、長く愛用する——その行為自体をモチーフとし、デザインへと昇華させているからです。時を重ねることで生まれる美しさ、そして手入れや修繕を施すことで深まる愛着。ベルルッティは、そんな男性の装いの真髄を、洗練されたデザインと卓越した職人技によって具現化しています。

「ラピエセ・ルプリゼ」は、単なるファッションアイテムを超え、時間とともに深まる美学の象徴となりそうです。

シューズ以外にも、このコレクションではバッグや財布、ベルトなどのスモールレザーグッズも展開されます。バッグは「エミーオ」「アンジュール」「トゥジュール」「ニノ」という4つのタイプが用意され、いずれもシューズと同様のパティーヌ加工が施されています。そして、これらの革小物にも象徴的な手縫いのパッチが見られ、定番のワードローブに遊び心のあるアクセントを加えています。